三十三 じゃあ~? やっぱり~? チーちゃんと~? 一しゃんは~? でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?

 チーちゃん達から見えないようにと、人の形と化しているスライムと連れ立って、森の木々の中に入ると、人の形と化しているスライムが町中一に近付き、その体を飲み込み覆い尽くす。




「ふおあ? ふおあおおおあおお?」




 ドロドロとしている、温ぬるい温度のゲル状の何かに沈んで行くような、気持ち良いような、一歩間違えると不快に思えるような、なんとも言えない感覚が町中一を襲い、町中一は奇声を上げた。




「お母さん。入って来る。人間が、触った事のない、不思議な感触が、入って来るよぉぉぉ」




 スラ恵が、咽び泣くような、声で言う。




「予想以上ね。お母さん、目がチカチカする。本当に、これははあぁぁぁん」




 お母さんスライムが喘ぐ。




「あんたん。大丈夫なのぉん? 息はできるのぉん」




 いつの間に傍に来ていたのか、ななさんが、町中一のスライムに覆われている顔に、近付いて来て言った。




「息はできるぞ。それよりも、これは、もう、なんというか」




 町中一は、体を覆っているスライムから伝わって来る、全身を得も言われぬ快楽の世界へと誘う刺激に、意識を飛ばされそうになりながら、言葉を出した。




「あんたん。もう、目付きが、ヤバいわぁん。あんたん、もう完全にイっちゃてる顔をしてるわぁん」




「ななさん。すまない。俺は、もう駄目だ。このまま、うおぉぉぉぉ~ん」




 町中一は、快楽に負けて、喘ぎ声を上げてしまう。




「あんたん。もう見てられないわぁん。もう、こんなの、どうすれば良いのよぉん」




 ななさんが、至極羨ましそうな声で叫んだ。




「スラ恵。お母さん、もう、イキそう」




「お母さん。スラ恵も、もう。らめぇぇぇぇぇん」




「お母さん。スラ恵さん。俺もっす。俺も、もう、は、は、あは、はあ、はてそうですぅぅぅぅ」




「良いわ。人間。一緒に」




「人間とお母さんと一緒なんてぇぇぇぇぇ」




 お母さんスライムと、スラ恵と、町中一の声が、高まって行く一人と二匹の情欲を、周囲に、これでもかと、アピールするかのように、響き渡った。




「何々~? どうしたの~?」




「チ、チッチッチッチ、チーちゃん? なんで、ここに?」




 ふわっと、突然目の前に姿を現したチーちゃんを見て、町中一は、目を飛び出させんばかりに、驚いた。




「浮気~? チーちゃん~? 仲間外れ~?」




 チーちゃんが言って、何やら見た事のない、チーちゃんらしからぬ、切なそうな顔をする。




「チーちゃん。取り敢えず、浮気じゃない。あ~。あっは~ん」




 言葉の途中で、快楽の波が町中一を襲い、町中一は、悶えてしまう。




「むぅぅぅん~? 気持ちい~?」




 チーちゃんが、怒っているかのように、頬をぷっくりと膨らませた。




「チーちゃん。うがちゃんは? うがちゃんは、どうしているんだ?」




 チーちゃんはもうしょうがないが、うがちゃんだけには、こんな姿は見せられない。と思った、町中一は、快楽のうねりに、理性を吹き飛ばされそうになりながらも、なんとかそれに耐えて、言葉を出す。




「うがちゃん~? こっちにやっぱり来ないようにするって~? 一しゃんと~? 約束した~?」


 


 チーちゃんの言葉を聞いた町中一は、うがちゃんの思いを知り、心を動かされ、このままではいけないと思ったが、それは、ほんの一瞬の事で、あっという間に、心は快楽に、再び飲み込まれてしまい、むふふ~ん。などと喘いでしまうのだった。




「気持ちい〜?」




 チーちゃんが、つまらなそうな顔をすると、ちぇーなどと言いながら、空中にいて、足元には何もないのに、足元にある何かを蹴るような、仕草をし始めた。




「チーちゃん。これはうぉーん。ちがあへひーん。違うんだ。これれ、は、た、あひーん。戦いなんだ。うおおーん。だがら、しししぎひぃぃ。仕方がないんだ」




「気持ちい〜? チーちゃんよりも〜?」




 チーちゃんが、これまた今までに見た事もないような、荒んだ表情を顔に浮かべる。




「チッチッチッチッ、うっひーん。チーちゃん。うがうが、うがちゃんの所へ、はやはやはやいや〜ん。早く戻るんだ。うがちゃん一人だと心配なんだ。頼む。また、キタァーァァァン」




 町中一は、快楽に耐えながら、必死に言葉を絞り出した、つもりだったが、傍から見ていると、まったく耐えられてはいなかった。




「チーちゃん怒った〜?」




 チーちゃんが、顔を俯けるとそう言って、町中一とスライムの方に、突っ込むようにして飛んで来る。




「あらぁん。これは、あたくしも行かなきゃだわぁん」




 今まで黙って、成り行きを見守っていたななさんが、嬉しそうに言って、チーちゃん同様に、町中一とスライムの方に向かって来た。




「邪魔~?」




 チーちゃんが、無邪気な声で言って、ズベシっとななさんを蹴る。




「あぁぁん。また、こんなぁん。でも、こういう扱いも、ちょっと、癖になりそうぉん」




 ななさんが、言いながら、墜落して行く。




「チチチッチ、チーちゃん。こっちに来ちゃ駄目だっは~ん。ちーちゃんまでぇうへ~ん。巻き込まれたらっおおおおん。だから、あっへ~ん。逃げてぇぇぇぇん」




 町中一は、もう、快楽に取り込まれ過ぎて、色々な意味でボロボロになっていた。




「駄目~? じゃあ~? やっぱり~? チーちゃんと~? 一しゃんは~? でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」




 チーちゃんが片方の足を、町中一の股間に当てると、その足がキラキラリリーンと虹色に輝いた。

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