第2話 いじめから逃げて。山村留学時代のトラウマ
それで陰口を叩く人もいましたが勉強できる私にとっては関係ありませんでした。ただ山村留学先の里親と担任の先生が最悪な人でした。
里親さんの家には当時3年生の女のお子さんがいました。
里親さんは体罰を容認していました。
私にはさすがにされなかったのですが、怒られると里親さんのお子さんがサバイバルナイフで脅されたり、木刀で頭や背中を叩かれたり、一晩中外に放り出された挙句に川の底に沈められ、時にはサバイバルナイフで刺されたこともあった、とその女の子は笑いながら言っていました。
私も冗談だろう、と思っていると夏休みのある日その女の子は両親の機嫌を損ね、木刀で叩かれ、泣き叫ぶのを私は耳を抑えて聞いていました。
サバイバルナイフで膝をこすると血が止まらないんだよ、とその子がにこやかに言っていたときの光景が今でも忘れられません。
私も直接的な体罰はなくても食後3時間、叱責されるのは当たり前になっていました。
その頃から私は自傷行為が始まりました。
なぜ、そうなったかというと帰省していた女の子のお姉さんから、反省があるならば自分で頭を叩け、と言われたからです。
自分を反省するために頭を叩き、毛を抜く、カッターナイフで手を切ったこともありました。
あれは虐待だったのか? そうだった。虐待だったんだ。
虐待された子供は自分を責めるといいます。
ニュースで虐待された子供の話を聞くとふとあの頃の自分やその女の子を思い出すのです。
泣きながらその日の夜に見上げた星が綺麗だったのを私は今でも覚えています。銀鏡は星が綺麗な村で満天の星は掴めそうでした。あの時の星の悲しみは一生涯忘れられないでしょう。泣きながら見る星は言葉にはできないほど美しかった。
その時の悲しみの体験が後に九州芸術祭文学賞で次席受賞した『星神楽』という作品に生かされています。銀鏡は星に祈りを捧げる銀鏡神楽が舞われる地域で、この『星神楽』という作品も孤独な少年が星に祈りを捧げる小説です。
銀鏡という土地は私にとって原点のような故郷です。しかし、その学校の先生と里親さんから受けた心の傷は私の人生にとって計り知れないダメージを受けました。
学校でも担任の先生は、体育の時間に襲われたときの防御の練習をしようというのです。
幸い私はその場を回避しましたが今、思えばとんでもない人です。
複式学級の授業中にも、私が性的に可愛くないなど時には凶悪犯罪の話をし、教師としてありえない発言をしていました。
私の症状に気付いた校長先生の勧めで、受診したのはそれからまもなくでした。
知能検査を受けてみると言語理解が138で、トータルで124という数字をもらい、状況を鑑みて中学受験を勧められました。今でこそ、高IQの子供、ギフテッドの存在が世に知られるようになりましたが2000年代当時、まだまだ理解はありませんでした。
その間もなく診断結果を知らないはずの里親から「発達障害の人はあの神戸少年事件の犯人が発達障害だったからお前も人を殺すから出ていけ、自殺してもいいがうちで首を吊ることはやめてくれ」と言われました。
恐怖で私の心はボロボロでした。
暴言を吐きながらも、その里親さんから子供の頃に壮絶な虐待を受けていた、と泣きながら告白されました。
だから、私はその里親さんをもう、憎んではいません。
今、思えば、虐待の連鎖だったのでしょう。
そのお子さんも事情を知っていたので、お母さんである里親さんを庇っていました。
そんな状況にもかかわらず、中学受験では特待生として合格し、卒業式のときに、その担任の先生からその神戸事件の犯人と私が親戚だと罵り、挙句の果てには、加害者家族を差別して何が悪いと言いました。
そもそも、私はその元少年Aとは全く関わりもないですし、それなのになぜ、と思うと理由がありました。
授業で自分史をやった際に私が男の子だったら名づけられた名前の候補にその元少年Aの本名があったらしく、先生は大きな勘違いをしていたのです。
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