第4話【裏・学園のお姫様は私の獲物・前】
私、
大好きな葛葉恭一もといきょーくんを他の女に取られるかも知れないスリルに物凄く興奮して、
それでもきょーくんが私を一番に見てくれる事に優越感を感じる自分に。
きょーくんと出会ったのは小学校一年の頃。
同じクラスだったきょーくんを見て分かったポテンシャルの高さが気に入り、餌をぶら下げて仲良くなりながら美容も勉強も運動も勧めて教えられるのは教えて来た。
その傍ら独学だけどプログラミングを覚えて、アプリを作ってお金を稼げるようになって、それを元手に投資などで爆発的に稼げるようになってからは、さらに惜しみなくお金もつぎ込んだ。
両親の名義を使ってるからお金も一度は両親の口座を通るんだけど、二人とも善人なのでお金に目がくらまずに私が自由に金を使えるようにしてくれた。
そのお金で私はスキンケア用の化粧品を買ってあげて使わせたり、欲しがってる玩具やゲームをプレゼントして好感度も稼いだ。
結果、きょーくんはかっこ良くて運動も勉強も何でも出来る、ハイスペックなイケメンに成長した。
そう、きょーくんは私が育て上げたイケメンなのだ。
きょーくんの育成に気を取られ過ぎて、自分の事は二の次になったから私は地味な見た目になってしまったけどね……。
それでもきょーくんは私を一番に見てくれて小学六年の時に起こった告白ブームできょーくんから告白して貰って付き合う様になったから私はそれで十分。
付き合った後もきょーくんが女の子にモテるのは育てた私の成果でもあるから、嫉妬とかあまりしない。
むしろ私の言う事を全部聞いてイケメンになったんだから、モテるくらいはご褒美の内だと思う。
……ほんのちょっとは嫉妬するけど。だからこんな性癖に目覚めた訳で。
こんな性癖に目覚めた後は、きょーくんも若いんだし色んな女の子と遊びたいだろうから、私の楽しみも兼ねてきょーくんに女遊びを勧めてみた。
だけど、きょーくんはあまり喜んで頷いてくれない。
最近分かった事だけど、きょーくんの義理や貞操観念が引くぐらい固いのだ。
最初の浮気だって脅迫されたからだったし。
公認浮気デートそのものだって、きょーくんは私がお願いするから嫌々やってるだけ。
もしかしたら私に隠れて本気で二股するかもと思ったけど、逆にきょーくんは勘違いした女子から告白されても全部振った。
その所為できょーくんは恋愛を面倒臭がって気軽に遊びたいだけのチャラ男、って噂が流れてしまったけど。
ごめんね?
ともかく、私が育てたきょーくんだけどこの貞操観念の固さだけは想定外。
最初こそは揺るがないきょーくんの気持ちが嬉しかった。
しかしそれでもやっぱり私は今まで以上に興奮して性癖を満たしたい。
でもこのままでは厳しい。
きょーくんはただの遊び相手では一線を越える事は無いだろう。
ではどうすればいいか。それは遊び相手以上の親密な相手であればいいと思った。
具体的な線引きでは友達以上
そのためだったら二股とかも許してあげちゃう。
それなら受験と進学で人間関係が変わる今の時期は不向きと思い、私は息を潜めてきょーくんを安心させながら、期を窺った。
そして私立悠翔高校に進学してから一か月。
入学前から決めていた獲物はクラス一の人気者の花京院アリアさん。
混血故の長い金髪とエメラルドグリーンの目が目立つ美少女で、入試で主席を取るくらいに頭もいい。さらにこの学校理事長の孫娘でもある。
言ってしまえば、この学園のお姫様だ。
このクラス、いやこの学校一番のイケメンがきょーくんならクラス一番の美少女は花京院さんだろう。
たまに業務連絡とかで二人が話す姿は本当にいい絵になる。
見た目だけなら誰もがお似合いだと言うだろう。
クラスメイトのそういう噂話を聞く度、私も胸が……ゾクゾクする……
……だからこそこれ以上ない相手で、きょーくんが理事長の孫娘の花京院さんを落とせば、今後学校生活も色々と便利になる筈。
きょーくんだってあんな可愛い子と遊べる様になれば、態度では嫌がっても内心では喜ぶに違いない。
しかし今の所、きょーくんと花京院さんをくっつけるのは結構な無理ゲー。
二人が仲良くなる口実が無い。
クラス内の人間関係をカースト分けするなら、花京院さんがトップで、きょーくんはその一段下。
花京院さんは同性、異性を問わず人気と人望がある反面、きょーくんは私が振り回した所為もあって評判が悪く、軽い女子か評判を知らず見た目に惹かれた女子にしか人気が無い。
さらに私が突き放すなと言い含めた事もあって実際に女子三人を侍らせていて花京院さんからの印象は最低だろうから、花京院さんからきょーくんと仲良くなりたいとは思わないだろう。
そしてきょーくんもまた、私って彼女がいるから無理に他の女の子と仲良くしようと思わない。
だから仕込みと工夫が要る。そして気付いた。
私自身も使えばいいじゃん。
私は二人きりで相談したい事があると、花京院さんの机に手紙を入れて呼び出した。
花京院さんは男子相手に無視はしないけど一線を引いた高嶺の花に見えるが、女子相手には分け隔てなく接してくれる。
クラスで孤立している陰キャな私でも例外ではない。
さらに言えば、入学式の代表挨拶絡みでクラスメイトという事以外にも面識がある。
だから素直に私の呼び出しに応じてくれた。
「花京院さん、来てくれてありがとう。それと入学式の時は挨拶を押し付けてごめんなさい」
指定した空き教室に花京院さんが入って来ると、私はすぐ挨拶と謝罪をした。……全然悪いとは思ってないけどね。
「いいえ、私こそ、理事長の孫という肩書きで気後れさせて晴れ場を奪ってしまい申し訳ありません」
そうすると想定通り、花京院さんが謝り返した。
「いいよ、私が目立つのが嫌いなのは本当だから。教室での私を見てると分かるでしょ?」
「……それは、そうですね」
「じゃあ、この話はお相子?って事でおしまいにしよっか」
「分かりました」
そしてさりげなく心の距離感を詰める。
無自覚だろうけど花京院さんの中で私は、五分の貸し借りがある勉強のライバルな友達になったのだろう。
「それで、相談があるとの事でしたが」
「うん、それだけどね。実は私、同じクラスの葛葉恭一くんとは小学、中学も一緒で、中学から好きになってたんだ」
ここから始まる私の噓八百ストーリー。
「でも好きになった時にはもう葛葉くんに彼女がいて、諦めてくすぶったままいたらその彼女と別れて、チャンスだと思ってこの高校に進学すると聞いたから私も追って来たの」
実はきょーくんに他の彼女なんていなかったし、もう裏で私と付き合ってるけど。
「そうだったのですか、でもあの人はあまりおすすめ出来ませんが……」
花京院さんが難色を示す。
うん、中学で私がきょーくんを振り回して出来た悪評の所為だね。
もうちょっと控えめにやるべきだったなー
「それって、葛葉くんの噂の所為?」
「……まあ」
「確かに葛葉くんは人気あるけど、節度無く女の子と遊ぶような人じゃないよ。実際、彼女がいた時はそんな事全然しなかったし」
エアかつダミーな彼女だったけど。
「それにフリーな今でも付き合っていない子とはキスとかその先の事も全然して無いって聞くから、実は凄く誠実な人なんだよ?」
彼女の私が意外なくらいに。
「キ、キッ、キスにその先!?」
あら、真っ赤になっちゃって。
想像よりも初心な反応ですな。
処女かな?
ちなみに私ときょーくんは、中学を卒業した日に記念として処女と童貞を交換して卒業しました。ちゃんと避妊もしましたよ。
「でもね。私は見た目が地味でクラスでも浮いてるから、一人で葛葉くんに声を掛けたりすると、周りの子たちからイジメられないか怖くて……、花京院さんに手伝って欲しいの」
「そうでしたか……」
花京院さんが真剣な顔で考え込む。
祖父が自分の為に建てた学校でイジメが発生するかもと聞いたら、気軽には聞き流せないのもあるだろう。
「依藤さん。少し待って頂けますか?あなたの言葉を疑う訳ではありませんが……あなたの認識に誤解があるか心配なんです。しばらく私が葛葉さんの人となりについて調べますので」
「……うん、分かった。ごめんね、こんな事お願いして……」
茶番に付き合わせてしまってね。
「いいえ、お友達ですから」
花京院さんが笑って答えてくれる。
「花京院さん……!ありがとう!」
そう。友達だよ?
今から行われる作戦の名前は「友達の恋路を応援してた筈なのに、気付けば自分も好きになってかすめ取ってしまったぁ!」作戦……なんちゃって。
こうも計算通りに人が動くと、何でこんなに楽しいんだろう。くけけけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます