四十 おねだり

 町中一は、なんとか、色々な意味で、踏ん張って立っていたが、それも、ほとんど一瞬の事で、すぐに、快楽にやられて、体から力が抜けて行き、後に向かって倒れそうになった。




「チーちゃん。このままだと倒れる。危ないから止めてくれ」




 アヘりながら、絞り出すように、町中一は声を上げる。




「止めない〜? 寝転がって〜?」




 チーちゃんが言い、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁ~の威力が弱まった。町中一は、今だ! と思うと、体を後に引いて、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁ~からの脱出を試みる。




「あれ? あれれ? か、体が動かない?」




 何かしらの不思議な力が働いているようで、町中一は、自身の体を動かす事ができなかった。




「倒れない〜? なんか~? 分かるかも~? きっと~? それは~? くえた~でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁ~ですとらくしょんんん~の~せい~? だから~? そのままで~?」




 そんな事を言うと、チーちゃんが足の振動を加速させる。




「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっへ~ん」




町中一は、快楽の渦に飲み込まれて行って、奇怪な喘ぎ声を上げつつ、気を失ってしまった。




「一しゃん。大丈夫うが? うがは、心配うが。変な声を出して、白目を剥いて動かなくなってうが。それから、もう、二時間位経ってるうが。一しゃん。早く目を覚まして欲しいうが」




 うがちゃんの声が聞こえて来て、町中一は、パッと目を開けると、自分の体勢と、体に触れている物の感触から、自分が、ベッドの上に寝ている事に気が付いた。




「一しゃん? 目が覚めたうが?」




 うがちゃんが言い、掛布団の上から町中一に抱き付いて来る。




「うがちゃん。心配してくれてありがとう。俺は、大丈夫だ」




「良かったうが。動かなくなった時は、どうなるかと思ったうが」




「俺は、気絶していたみたいだな。これは、完全に意識を失っていたようだ。チーちゃんの電気按摩、やばいな。それで、うがちゃんが、俺を、ベッドまで運んでくれたのか?」




「うんうが。うがしか運べなかったうが」




「そっか。そうだよなあ。あのメンバーじゃ無理そうだもんな。でも、大変だったんじゃないか?」




「大変じゃなかったうが。うがはこう見えても力持ちうが」




 うがちゃんが、言って、体を動かすと、町中一のお腹の上に座る。




「はえ? それは、なんで? どうして、座ったの?」




「スライムさん達が、こうやると、一しゃんが喜ぶって言ってたうが」




「あいつら。何を吹き込んでやがるんだ。まったく」




「嫌だったうが?」




 うがちゃんが、泣きそうな顔をする。




「いや、嫌じゃないけど」




 町中一は、思わずそう言ってしまった。




「じゃあ、まだ続きがあるうが」




 うがちゃんが嬉しそうに微笑む。




「続き?」




「うんうが。いきなりだと、何がなんだか分からなくって、一しゃんが、混乱しちゃうから、順番にやるようにって、言ってたうが」




「順番? これ以上、何をするんだ?」




「うがのお股を、一しゃんの口の辺りに当たるようにして、顔の上に座るうが」




「ぬううううううう。あいつら~。幼気な少女になんて事を。許せんっ!!!」




 町中一は言いながら、上半身を勢い良く起こす。




「きゃっ、うが」




 うがちゃんが短い悲鳴を上げて、町中一のお腹の上から転げ落ちた。




「ごめん。思わず起きてしまった」




 町中一は、慌てて頭を下げながら謝る。




「大丈夫うが。このベッドは柔らかいから、全然痛くなかったうが」




「それなら良かった」




 町中一は言ってから、仰向けに倒れてしまっている、うがちゃんに向かって手を伸ばした。




「ありがとううが」




 うがちゃんが、町中一の手を取って起き上がる。




「えっと、それで、皆はどうしてるんだ?」




 まずは説教だな。ななさんは止めなかったのか? ななさんにもきっちり言っておかないと駄目だな。町中一は、そう思ってから、言葉を出した。




「皆は自分の部屋にいるうが」




「自分の部屋?」




 勝手に、部屋を決めたのか? 俺が出した家なのに。ぐぬぬぬぬぬぅ〜。本当にあいつらは〜。町中一は静かに怒りを溜める。




「一しゃんはうがと一緒うが。二人で一部屋うが。うががが。きゃーっ、うが」




 うがちゃんが、言い終えるちょっと前あたりから、とても恥ずかしそうな顔になって、赤面して、それから、顔を微かに俯けた。




「うがちゃんと俺が一緒の部屋? 駄目だ駄目だ。いくらうがちゃんが子供だからって、男女七歳にして席を同じゅうせずという言葉がある位だからな。今から皆と話して来る。部屋はもう一度決め直しだ」




 町中一は鼻息を荒くして、ベッドから下りようとする。




「うががが。うがと一緒は、嫌、うが?」




 うがちゃんが、酷く落ち込んだような顔をして、泣きそうな声で言った。




「違う。うがちゃんがどうこうっていう事じゃない。男女が同じ部屋っていう事が問題なんだ」




 町中一は体の動きを止めて、うがちゃんに言葉を返す。




「じゃあ、一しゃんは、うがとは一緒にいられないうが? ずっと、そう、うが?」




 うがちゃんの目から、涙が零れ落ち、頬に、濡れて、キラキラと輝く、筋が一つできた。




「参ったな。うがちゃん。分かってくれないかな? 俺は君を泣かしたくって、こんな事を言っているんじゃないんだ。うがちゃんの事を思ってだな」




「うがの事を思うのなら、うがの言う通りにして欲しい、うが。うがががわ~んうが~」




 うがちゃんが声を上げて泣き始める。




「え~? ちょっと、おいおい。これ、どうすれば良いんだよ?」




 町中一は、もう一度ベッドから下りようとした。




「行っちゃ嫌うが~。うがと一緒にいて欲しいうが~」




 うがちゃんが、泣きながら、片方の手で、町中一の服の端っこを、キュッと掴む。




「いや、でも、なあ」




「じゃあ~、行っても良いうが~。でも~、その前に~、お話をしていって欲しいうが~。前に話してくれたお話の続きが聞きたいうが~。あれから~、ずっと~、聞きたいって思ってたうが~。うがががうわはぁ~んうが~ん」




「お話? いや、あの、それは、なあ」




 町中一は、酷く困り果てて、途方に暮れた。

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