第21話 部隊、結成しました
翌日は何事もなかったように登校した。
さすがに面と向かって舞うデブなどと言う人はいない。
が、こそこそと話している人が何人かいるようなので、魔法で盗み聞きをする。
お前らの顔、全員覚えたからなっ。
来週からは部隊での訓練が始まる。
その時、舞うデブと言った奴らを全員叩きのめしてくれるっ!
「ねぇ、クレア。ハナビス様との模擬戦の時、私が気を失う直前に何が起きたか教えてくれる?」
「すいません、お姉様。私にもよくわからないんです。急にお姉様の周りが光だして、剣を振り下ろしたハナビスさんが吹き飛んでしまって……」
「そっか。後で機会があれば他の人にも聞いてみるわ。ありがと」
ハナビス様といえば、ハナビス様のバディパートナーはまだ決まっていないらしく、クレアが世話を焼いているみたいだ。
ファーストインプレッションこそ最悪だったものの、私を保健室まで運んだこと、悪意がなさそうなことがわかり、今は普通に接している。
たまに、模擬戦やろうぜなどと言ってくるが、バディ組めたらねとスルーする日々である。
結局、バディパートナーを探す期間でハナビス様のパートナーは決まらなかった。
「弱い奴と面白くない奴とは一緒に戦いたくはねぇ。その点お前は強いし、面白れぇから俺と組もうぜ」
だそうだ。
クレアと組むことになっているので丁重にお断りしたが。
他に強い人と思われる人達はすでにバディを組んでいることもあり、ハナビス様は一人で部隊に参加となる。
強いから心配はしていないけど。
そして、三組のバディによる部隊訓練の期間に入った。
組み合わせは以前から話合っていた通り、私クレア組みとアニー様スイフト様組みで二組。
そして、ハナビス様が加わることになった。
部隊の訓練は一度組むと二日間同じメンバーで訓練を行う。
このメンバーで何回か模擬戦をしたりバディの訓練もしたので、連携の確認は全く問題ない。
続いて他の部隊との模擬戦。
快勝も苦戦もあったけど連戦連勝である。
唯一引き分けとなったのが、アルヴァン殿下率いる部隊だ。
アルヴァン殿下だけでなくジョルジオ様やマリアンヌ様達がおり、試合が長引き教師に止められたために決着はつかなかった。
部隊が五人の事もあることを考えれば上出来だと思うんだけど、ハナビス様がめちゃくちゃ悔しがってた。
ちなみにバディの時にやったようなホーリーシールドを二部隊全員にかけるのはさすがにクレアの負担が多すぎるので、普通に戦闘を行っている。
怪我をしてしまった時に備えて、元々教師側が回復魔法を使える人を数名用意してくれているので、よほどの事がない限り安心だ。
詠唱魔法は手加減とかできないので、使う魔法は最初に決めて相手に知らせるルールだ。
私が使う魔法はウィンドボールのみ。
野球のボールを全力で投げるくらいの威力を持ってる魔法だ。
つまり、そこそこ痛い。
二日間の訓練期間が終わって、スイフト様達とは一旦別れる。
次の部隊はなんとアルヴァン王子からお声がかかった。
どうも彼はクレアを何かと気にしているみたいだ。
主人公だもんね、仕方ないね。
アルヴァン殿下のパートナーはマリアンヌ様だ。
もう一組はモロック様とルビー様のバディだった。
最初にバディ訓練をした私達四人――私、クレア、スイフト様、ハナビス様――を除くAクラスのクラスメイトはちょうど前衛、後衛かつ、男女でうまく組み分けされていた。
くそっ! リア充どもめがっ! あ、ハナビス様はそもそも一人でしたね。
今度スイーツでもご馳走してあげますわ。
この部隊も安定していたけど、前衛が二人なので色々と試すことにした。
模擬戦では私が真ん中に入って自由に動くのが一番良かったみたいだ。
ふふ、前へ後ろへと『舞うデブ』にやられる気分はどうだね、陰口をたたいていた諸君。
アニー様達と組んでいた時も合わせて、舞うデブと言った奴は全員叩きのめしたぞ。
その後も別のバディと部隊を組んで訓練を行ったけど、先に組んだ二つの部隊が凄すぎたのか物足りないね、なんてクレアと話をするくらい特に何もなかった。
「僕の方で申請を出したけど、部隊は再編制されちゃう可能性があるみたいだよ」
訓練期間が終わり、魔物討伐に行く際の部隊を私、クレア、アニー様、スイフト様、ハナビス様で申請を出した。
けれど、部隊が再編制される可能性があるらしい。
最初から強い魔物を討伐しに行くようなことはないと思うけど、危険が伴うことには違いない。
なので、強すぎる部隊や弱すぎる部隊は再編制を行う必要があるようだった。
「そうだね~。ちょっとウチの部隊は強いね。ハナビスとフロストがメインでクレアとスイフトがうまくサポートしてるから、これと言って隙がないんだよね~」
「俺の相手になるのはジョルジョルぐらいだしな。ま、アニーとアルヴァンが結構いい線いってるって感じか?」
王子を呼び捨てはさすがにまずいのでは? それとジョルジオです、ハナビス様。
心の中で突っ込む。
「それはど~も~。あたしも自信あったけど、さすがにAクラスは強いねぇ~。すぐに追い付いてみせるけどねっ」
「アニーさんならきっとできますよっ!」
「そういえば、ハナビス様はわたくし達以外との部隊はどうでした?」
「あぁ。つまんねーから一人で戦うか、サボってた。俺の動きについてこねーんだよな」
それはついてこないのではなく、ついていけないのです。
いろんな意味で。
「ははは。それならハナビスの面倒を僕達が見なきゃいけないから、このメンバーで部隊が組めるかもしれないね」
「ひでぇ言い草だな。まぁそれでお前らと組めるんならそれでもいーけどよ」
最近遠慮がなくなってきたスイフト様である。
ハナビス様も話してみると案外気さくだ。
二人は意外とウマが合うみたい。
「結果を、待つしかありませんわね」
週が明けて、部隊編成の申請結果が通達された。
結果、私達は申請した通りのメンバーに決定したのだった。
他の部隊では教師から編成の提案が行われて、複数の部隊の中から組み直すことになった部隊もあるようだ。
ウチの部隊と互角にやりあったアルヴァン殿下の部隊もそのままだった。
まぁ、殿下の護衛も兼ねてだろう。
「やったね~」
「よかったです」
「お、ラッキーだぜ。お前ら以外だとアルヴァンとジョルジョルぐらいしか一緒に戦える奴いなーしな」
「決起会というわけじゃないけど、ウチの店で食事でもどう? 友情価格にしておくよ?」
「あの……、あのお店ですか? あそこだと私……」
「いや、前に紹介した僕の店に行こう。あそこだとアニーやハナビスがあまり騒げないしね」
アニー様を呼び捨て、だと!?
貴様らいつの間にそんなに関係になったぁっ!!
バディか、バディなのかっ!? やっぱりバディ組んで好感度爆上がり作戦は間違ってなかったのかぁ!?
「あの、アニー様の呼び方……」
「ん~、友達なんだし、学院の中でくらい普通に接してほしいからね~」
「そ、それではわたくしも、アニー、スイフトとお呼びしても……」
「もちろん~」
「僕もフロストって呼ばせてもらうよ」
「アニー、ス、スイフト……っ!」
ス、スイフト……。
なんて甘い響きなのでしょう……。
あぁ、もう名前で呼びあうなんて恋人みたいなものでしょう?
いや、もう恋人でしょう? ふふ、ふふふ。
あれ、だとしたら私達みんなで名前で呼ぶようになったら……五角関係!?
なんてふしだらなのかしら。。。って、んなわけあるかーいっ!
着実に距離が縮まっている。
それだけで今は満足しなさい、私。
あとは部隊の訓練や魔物討伐の時にさりげなく近くにいて、さりげなくボボボディタタッチとととかか? して? アッピール? すれば? いいのよ?
しかしライバル候補がクレアだけじゃなく、アニー様もかぁ。
二人とも手強すぎるんだよなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます