第12話【裏・学園のお姫様は泥棒猫(笑)・前】

 いつものとなった空き教室でも作戦会議で。


 また三人で遊ぼうとして、アリアちゃんだけ抜ける予定を立てようとした。


「二度連続ドタキャンだとアリアちゃんの印象にも悪いから、今度は本当にアリアちゃんが予定のある日に遊ぶ予定を被せて途中で帰るのはどう?」


 これならアリアちゃんは本来の予定をこなしながら、私のサポートが出来る!一石二鳥だね!


「はい、任せて下さい」


 アリアは協力を約束してくれた。


 聞けば土曜日に祖父と会食する約束があるらしい。


 アリアちゃんの祖父って言えば、この学校の理事長かな?


 なら流石にそっちをキャンセルしてまでついて来れないよね?どっちでもいいけど。




 そして土曜日。


 私はちょっとした作戦の為に気合を入れた。


 普段三つ編みにする髪をストレートに下ろし、眼鏡はコンタクトに。化粧もして顔立ちを整える。


 服は勝負の為に買っておいたブランド物のブラウスとスカートを合わせてコーディネート。


 鏡を見ると、生まれ変わった様な私がいた。


 そう。私は普段こそ地味な見た目だけど、それなりに成長して、基本的なケアはしてたから磨けば光るのだ。


 普段からこんなお粧しすれば、見た目で侮られる事なくきょーくんと堂々と付き合えるのでは?とも言われた事もある。


 ただ今となっては地味なままが、きょーくんが他の可愛い子よりも私を優先する時の優越感が大きいので必要性を感じないのだ。


 そして今日はその必要性があったからしただけ。


 わざとちょっと遅れて待ち合わせ場所で合流すると、アリアちゃんが分かりやすく目を見開いて私に驚いた。


 きょーくんには何度か見せた事もあるからあまり驚かれなかったけど、私の恰好を褒めてくれた。


 最近お互い慣れ過ぎて褒め合う事も無くなったから、久しぶりに褒められて嬉しいな~


 アリアちゃんは私が「気合入れちゃった」と言ったら納得したけど、内心穏やかではないだろう。


 分かる。アリアちゃんは内心、私の見た目を見下していたのを。


 それはまあ理解しよう。私だって自分よりおつむの悪い子たちを見下しているから。


 アリアちゃんは特にチョロチョロだし。


 そして見た目の差に自信があるから、もし私がきょーくんに告白しても振られる可能性が高いと踏んでて、


 私が振られた後ならば自分が堂々とアプローチするチャンスが来るだろうと高を括ってたんだろう。


 だから私に対しては牽制しなかったよね?


 そもそも、きょーくんの好みのタイプで見た目は普通でも良いと言ったのに、それでも綺麗な方を好むだろうと勝手に解釈してるんじゃない?


 きょーくんは私が地味でもお粧ししても同じように接して、本気で外面より中身を見てくれるのにね。


 でもこうしてお粧しした今の私はアリアちゃんにも引けを取らない。


 それがアリアちゃんの不安を煽る。


 アリアちゃんだけが持ってた見た目のアドバンテージが無くなった今、私が告白すれば受け入れられるんじゃないかって。


 しかしアリアちゃんは今日、本当にスケジュールを被せちゃったから、途中で抜けなければならない。


 つまり、その間は私を牽制出来ないのだ。


 まあ、私としてはそのスケジュールをぶっちしてくれても面白いから良いんだけどね。


 結局アリアちゃんは真面目な所があるから向こうのスケジュールをぶっちしたりせず、やむにやまれぬ顔で抜けて行った。


 もの凄く不安そうな顔で何度もこっちを振り返って見ながら。


 そんな顔見せていいのかな?


 今どんな気持ち?


 元々応援してくれると約束したのが上手く行きそうなのに、後から好きになった人を取られそうなのはどんな気持ち?


 それから私はきょーくんと普通のデートを楽しんだ。


 きょーくんの方も真の恋人である私と二人きりになったのに気が抜けたのか、程よくリラックスしたみたいだ。


 しかし帰り道で告白を催促された。


 そろそろきょーくんを待たせるのも限界かな。


 私は遅くても後一週は待って欲しいと言って、きょーくんをもう少し待たせた。


 そう、ここから畳み掛けるから。


 そろそろ終盤の仕上げよう。




 月曜日の昼休み。いつもの空き教室にて。


「アリアちゃん、私そろそろ行けると思うの!だから、次の週末できょーくんに告白しようと思うんだ」


「そう、ですか。それは良かったです」


 アリアちゃん、祝福するのに顔色が悪いよ?


「でね、この前分かったんだけど、私ときょーくんが住んでるアパートの部屋が隣同士だったんだー、これってもう運命だよね?このまま付き合えたら即実質同棲になっちゃうよ!きゃっ!」


 私は照れてる様に見せて頬を両手で抑える。


 新しい情報を投下されたアリアちゃんは真っ青になって見物だった。


「今までありがとねアリアちゃん。今度は私が力になるから、何か困った事があったら言ってね。私の成績から知ってるかもだけど、私って頭いいから色々出来るんだ」


 アリアちゃんをきょーくんの沼に後ろから突き落としたりね。


「……はい、その時はお願いします。告白、成功するといいですね」


 アリアちゃんは分かりやすく動揺しながらも、私を応援してくれた。


 ねえ、私はわざと惚けてるけど、流石に分かり易過ぎるよ?その応援も口だけだよね?


 私が告白する前に出し抜こうと考えてるのが透けて見えてるよ?




 早速翌日の放課後。アリアちゃんは生徒会長の呼び出しと言ってきょーくんを連れ出した。


 私が告白する前に時間を積み重ねて自分への好感度を上げるつもりだろう。


 分かりやっす。


 その生徒会長の用事って、昨日アリアちゃんが仕込んだ物で大した事のない確認だって知ってるけどね?


 私は髪の毛で隠した耳にワイヤレスイヤホンを付けて、きょーくんたちの様子を盗み聞きした。


『実は俺、イチゴの事が気になってるんだ。だから頻繫に絡んで周りやイチゴに誤解されたく無いから、これからは手伝いとかあまり誘わないでくれると助かる』


『……そうですか』


 移動中にきょーくんが余計な事をアリアちゃんに吹き込んだけど、今回は私の狙い通りの効果が出そうなので許す。


 これでアリアちゃんは更に焦るだろうから。


 そして大当たり。


 きょーくんの言葉で放心してたアリアちゃんが足を滑らせて階段を転び、きょーくんがアリアちゃんを抱き寄せて庇いながら階段から倒れた。


 幸い低い段数だったからどっちも大きな怪我は無いみたい。


『あの、アリアさん?そろそろ退いて―』


 詳細は分からないけど、突然無言になってからのこの息遣いの音。


 さてはアリアちゃん、きょーくんにキッスしたな!


 私との間接キッスを!


 危ない所を助けて貰ったアリアちゃんは吊り橋効果に酔ったのかな?


 やっば、想像したら脳内麻薬ドバドバ出てるし、お股も濡れて来た。


『好きです、恭一さん』


 続いてきょーくんに告白するアリアちゃんの言葉が聞こえた。


 くふふ、もう完全に落ちたね、アリアちゃん。


 楽しみだねきょーくん、もうすぐ可愛い彼女が増えるから。


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