第5話【裏・学園のお姫様は私の獲物・後】

 私からの相談を受けた花京院さんはまず同じ中学だった人を探して聞き込みをした。


 ここが祖父が理事長をしてる学校で、自分は生徒会役員だから噂の悪いきょーくんに対する聞き込み調査と言う建前で。


「葛葉?ああ、確かに中学では色んな女子と遊んでたけど」


「では彼に恋人がいた時はそうでもなかったというのは本当ですか?」


「うん?……言われて見ると確かにそうかも」


「そうですか。ありがとうございます」


 しかし花京院さん想定外にも私が言った通りの答えを聞かされた。


 そして一通り聞き込みをした花京院さんは、直接きょーくんに接触した。


「葛葉さん。ちょっといいですか?」


「いいけど、何?」


「生徒会の雑用に手が回らなくて、クラス委員の葛葉さんにお手伝いをお願いしたくて」


 花京院さんはきょーくんを生徒会の手伝いに駆り出してきょーくんの真面目さを確かめたけど、見るまでもなくきょーくんは真面目に手伝っただろうね。


 そう躾けたから。


 それできょーくんと花京院さんの接点が生まれた日の内に、


「花京院さんとも仲良くしてね」


 とお願いしじしておいた。


 これできょーくんも花京院さんと距離を置いたりしないだろう。


 一方花京院さんはきょーくんについての聞き込みを続けていて、取り巻きになってる女子たちからも話を聞いてた。


「私たちの誰から葛葉くんと付き合ってる?」


「ウチは違うけど、もしかして二人はそうだったりする?」


「私も違う。むしろ手出しして来ないから肩透かしな感じ」


「私も。……格好いいし、優しいし、色々助けて貰ったから、仲良くしたいと思うけど」


 そして彼女たちからもこれと言った悪評を聞けなかった。


 むしろきょーくんが都合のいい男扱いされてそうなまである。


 これ本当なのよね。


 私もあの信号三人娘がきょーくんの取り巻きやってるのを見てた時は色々期待してきょーくんに遊ぶ小遣いを渡してたけど、色々肩透かしだった。


 あわよくばきょーくんを狙ってたのは本当みたいだけど、そこまで本気でも無くてかっこいいきょーくんと仲良くするだけで満足らしい。


 いや、もっと欲出そうよ。


 イケメンと仲良くなれるチャンスなんだよ?


 うん?なんでここまで花京院さんの行動を知ってるかって?


 内緒です。


 それから花京院さんは確信が持てるまで何度もきょーくんを生徒会の仕事に駆り出し、その積み重ねもあって花京院さんの中できょーくんのイメージが好転した。


「ごめんなさい、依藤さん。私が間違った先入観を持ってました。彼は確かに噂と違って誠実な人でした」


 後日、花京院さんとの話し合いで彼女が謝った。


「いいよ、じゃあ私を手伝って貰える?」


「それは構いませんけど、何をすればいいんですか?」


「私が葛葉くんにアプローチする前に、好きな食べ物とか、趣味とか、あと……その……好きな子のタイプとか……聞いて欲しいの」


 好きな子のタイプの所で照れる素振りを見せる私。


 この名演技、女優にもなれそう!


「分かりました。私に任せて下さい!」


 花京院さんは元から協力を約束した上に、今までの色んな負い目に対して軽いお願いだったからか気軽に引き受けてくれた。


 ほんとチョロくて笑ってしまうんだから。


 それから花京院さんは度々きょーくんを生徒会の雑用に駆り出し、雑談に混ぜて趣味などを聞きだした。


 きょーくんの好きな食べ物は唐揚げ。最近の趣味はドラマとネット動画視聴。好みの女子のタイプは見た目は普通でも自分に一途に尽くしてくれる子(つまり私)。


 全部知ってる事。


 女子が好みのタイプを聞くという如何にも勘違いしそうな所で私を挙げたのは花丸あげちゃう。


 知ってるのに何故聞き出させたのかって?


 それは私が知るんじゃなくてこの茶番で花京院さんがきょーくんについて知るのがポイントだから。


 こういう積み重ねが好感度アップに繋がるの。


 花京院さんは私が育てた葛葉恭一きょーくんという沼に嵌ってもらいたいからねー


 で、そろそろ次のステップ。


「花京院さん。もう大丈夫。から揚げも美味しく作れる様になったし、流行りのドラマもチェックしてるし、葛葉くんに一杯尽くせる心構えも出来たから」


 半分嘘です。


 から揚げはレトルトしか作れません。


 まあ、高いの買って作れば十分美味しいよね。


 ドラマの事もきょーくんとダラダラしてる時に流行ってる物を適当にテレビにつけてるのしか見てないし。


 小学校からずっと尽くしてたのは本当だけどね。


 今まできょーくんに費やした時間と金額と労力を聞けば絶対に驚くよ?


「でもその……まだ勇気が出ないから、私を葛葉くんに紹介してくれる?まだ色々、怖いし」


「分かりました、ではすぐに」


 花京院さんはすぐスマホできょーくんを呼び出した。


 私は呼び出されたきょーくんが初対面の挨拶を交わして花京院さん視点での知り合いになった。


 これがもう茶番で茶番で、きょーくんは気まずそうにしてるし、私は笑いを我慢するのが大変だった。


 きょーくん、多分私の意図について変な勘違いしてるだろうなー


 花京院さんのお墨付きで私ときょーくんが付き合った事にしようとしてるとか。


 いや、普通ならきょーくんが考えてる事が正解で、私が狙いが普通から離れてるけどね。


 まあ、しばらくは勘違いしていて貰う方が都合がいいから放置するかー



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 タイトルからご理解いただけると思いますが、イチゴは善良なキャラではございませぬ

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