ギャルの恋

「今日はありがとねー」

「私こそ~楽しかった!」

 俺と西園寺はお目当て映画を見終え、ファミレスに来ていた。

「いや~こうやって外で友達と久しぶりだな」

 意外だ。

 西園寺のような人は暇があったら外で誰かと遊んでいるんだと思った。

「まあ、弟たちの世話は楽しいからいいんだけどね~」

 西園寺はおそらく子守をしているのだろう。

 なんて思っていたら、まるで身体が内側から焼かれていると錯覚するほどに熱くなった。

「...大丈夫?」

 俺が辛そうにしていたからか、西園寺は心配そうな表情を浮かべ俺を見つめてきた。

 ......やっぱり、西園寺はいいやつだ。

 映画を見ていた時も

「...この映画で楽しめてる?」

 とか

「ほら、キャラメルポップコーンも食べない?れな好きだったよね?」

 とか

「れなが前に好きって言ってた俳優さんめちゃくちゃかっこいいね!流石、れなさん~」

 俺が楽しめるように色々と考えてくれていた。

 正直、ただのギャルと思っていたが相手を常に気遣ってるし、れなの好きな食べ物や俳優も覚えていてれなが西園寺と友達をやっている理由が分かった気がする。

「うん!全然、大丈夫!楽し過ぎて疲れちゃったかも?」

「...何それ可愛すぎない!?流石美少女様だぜ...!」

 まあ、中身はしがない高校生男子なんですけどね。。。

「ってか、そういえばそれ何買ったの?」

 俺は西園寺が大切そうに抱えている紙袋を指さした。

 ファミレスに向かう最中、西園寺が服屋で何やら買っていたのだ。

「...秘密」

 西園寺は頬を赤らめ呟いた。

「えー、気になるなあ?」

「...井上へのプレゼントかな?」

 西園寺は顔を俯かせ呟いた。

 井上とはあのハーレムナルシストなゴミ男の事だろう。

 失礼かもしれないが、井上の周りにいる馬鹿そうな女はともかく西園寺が井上を好きとは意外だ。

「素っ頓狂な顔してどうしたの?...もしかしてれなも狙ってるとか?」

「それはない。本当に神に誓ってもそれだけは絶対に何があっても絶対にないから安心して」

「すごい拒絶!?ほんとに昔かられなはあいつが嫌いだよね」

 というか、なぜあいつが好きなのかの方がわからない。

 ...れなさんは同じような感性の持ち主だとわかって少し安心した。

 井上のことを話している西園寺はどこか幸せ気で、でも少し恥ずかしそうで、乙女な表情を浮かべていた。

 そんな表情を浮かべているとまた身体が熱くなり、声が聞こえてきた。

『許すな。許すな。思い出して。思い出して。思い出して』

 結局、10分くらいはこの声がなり止まないのだった。



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