三十 最強のでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?
時折、ピクッピクッと痙攣するような動きをしつつ、溶けかけて、半分液状化しているスライム達と、そんなスライム達の上に、勝利の余韻に浸っているのか、満面の笑みを浮かべて、ホバリングしているチーちゃんの傍に、町中一とななさんは近付いた。
「溶けてるぞ」
「溶けてるわねぇん」
「死んでない~?」
「そりゃこっちが聞きたい」
死んでいたら、困るけど、このままにして、放っておいた方が、良いのかも知れない。スライム達には悪いけど、スライム達が元に戻って、話をして、その所為で、また、うがちゃんが傷付くかも知れないからな。……。そもそも、俺が、魔法で話をなんて言い出さなければ、うがちゃんを傷付ける事なんてなかったのか。いや。でも、コミニュケーションが取れれば、殺す殺さないとかって事にはならないかも知れないんだもんな。町中一はスライムを見つめてそう思う。
「あらぁん。大きい方の形がぁん」
ななさんが、何かに気が付いたのかそう言った。
「また~? でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」
大きい方のスライムの形が、元に戻り出したのを見て、チーちゃんが嬉しそうに声を上げる。
「チーちゃん。取り敢えず、それは止めておこうか」
町中一は、言ってから、まったくチーちゃんはでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁ~とか言っていてノリノリだな。なんだか、あれやこれやと考え込んじゃっているのが馬鹿らしくなって来た。それにしても、あれだ。チーちゃんにでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁを教えちゃって良かったのかな。ななさんて、さっき、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁで、魔物を倒せたらとかなんとか言っていたよな。うん? それって、魔法でどうにかできるんじゃないか? でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁを最強にするようにって、魔法をかけたら、これから、魔物、いや、人間相手でも、戦わなくって、殺さなくって、済むんじゃないか? あ。でも、また、あれかな? 誰かが傷付くか? って。また、あれやこれやと。昔っから、グジグジと。全く俺って奴は。今回の人生は、前とは変えないとな。と思った。
「あんたん。どうするのぉん? 小さい方も、形が元に戻り始めたわぁん。魔法をかけるなら、早くした方が良いと思うわぁん」
「ああ。そうだな」
町中一は、うがちゃんのいる方に顔を向けた。
「チーちゃん。うがちゃんの方に行っていてくれ。一人じゃかわいそうだし、また魔物が出て来たら困るからな。でも、その前に」
町中一はそこで一度言葉を切ってから、チーちゃんに向かって手招きをする。
「何々~?」
チーちゃんが近寄って来て、いや、近寄り過ぎて来て、町中一の額の辺りに、体が町中一と同じサイズだったら、さぞ、迫力があったであろう、大きな胸をグイっと押し付けた。
「こ、こら。止めなさい」
「気持ちくない~?」
「気持ち良い〜。もうずっと、このままが良い~。ってぇ。ちがーう。そういう事じゃなくって。一度離れて」
「え~? 分かった~?」
チーちゃんが額から離れて、町中一の顔の少し前で、ホバリングする。
「では。チーちゃんよ。スライム二匹討伐の報酬として、君のでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁを最強にする魔法をかけてあげよう。君は、これから、最強のでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ使いとして、俺達に何かあった時は、相手に容赦なくでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁするように」
「でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~? 最強~?」
チーちゃんが興奮しているのか、縦に横にグルングルンと、激しい勢いで空中に円を描き始める。
「なんか、凄いわねぇん」
「うん。ちょっと、変な事言っちゃったかも」
「でも良いアイディアかも知れないわぁん。問題があったら、魔法で魔法を解除すれば良いんだしぃん」
「ななさんが言い出した事だけどな」
ななさんに言葉を返してから、女神様。大大大大大好きです! のフレーズだけを、至極小声で言いつつ、町中一は、チーちゃんに魔法をかけたが、チーちゃんの体にはなんの変化も起こらない。
「チーちゃん。どうだ? なんか、変わったか?」
「ん~? 変わらない~?」
「あんたん。自分の体で試してみたらぁん?」
「え? 俺?」
町中一は、あのフレーズを小声で言ったからかな。いや、でもな。もう一度言うのもなんだしな。……。最強のでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁか。どんな感じなんだろう。気持ち良いのかな? などと思ってしまい、そのままに何も言わずに考え込む。
「喰らってみる~?」
チーちゃんが足をクイクイっと誘うように動かす。
「止めておこう。チーちゃん。うがちゃんをよろしくな」
ふう~。なんとか誘惑に打ち勝ったぜ。ここでアヘアへしちゃってもな。どっか安全な所にでも行ったら、様子を見て、頼んでみようかな。ぐへへへ。と思いながら、町中一は言葉を返した。
「分かった~? 何かあったら~? でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~?」
チーちゃんがうがちゃんのいる方に飛んで行った。
「おう。よろしくな。妖精騎士でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~チーちゃん」
「何その名前~? 格好良い~?」
チーちゃんがとても嬉しそうに言い、また、グルングルンと縦に横にと回りながら、うがちゃんの方に向かって行く。
「あれで良く目が回らないわねぇん」
「本当にな。俺だったら即嘔吐だな」
「即嘔吐ってぇん。汚いわねぇん。それで、やるのぉん?」
ななさんが、スライム達の方に、ラケットの打面を向けた。
「ああ。何を言い出す分からないけど、もしもちゃんと対話ができて、戦わないようにできるんだったら、これからにも繋がる。戦いも、殺し合いも、面倒臭いからな」
「面倒臭いからな。なんて、格好付け過ぎよぉん。ただ、嫌なだけでしょぉん」
「格好付け過ぎだったかな。前世でもそういうとこあったからな。数少ない友達にも、それ、言われてたしな。あんまり良くないかな?」
「何よぉん。そんな事気にしないくって良いわぁん。そんな調子じゃこれから何も言えなくなるわぁん」
「そんな事言われてもな」
「あんたん。スライム。余計な事やってると、また襲われるわよぉん」
「そうだった。じゃあ、早速。女神様。大大大大大好きです! そこにいるスライム達よ。俺達と話ができるようになれ」
例の如く、例のフレーズを小声で言った、町中一と、ななさんは、先程のチーちゃんと同じように、魔法をかける前と、かけ終えた今とで、なんの変化も見られない、スライム達の姿を、じいーっと凝視した。
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