第49話 四人?


「それで?」

「え?それで?って?」

「真剣な顔で相談があるんだけど…って言うから付き合ったけど、なに?惚気け?」

「な!?なんでだよ!」


 俺はこの前のことがどうしても気になって、部活が終わって着替えてる時に、奏汰に声をかけ、帰りに話を聞いてもらっていた


「だってそうでしょ。そんなの、誰が聞いたってそう答えるよ」

「そんなことないだろ…」

「しかも相手はあの七瀬さんだよ?俺だからいいけど、遥斗、他のやつに話したら刺されるよ?」

「そこまでかよ…」

「確かに頑張って、とは言ったけど、まさかこんなに手が早いなんて思ってなかったからビックリしちゃった」

「人聞きが悪いよ!」


 本当、言い方だよ、言い方…


「それで?なんの相談?」

「う、うん…だから、その…これって…」

「うん。これって?」

「これって…あの…」


 くっ…いくら奏汰相手でも、俺のこと好きなのかな…なんて聞けない…


俺が次の言葉を言えずにいると、


「ねえ遥斗、考えてもみなよ。高校生の女の子が、なんとも思ってない男子と、手なんか繋ぐわけないでしょ?」

「そ、それは…」

「それで?どうするの?」

「どうするって…」


 俺はそれ以上何も言えなくて俯いてしまう


「遥斗…やっぱりまだ…」

「…え?」


 奏汰の言葉の意味が分からなくて顔を上げると、少し悲しそうな目をして俺を見ていた


「奏汰…?」

「いや、なんでもないよ」


 奏汰は「う~ん」と悩んだふうにした後、


「じゃあさ、俺達と一緒に、四人で遊園地でも行こうよ」

「……四人?」

「俺と莉子と、遥斗と七瀬さんでさ」

「…え?…それって…」

「そういうことだよ」


 そう言ってニッと笑う奏汰は、その時の俺には、とても眩しく見えた





 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 春休みに入ってから、3月のうちは部活もあって、それなりにやることもやって過ごしてたけど、4月に入ってからは部活もなく、なんとなく時間だけが過ぎていく。

 元々春休みはそんなに長くないし、このままぼーっとしてると、すぐに終わってしまいそうだ。


「八神くん?まだ解けないの?」

「え?ううん、もうちょい」


 それでも、今日は、というか今日も、七瀬さんと一緒に勉強している俺。4月に入ってからは、こうして一緒にいる時間が増えたと思う。


「ところで、本当にいいの?」

「ん?ああ、まだ気にしてるの?」

「だって…」


 奏汰に言われた、四人で遊園地に行くという話だけど、ほとんど幼馴染みの俺達三人と一緒に行くというのが、やっぱり気になるみたいだった。

 確かに、少し居心地が悪いかもしれない


「うん。あの、もし気が引けるなら、無理に行かなくてもいいからね」

「え?三人で行くの?」


 あの二人と俺の三人とかないでしょ


「いや、そんなわけないよ。七瀬さんが行かないなら、俺も行かないよ」

「え…」


 奏汰には悪いけど、せっかく遊園地に行くならみんなが楽しくないと。七瀬さんが楽しめないのに、無理に連れて行くなんて出来るわけがない。なんかごめんね


 俺はそう思って「だから気にしないで」って優しく言ったら、なんか「はぅ…」って小声で言ったきり、彼女は顔を赤くして俯いてしまった


 え?…え?どうしたら…?


「あの…私、行くから…」

「え…でも、いいの?」

「…うん、行く」

「本当、無理しなくても…」

「もう…行くったら行くの!」

「あ…はい…」




 顔を赤くしたまま、少し涙目で俺を睨みながらそう言う七瀬さんの剣幕に、俺はただ圧倒されるだけだった





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