『外道剣豪』が『魔術異世界』で戦姫となる~魔法が使えない伯爵令嬢は『北辰一刀流 剣術』で無双する 第一部 クルードセツア迷宮攻略 ~

誰よりも海水を飲む人

~ 序章 ~ とある剣豪の噺

第1話  その男は博打を打ち、女を買う

 

「 さあ!さあ!張った!!張った!! 」

 

 晒を巻いた勝気な女賭博師が叫ぶ。

 

 街はずれの長屋に強面の漢達が一堂に介し、部屋の中は異常な熱気と汗、煙管の独特な匂いが充満していた。

 

 漢達はしかめっ面、唸り声をあげ……丁半のどちらかを答え、次々と札を出していく。


 ……そして、最後の札が出揃うのだった。



「 よろしゅうござんすね……よろしゅうござんすね! 」

 

 

 女賭博師は周囲を見渡し、両脇の漢達とをして、小さく頷く。

 

 

「 丁半揃いました! 」

 

 

「――勝負!」


 

「……」

 

 

 薄暗い長屋の中、静寂が支配する。

 部屋の熱気がさらに上がり、誰かの固唾を呑む音。

 女賭博師の首筋、流れる汗の雫が大きな谷間へと伝い、畳に落ちた……。


 

 ――その瞬間、伏せた壺を開け女賭博師が叫ぶのであった。

 

 

「…………丁!」

 

 

「だぁぁ――‼」

 

 

「くそっ‼……丁かぁぁ――!」

 

 

 一斉に声が漏れる。

 

 

 その落胆と歓喜が飛び交う場内に……。

 

 

 一人の男がひと際、大きな声で叫んでいた。

 

 

 「よっしゃー!これでじゃー!!」


 

 片手を天へと力強く突き上げる男。

 歳は三十前半ぐらい、ぼさぼさの長い髪を束ねており、目元は鷹のように鋭く、無精ひげ姿。

 ボロボロの着物を着崩し、堂々たるあぐらをかいていた。


 次々と札が回収される中……気分良く煙管を吹かす。

 

「よ!みきさん!調子はどうですかい?」


 突如、馴れ馴れしい態度で、隣に座る――出っ歯の男。

 

「また、あんたか!」

 

 そいつはよく賭場に顔を出す常連で、何度か仕事で一緒になったことのある男であった。

 

「おお!また勝ったですかい?」

 

「……まぁな!」


 と、気のいい返事をすると三度、煙管を吹かした。

 細く、長い紫煙が勝利の余韻を含み、ゆっくり漏れ出す。

 

 実に、気分良い……。

 

「懐が潤っていいな……その運、少しは分けてくれよ……」


「ふん、運も実力の内よ!悔しかったら……お前さんも人に頼らず、自力で何とかするんだな!」


 出っ歯の男は「そんな……」と空の財布を逆さまに振り、物乞いのような表情を浮かべ、戯けてみせた。

 

「……と、冗談は、そこまでにして……ちょっと、小耳に挟んだけどよ……」


 と、突如――真剣な口調になり、語り出す――出っ歯。


「……ん、……何を、だ……?」

 

 その表情に、思わず眉を顰めた。

 なぜなら、いつも陽気な噂話をしてくるこの出っ歯が、今日は神妙な面持ちしていたからである。

 

「なんやら……また、に、首突っ込んだって……えらく噂になってぞ……」

 

「……あー……そのことか……」

 

 すぐに勘付く。

 心あたりは――あった。


「まあ……大したことねえよ!それに知ってんだろ、俺の腕っぷしは!」


「……そうか、でもよ……この事が、もし親分衆の耳にでも入っ……」

 

 そいつは……あんまり

 

「――そ・ん・な・こ・と・よ・り!俺はそろそろお暇させてもらうからよ!」



 ――強引に、話をはぐらかす。

 


「えっ、……あれ⁉ もう一勝負しないのかい?」


「ああ!……今日はこんな大金稼いだんだ、もういいや!」

 

 男はそう言った後、大袋を受け取り――早々に席を立った。

 

 その姿を見て「……ひょっとして……あそこか?」と、変な笑みを送りながら、怪しい手つきで合図を送る。


「おうよー!これからお楽しみじゃー!」


 と、同じ手つき、下卑た表情で返した。

 

 その様子に 出っ歯の男 はもう一度、釘を刺すような真剣な顔を見せ……。


「 ……まあ、あんたの剣の腕前は、よく知っているが……くれぐれも用心したほうがいいぞ…… 」


「 ――わってるよ!ご忠告どうも! 」

 

 そう、気のいい返事をし、颯爽と場内を出る。

 

 賭場の門番から刀を受け取り……。


 そして……。

 

 鼻唄交じり――花街の方へと向かったのであった。



 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 

 常闇の山際、一際目を引く鮮やかな紅梅色に染まった街。遊郭。

 色に惑わされた雄達が、一夜の欲望と愛を求め、大通りは活気と賑わいを魅せていた。

 そのとある一角の屋敷、二階のお座敷から、一際大きな笑い声が聞こえてくる。


「 ガハハハッ! 飲めー! 飲めー! 」

 

 両脇に綺麗どころの遊女を抱え、煙管を吹かしながら声高らかに叫ぶ。

 

 お座敷は壁一面、赤を基調として、艶やかな睡蓮花や菊の紋様が漂う。

 お香の甘い匂いが脳の奥に染み付き、まるで一夜の夢を魅せているようだった。


「さあ!さあ!みきさん、もう一杯いかがでありんすか!」


 左脇の遊女がお酒を差し出す。

 見た目は目元が切れ長の美人顔、妖艶な雰囲気。

 着物を付けていても分かるくらい、立派な胸と尻を持ち、印象はなんとなく気位の高そうな女だ。


「おお!そうか!それじゃあ、遠慮なく!」


 酒を注ぐ際、着物の隙間から白く、ふくよかな曲線の谷間が見え……思わず鼻の下が伸びる。

 

 注がれた酒を一気に飲み干すと、この後の展開を妄想していた。

 

 すると、もう右脇、もう片方の遊女がおっとりした声色で話しかけてきた。


「……たしか?明日は親分衆との大事な用があるとおっしゃってませんでした?」


 いつも指名するお気に入り子。

 見た目は可愛いらしい顔立ちに、おしとやか雰囲気、桜色の着物が良く映えており、こちらも負けず劣らずの胸元をしていた。


「親分衆との用?……そんなことはどーでもいいの!それよりも……」


 おっとりした遊女の腰元に手を置き、強引に引き寄せ、胸元を覗く。


 ほんのり桜色、艶のある唇。

 漏れる息に合わせて、揺れる豊満な胸に――心が躍る。

 

 そして、……その白い谷間めがけて、わざと盃の酒を垂らした。


「――きゃっっ!……冷たい!」


「おっと!手元が狂った!これはいけねぇ!」


 すかさず、遊女の胸元に顔を近づける。

 溜まった雫を舐めようとした。


「もう!みきさん!」


 可愛く怒って制する遊女。

 その仕草や表情を、存分に堪能していた。


 すると――。

 

「――こちらもこぼしたでありんす……」


 色気のある遊女が自らの胸元にお酒をこぼして

 

 更に舌なめずり顔、前屈みで誘惑する。

 着物は肩口からはだけ、綺麗な曲線が胸下まで、露わになっている。


 その光景に息を吞んだ。


「おお、そいつはいけねぇ!もったいない!」


 すぐさま近寄ると、遊女の股下、着物の中へと潜っていき……。


 少しずつ……色々なところをまさぐる。


 進む度に妖艶な息が漏れ、喘ぐ声が聞こえる。

 

 そして、ようやく着物の隙間から顔を出す。

 光に照らされた白い肌。

 下腹部の雫を舐めて、下乳の隙間から遊女の顔を覗き込んだ。


「んーん!やや?甘い!甘いぞ!」


「……そんなこと……恥ずかしいでありんす!」


 頬を赤らめる遊女。

 冷ややかな表情を溶かす、最高の答えが返ってきた。


「おっと!こっちの酒は苦いのかな?」


 すっかり、気分よくなった男は……。

 すかさず、おっとりとした遊女の胸にも狙いを定める。


 そして、……。


「もう……みきさん!……ダメ……あっ!……」

 

 夜の遊びを十二分に満喫する。


 

 男は、空になった酒瓶を振って、声高らか叫ぶ。

 


「酒足りないぞ――!もっともってこーい!」


 

 ――陽気にどんちゃん騒ぎを楽しむ男。彼はまだ知らなかった。それがを……。







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ご愛読頂き誠にありがとうございます。


この作品は処女作です。至らぬ点や修正箇所ございましたらコメント頂けると幸いです。


物語のプロローグは時代風となっており、作者の先祖でもある剣豪を題材に執筆させて頂きました。


子供の頃、祖父から聞いた話


酒を飲むわ 女遊びはするわ 博打は打つわ 人は斬るわ


の最低な人間だったそうで当時7歳の子供になんていうことを教えているんだ!と思ったのを今でも鮮明に覚えています。


この内容を元にこのファンキーなご先祖様をいっそ異世界転生させてみたら面白いのでは、と思い作った作品です。


この小説を読んで「面白そう」「楽しみ」「倫理上、大丈夫か?」と思った方


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