44、『サファイアの証』
「まったく……。ボクの前で変な気を起こさないでください」
「わたしとユキだけに許された行為だ。非難されるつもりはない」
「またするつもりですか!?」
リディに説教されながら、正座で座らされるプライド。
しかし、プライドはリディから怒られた説教であっても、堂々と言い返していて反省の色は見えない。
確かに今回は寝ているリディの前でことをやらかそうとしたプライドが悪いのだが、ぶっちゃけやりたかった本音を隠した俺も悪いので口出したフォローも、プライドを責めることも出来ずに一緒に正座になっていた。
「ボクの憧れの人が男を文字通り襲おうとしていたなんてボクの心臓も持ちませんよ」
「憧れの人?誰だそれ?」
「あ……。き、き、気にしないでください!」
「なんだ?気になるじゃないか」
「気にならないでください……」
リディがプライドに対して赤くなりながら問いかけの答えを避けていく。
原作知識があるので、リディの言いたいことはなんとなくわかっていたが、プライドに明かす気はないようだ。
自分の胸に残しておきたいのかな?と察すると、「まあまあ」とプライドを宥めた。
「ユキがそう言うなら」と少しわだかまりはあれど、リディからは「すいません……。勘違いだと痛いので確信してから言います……」と約束してくれた。
それからは、宿屋で提供された食事を目が覚めた2人がバクバクともの凄いスピードで完食していく。
やっぱりよく食べる女の子は可愛いなぁとほっこりするところがある。
カスミも、俺よりだいぶ食べるスピードが早いんだよね。
年を取る度によく食べる子が可愛いなんて思いに刈られてしまう。
因みに俺は身体も小さいので、食べるスピードはそんなに早くなかったりする。
リディから見ても「味わって食べてますねー」と、普通の食事スピードをゆっくりめに捉えられていた。
食事も終え、この宿屋に泊まる意味もなくなってしまい3人は外で冒険の再会になる。
「はぁぁぁ!チャートが組めてのはじめての冒険再会!新しい1歩を踏み出した感あります!」
「チャートが組めただけで大袈裟な……。まだこんなのスタート地点ですらないぞ。リディも騎士を目指すならエリィィィトを目指せ」
「エリート!ボクなんかには縁がないけど輝かしいワードです」
特に目を覚ましたばかりのリディはルンルン気分である。
中性的な顔は満面の笑みがこぼれていて、この顔を見てしまうと男には見えないキュートさがある。
「プライドかリディに聞きたいんだけど、次に近い街ってどこになるかわかる?」
「わたしはいつもワープ魔方陣ばかり使っていたから地理なんか頭に入ってないぞ」
「ハイテク機械ばかり使う弊害が……」
「ワープ魔方陣のある街とか、よく行く街は知ってるがこの辺ははじめてだな……」
わからないことがあるとすぐにスマホを使う若者が増えて、覚えられない現代人みたいなことが、この世界でも起きてしまっていたようだ。
どこ行っても人間って変わらないね……。
そんなプライドの横でリディが「ボクは地図持参しているのでわかります!」と自信満々だ。
「見てください!地図ですよ!」
「あー、そういえばこんな形だったな」
いつかに見たゲームと同じ形の世界地図である。
ちらほらと覚えている地名があって懐かしい気分にさせられる。
「ここから近いのはバーンですね!魔法が栄える地域ですよ!ボクはサラグス生まれなので他のところに行ったことはありませんが、色々な土地を調べるのが趣味だったんでナビゲートはお任せください!」
「騎士志望がナビゲート役で良いのか?」
「ただの趣味ですから」
「次はバーンか。そうだったな……」
「ユキさんは知ってましたか!さすがです!」
次でワープ魔法を覚えられるのは記憶にあったが、バーンの街の名前は完全に忘却していた。
そっか、もうバーンになるのかとちょっと驚きがある。
「どうしたユキ?オークに襲われそうなショタの顔になっているが?」
「それって不安になってるってこと!?なんてまわりくどい指摘!?」
「わたしはユキを心配しているんだ」
「本当に心配してた?」
からかって馬鹿にしていたニュアンスにしか取れなかったけど……。
と、文句は言いたかったがそれを飲み込んで大事なことをプライドに告げなければならない。
「プライド……」
「ん?どうした?」
「次の街バーンには、証がある」
「な、なんだと……!?」
「『サファイアの証』。そう!確か『サファイアの証』が保管されているのがバーンだったはずだ」
『ハートソウル』のゲームの中でも『サファイアの証』を入手するために騎士たちが攻めいるイベントがあったはずだ。
間違いない。
バーンは重大なイベントが起こる街になる。
「『サファイアの証』!?なんかお宝の予感ですね!」
「お前は呑気か!」
「はぇ?」
「待てプライド……。まったく事情を知らないリディにその突っ込みは流石に理不尽が過ぎる」
リディの表情は?ばかり浮かんでいる。
一緒に旅をするには彼女にも事情を説明しなければならないのを忘れていた。
歩きながら『エメラルドの証』から俺たちの旅の目的を彼女に知ってもらうために説明をする。
相づちを挟みながらも、なんとなくわかったというレベルまでは理解してもらったのであった。
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