47、サファイア家

ミサトちゃんに案内されて約15分。

「ここが私の家です!」と止まった家は貴族の館と表現出来るくらいに大きな家であった。

こんな豪邸に住むお嬢様ですら、虐められる儚さには同情し、泣きそうになる。


「め、めちゃくちゃ大きいんですけど!ぼ、ぼ、ボクドレスとか持ってませんよ!?貧乏なんで!」

「ドレス着て来いなんて誰もリディに言ってないでしょ」

「た、確かにそうでした……。恥ずかしい……」


リディの貧乏カミングアウト含め、勘違いにリディがシュンと気落ちして俺から目線を外す。

「的確な突っ込み過ぎて鬼だな……」と、プライドがリディにフォローする形になっている。


「別にドレスとかスーツ着て来いなんて私言いませんよ」


ミサトちゃんもリディにフォローするように言うと、リディも「そうですよね!」と元気を取り戻す。


「あなたたちが持っていないことくらい見ればわかりますよ!」

「ひ、酷い!?」

「毒舌ロリ、リディにトドメを刺す」

「あわわわわ!?大丈夫ですかリディさん!?持ってない人に持って来いなんて言うほど鬼じゃないですよ私!?」

「いや、あんた鬼だよ」


リディの心のライフポイントが尽きかけている。

まだ身体はピンピンしているのが救いだろうか……?


そんな風にリディがミサトちゃんに虐められながらも、彼女が暮らす屋敷に案内されていく。

屋敷内にミサトちゃんが入っていくと、お手伝いのメイドさんが「お帰りなさいませ」と丁寧に挨拶をされる。

「こちらお客さんよ」とミサトちゃんが俺とプライドとリディを見せびらかすようにすると、そのメイドさんから頭を下げられる。


「サファイア家にお越しいただきありがとうございます!」

「うわぁ!?メイドさんですよメイドさん!」


リディがガチガチに緊張しているが、その横のプライドはこういった場に慣れているのか怖じけ付くこともなく普通に棒立ちしているだけである。


「サファイア家だと……?」

「はい!私の名字なんです!ミサト・サファイアと言います!」

「ということは……。そういうことか……」


ミサト・サファイア。

その名前を聞くと、プライドもすべてを察したようだった。

ユキ・エメラルドの家に『エメラルドの証』があったのと同じ、この家には『サファイアの証』が納める家である。


「エメラルド家と違って立派な屋敷だな……」

「あれ?プライドさん、俺の家をディスりました?」

「いや?比べただけでディスってないさ」

「比べることがディスってるんですよ!」


お姉ちゃんであるサキ・エメラルドが貴族でない我が家を嘆いていたが、本来であればエメラルド家もこれくらい大きい家に住めた可能性があったと思うとなんとも悲しい事実である……。

同じ勇者の末裔なはずなのに……。


「あぁら?なぁに?この貧乏人たちはー?」

「あ!お姉様!こちら、私のお客様です!」

「ミサトのぉー、おきゃくー?」


メイドさんの挨拶が終わると、突然屋敷のあった階段から人が降りてきて嫌みな女性の声がする。

いかにもな偉そうな貴族様という良い雰囲気は一切無さそうな人である。


「これはこれは……。なんとも安物な鉄の剣を3人して装備だなんてぇぇ……。見るからにE級駆け出し冒険者トリオじゃないのぉぉ」


ねーっとりとした風に嘲笑うミサトちゃんのお姉様。

口振りからして、かなり人を見下している。

長い髪から見える人当たりのキツそうな目の女性はわざとらしく「くすっ」と鼻で笑う。


「でも、聞いてくださいお姉様!私が虐められた時にこの弱そうなユキさんがドラゴンマジックズを軽くあしらったんですよ!ね?ユキさん?」

「あ、どうも。ユキです」

「あぁ。あのいきってるガキ3人のマジックドラゴンズとかってやつ?あんなのに負けるのミサトだけよ。全然褒められないわよ」

「…………」


ミサトちゃんのお姉様もマジックドラゴンズと面識があるらしい口振りだが、まったく評価をしていないらしい。

評価していないマジックドラゴンズを軽くあしらった俺にもまったく評価をしてくれないようだ。


「ぷっ……。なにこのよわっちそうな男の子。ゴブリンにレ●プされて簡単に快楽落ちしてそう」

「めっちゃ失礼じゃん……」


一応ゲームでも、ミサトちゃんのお姉様はイヤミな性格で煽り屋だったな……。

毒舌ロリに、イヤミな女性と中々にサファイア家も癖のある家である。


「中々人を好き勝手言ってくれるじゃないか」

「あん?なにあんた?」


しかし、プライドは俺をバカにされたのが気に食わないらしくお姉様に激しい怒りを見せている。


「このユキはわたしの彼氏だ。その彼氏を悪く言われて笑って流せるほどわたしは優しくないのでな」

「え?これが彼氏?ぶふっ……。し、失礼」


本人を目の前にして吹き出すお姉様。

その人を舐め腐った態度にプライドのストレスゲージが急上昇しているのがわかる。

「や、やめよう!俺は気にしてないから!」と制止をするが、プライドは「お前は女に優し過ぎる」と何故か理不尽に怒られる。

リディもミサトも2人の喧嘩待ったなしの空気に怯えていた時だった。


『──皆さん、落ち着いてください!』


俺たち全員を止めるように勇ましい声が聞こえてきた。

「お、お兄様!」とミサトちゃんは泣きだしそうになりながらその男性に甘えた声を出す。


「……ここで全員揃ったか」


サファイア3姉兄妹きょうだい

『ハートソウル』において、彼らの誰かはユキたちのパーティー入りをすることになる。

これからサファイア3姉兄妹が仲間になる展開になるかはわからないが、しっかりと彼らについて観察しなければならないと心の中で意気込むのであった。

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