ハーレム野郎と呪い

「ね、ねえどうしたの?」

 西園寺と出掛けてから約一週間後の月曜日。

 西園寺はいつもとは打って変わって朝から浮かない顔をしていた。

 お昼休みは機嫌がいい事が多いので珍しい。

「実はさ、...」

 どうやら、この前大切そうに持っていた袋の中身のマフラーを井上に渡したらしいが、今日の朝それと全く同じマフラーを井上の近くにいつもいる女が履いていたらしい。

 正直、これが井上以外だったらたまたま同じものを買ったんじゃない?とでも言う所だが、あいつの場合ありえそうなのが怖い。

 というか普段の行い的にも多分渡しているだろう。

「し、失礼だったらごめんだけどなんで井上くんのこと好きなのかな?」

 本当に謎だ。

 正直、西園寺ならもっとイケメンで性格が良くて金羽振りも良い彼氏の一人や二人余裕で作れるだろう。

 男の俺としてはなぜここまであいつに固執するのか理解できなかった。

「...私さ、片親しかいなくて昔から弟のお世話?してたんだよね。その時に井上だけは私のこと認めてくれて抱きしめてくれたというか...さ?もちろん、今はれなも理解してくれることはわかってるけど、はじめての人は特別なんだよね」

「...あのさ、告白とかってしないの?」

 いくら好きだとしても伝えなければ何も始まらないし、何も終わらない。

「...半年前くらいから、もう10回はしたよ?でも、はぐらかされりっていうか」

「なら、それは...」

 拒絶されているのではないか。

 俺はそれを言うのはあまりにも酷過ぎたのでやめた。

「でも、抱きしめてくれるし、好きとも言ってくれるんだよ!?」

 それはただのキープ或いは良いように遊ばれているだけだろう。

 勿論、数日の付き合いとはいえお世話になっているので助けてやりたいが本人がこうも頑なに現実をみようとしないのなら俺にできることはないだろう。

 それに西園寺も西園寺で恋をしているのが好きなのかもしれない。

 そう思い、俺はそれ以上追及することをやめた。



 あれから数時間後の夜々中、俺がもう少しで眠りに落ちてしまうくらいの時。

 いきなりれなの怒号が頭に鳴り響いた。

『西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。西園寺を救いなさい。』

 頭は焼かれるように熱くなり、息や声を出す事さえも困難になる。

「わ、わがった...!わかったから!!!!...はあ。はあ。」

 俺が今にも消えてしまいそうなくらい低くガラついている声でそう答えると徐々に痛みが引いて行った。

『そう。それでいいのよ。もし、救ってくれたらあなたが何者か教えてあげる』

 安心したからか、俺の意識はまるで電化製品のコンセントを抜いたようになくなっていったのだった。

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