オマツリとインボウ

大・迷宮・祭

「いらっしゃいませェ……おいリセ、なにしてんだよ」

「お客さんとして来ただけだよ、リオンちゃん。…………ふふ……、似合ってるね」


 マクスウェルに呼び出されたボクは、とても素晴らしいものを拝んだ。

 リオン・ゴルドプラウドがディアンドル調でモノトーンの給仕服を着ている!

 硬めの生地の黒を基調として、強調した方がイイ部分は柔らかめの白い布だ。柔らかいところには柔らかいものなのだ。


「おぉ、リセか。どうだ、吾輩のウェイトレス? は。映えているだろう?」

 ベルさんが腰に手を当て、胸を張りデコピース。タイトな紳士服に身を包んでいるが、胸元のボタンは開けている。


「ばえてるばえてる」

「フフン♪」

 ばえてる、ってなに? と聞くこともできない。デザイア曰く、イケてるとかそういう意味らしい。映える、でばえる・ばえている……なんだ。なるほど、映えている。


「リセ、こっちこっち」

 奥の方の席に、マクスウェルと『紫』のギルドメンバーたち。


「おまたせー」

「なんだ、待ち合わせか。また珍しいな」

「うん。オレンジジュースお願いします、可愛子ちゃん」

「やめろ」



◆◆◆



「どうも、『赤の夕暮』リセ・ヴァーミリオンです」

 通路側の角、マクスウェルの隣に座る。

「どうも」「よろしくっす」


「今日リセに来てもらったのは言うまでもない。年に一度の大迷宮祭のためだ」


 大迷宮祭。

 未踏最前線フロンティアで催される奇祭で、年に一度全ダンジョンに発生するオタカラを持ち帰り、その優劣を競うというものだ。


 オタカラはダンジョンの難易度におおよそ比例。ダンジョンごとの時間差は主に『白の岩壁』の調査によって解明されているので、参加ギルドが探索すると表明したダンジョンごとに攻略目安時間なども鑑みて調整してくれている。


 で。

「どうだいリセ。『紫の波間』をスポンサーに指名してくれないか?」

 マクスウェル率いる『紫の波間』は、マジックアイテムの製造・販売を生業とするギルドだ。イイ素材があると聞けばどこでも行くし、イイ物が作れるとなればなんでもする。変態の集まりだ。


「いいの⁉︎」

 大迷宮祭の前に呼び出された時点でちょっと期待していたけど、ホントに声をかけてくれるとは!


 マクスウェルとは仲がいいけど、お互いギルドマスターだ。ギルドの沽券に関わる祭りの相方は選ばなければならない。『紫』ほどの超サポート集団ともなれば尚更だ。……サポーター自ら潜りまくってるけどな!


「あぁ。リセのこの頃の活躍は――」

「『アヴァロン』初の攻略、しかもソロ!」「『覇者の迷宮』改造事件の解決!」「「ダーツ料理!」」

「……と、まぁ。一番勢いのあるギルドにベットする。そういうことだ、リセ」

 めっちゃ褒めるじゃん。怖くなってきたな……。


「で、目標は?」

「リセならどうする?」

「とーぜん、やるなら優勝でしょ」

「イカれてるよ、ド変態!」

 心外な!


「そんなわけで『赤の夕暮』には可能な限り難易度の高いダンジョンに挑戦してもらいたい」


 ……フ。

「フフ……」


「あ、ヤバい。ムク、ラフ。リセはこういう人だから。付き合い長くなるだろうけど、慣れてね」

「フ、ハハッ」

「えぇ……」「我々ここにいなかったことにならん?」


「ハ、ハハハ、ッ…………ハハハハハ!」

「オレンジジュースでェす……お、ハイってんな。なになに。お兄ィさんたち、こっちのカワイコちゃんに面白い話でもした?」

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