49、そういえば騎士ってどうなってなれるの?
「わーい!広い部屋をあてがわれましたよ!お風呂もありますし、至れり尽くせりです!サイコーです!ぽよん、ぽよん、ぽよーん!」
ベッドをトランポリンのようにして、飛び跳ねまくるリディに、どんだけはしゃいでいるのだと突っ込みたくて仕方ない。
広い4人部屋であてがわれたこともあり、3人パーティーでいても広くて寛げる素晴らしい部屋なのには間違いない。
「リディ、お前は何歳なんだ?」
「ボクは18歳でーす」
「お前……、わたしより年上なのか……」
これが18歳の中性的な顔をした騎士志望の女性なのかと疑問になる。
普段の立ち振舞いがカスミより精神年齢が幼くて驚かされる。
「なぁ、プライド?騎士ってどうなればなれるの?」
「年に1回ある騎士の志望試験が12歳から受けられるぞ。あとはスカウトだな。まぁ、エリィィィトなら12歳でスカウトが当たり前よね!オーホッホッホッ!」
「そ、そう……」
案に自分が最年少でスカウトされたという自慢話をしたかっただけらしい。
相変わらずエリィィィトマウントはしないと気は済まないようだ。
「リディは騎士の試験受けないのか?」
「まともにやったら受かる気がしないのでスカウト待ちです!えっへん!」
「そうか。そのスペックではスカウトなんか来ないぞ」
「な、な、な、なんてこと言うんですかプライドさん!ボクの努力は誰かが見てくれているはずです!諦めない心が無限に頑張れる闘志に繋がるんですよ!」
「ふーん」
興味無さそうなプライドは塩対応である。
でも、案外強運スキルが貯まればワンチャンスカウトもあるかもしれないと思う。
リディが騎士になった瞬間、敵になるわけだが。
「…………」
と、今はのんびり風呂に入り終わり寛いでいるわけだがゲーム本編ではこれよりイベントがはじまるんだよなぁ……。
ちょっとソワソワしてしまい、俺の心は落ち着かない。
だから、今日はプライドとのイチャイチャもする気はなくソファーできちっと座って構えているのであった。
「ぽよん、ぽよん、ぽよーん!」
「なんか今夜のユキは心ここに有らずな空気じゃないか」
「そ、そうかな……?」
明るい部屋でベッドで寝そべっているプライドが、俺を一直線に怪しむようにこちらを見ているのに気付く。
そりゃあ、ゲーム知識がないならリディみたいに呑気でいたかったのも事実であるが、今夜はそんな気にならない。
「こんな豪華な部屋で心なしか緊張しているんだよ」
「本当か?」
こんなきらびやかで広い部屋でプライドと愛し合う行為をしてロマンチックに過ごしたい欲もあるのだが、リディの前では簡単に出来ないというジレンマもある。
というか、今後俺はどうやってプライドとイチャイチャする時間が取れるのだろうか……?
「あとは……、虫の知らせというのかな?なんか嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感だと?」
「ぽよーん!ぽよーん!嫌な予感ですかぁ?ボクはなにも感じませーん!」
リディはトランポリンごっこに興じていたが、プライドは俺の言葉に影響されたのか寝ていたベッドから身体を起き上がらせる。
実際には虫の知らせなんか何もないのだが、これから起きることがわかっている俺なりに遠回しにプライドへ危機感を持って欲しいニュアンスで伝えておく。
「ユキはアーク村襲撃を察知していたからな……。一応わたしも気を引き締めておこうか」
「何もなかったらごめんな?」
「そんなことに愚痴愚痴言わないさ」
「ふっ」とプライドが笑ってみせた。
やはり、元騎士だけあって虫の知らせのような感覚は無視出来ないのがわかっているらしい。
「ぽよん、ぽよっ……!?いだっ!?足をひねりましたぁぁぁ!?痛いですぅぅぅ!」
ベッドトランポリンをしていたリディは着地した際の足が変に曲がって悶絶していた。
ぷるぷるしながら、足の付け根を撫でている。
「ゆ、ユキさんの嫌な予感が当たりました……。虫の知らせの正体これですよ!」
「ふざけんなユキっ!こんなくだらない虫の知らせをわざわざわたしに教えたのか!?」
「違うよ!?そんなくだらない予見してないからね!?」
「くだっ!?くだらなくありませんんん!痛い!痛いですぅぅ!」
リディが痛い痛いと涙声でベッドに寝っ転がっていた時だった。
──バギッ!
何か鈍くて大きい音が部屋のドアの向こうから聞こえてくる。
その音に俺とプライドは目を合わせる。
彼女も何か悪いことが起きたことを察したらしくすぐに鞘に収められた剣を手に持つ。
俺も剣を握り、プライドと部屋の真ん中に集まる。
その間にも、複数人が騒いでいるような声が近いのがわかる。
「どうやら招かれざる客が来たようだ」
「もしかしたらプライドの元仲間かもしれないぞ?」
「認識妨害魔法があるし、どうとでも誤魔化せるさ」
「負けるなよ?死ぬなよ?」
「ふっ。エリィィィトが負けるはずがない。それに死んでもお前がいるじゃないか」
「俺が死んだ時のこと考えてる?」
「まさか?死ぬわけないだろお前が」
自信満々なプライドと頷きながら部屋を飛び出す。
すると廊下の奥から『うおおおお!』と騒いでいる男の声がする。
「わたしは曲者が侵入した玄関の方へ向かう。ユキ、お前はサファイア家の人たちの安全を確認しに行け」
「わかった!」
「ではっ!」
そう言うと階段方向へ走り、ジャンプして玄関目掛けて行った。
高いところから下の階に着地したようで彼女の身体能力の高さに頼もしさを感じた。
俺は自分の仕事であるサファイア家の人の安全を確かめに向かおうと決めるがどこに誰の部屋なのかわからない。
リディでも呼びつけて強運スキルに委ねようかと悩んだ時だった。
『人が居たぞ!殺せっ!』
『きゃああああああ!?』
物騒な声とかき消すような女性の悲鳴が聞こえてくる。
サファイア家夫人のものか、口の悪いお姉様のものか、毒舌ロリのミサトちゃんかはわからないが彼女らの中の誰かが危ない状況のようだ。
その声の方向へ引き寄せられると、ドアが開けられた部屋を見付ける。
俺は焦燥感に刈られながらその部屋へと入って行く。
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