五 ポンコツ? ポンコツーポンコツー
聞きたい事。聞きたい事。俺の聞きたい事は、どうすれば、こんなにも立派に育つのか。これを触ったら、どんな感触がするのか。そもそも、触らせてくれるのか。と。そんな所かな。町中一は、そんな事を思うと、口を開こうとしたが、いや、待てよ。浮気問題の事があった。女神様の知り合いみたいだしなあ。それに、あんまりエロオヤジ丸出しっていうのもなあ。ここはちょっと、様子を見て、チャンスがありそうなら乳を揉むっていう感じで行くとするか。と、オヤジ独特のあわよくばエロス的な思考をする。
「そうですな。まずは、この世界は、どういう世界なんですかな?」
町中一は、どうよ。真面目な質問だろう? 本当はそんな事はどうでも良いんだけどな。とドヤ顔をする。
「この世界はどういう世界か? それはなかなかに難しい質問」
相手の下乳、いやさ、人物、いやさ、妖精女王が、何かを考えているような顔をした。
「君は確か、前世の記憶を持っていると聞いているわ。その記憶の中にある世界がどんな世界なのかを聞かせてくれない? それと比較した方が、どんな世界なのかを話しやすいと思うの」
町中一は、令和の日本の話をちょちょちょっと話した。
「うん。全然分からない」
「ですよねー」
町中一は、あえて名前は出さないが、ラノベやアニメなどで異世界転生と言えば、こんなよね。というような超メジャーな世界観の話をしてみる。
「ふむふむ。へえー。そんな物語がねぇ。でも、そうそう。それね。そういう感じかな。剣と魔法、それそれ。中世ってのは分からないかな。後、お城とか貴族とか奴隷とかね。魔王と魔物と勇者も。いいんじゃない? そういう世界って事で」
「何でも知っているん、ですよね?」
町中一は、なんか適当な感じだが、大丈夫なのか? と思わず疑いの目を向けてしまう。
「そんな事言った?」
妖精女王が、顔を横に向けると口笛を吹こうとして吹けずに、間の抜けた音を出し始める。
「凄いお約束だ」
町中一は、不覚にもちょっと感動してしまった。
「で、次は何を聞きたい?」
妖精女王がとっとと話題を変えにかかる。さっきの質問だってちゃんと答えていないのに。どうしてそんな事を言うんだろう。聞かれたらまた困ると思うんだけどなあ。と町中一は小首を捻る。
「ちゃんと答えられるんですか?」
「答えられる。さっきだってちゃんと答えてたでしょ?」
「いや。全然ちゃんとしてなかったけど?」
「そんな事ないもん。ちゃんとしてたもん」
妖精女王が不満そうに唇を尖らせる。
なんだろう。意外と、子供っぽい人なのかな? 何か質問をしてあげないと、泣いちゃったりしてな。それはそれでも面白そうだし、色々な仕草とか表情とかが見られて楽しそうかも。
おっといけない。今は、様子を見ようと思っていたんだった。変な事は止めておこう。それにしても、質問か。質問なあ。どうしよう? 町中一は、質問のネタになりそうな物を探して、辺りを見回してから、自分の体に目を向けた。
そうだ。俺自身の事でも聞いて見るか。どんな能力が身に付いているのかとか、後は、えっと、ええーっと、あれだ。あれ。いかん。思い付いているのに言葉が出て来ない。若返っているんじゃないのか? 体と精神の年齢が、違うとこんなもんなのか? とと。言葉が分かったぞ。容姿だ容姿。俺が今どんな容姿をしているか、とかだな。町中一は、頭の中で考えた内容を少々整理してから、言葉にして聞いてみた。
「それはまた難しい。君は、何? 嫌がらせがしたいの?」
女王様がちょっと泣きそうな顔になる。
ぐへへっ。良い顔で泣くじゃ~ね~かっ。これは嗜虐心をそそりますぞ。町中一は思わず興奮してしまう。
「女王様はポンコツー」
一人の妖精が、フワフワと飛んで、町中一の傍に来ると、そんな事を言った。
町中一は、いきなりポンコツて、自分とこの女王なんだろ。そんな事を言ったりして大丈夫なのか? 不敬罪で成敗なんて事になったりしないよな。と少々不安になりつつ、傍に来た妖精の方に目を向けた。
「ん? あれ? あれれ?」
この下乳、何やら既視感がある。この下乳、いやさ、この妖精、どこかで見たような。んんんん? ああ。そうだ。最初に爆発させた子だろ。うーん? 何がどうなっているんだ? あ、というか、俺、今、血だらけなんじゃね? なんか、拭く物ってあるか? オーケーオーケー。服があった。これで拭いちゃうかな。いや、着替えがあるか分からないしな。というか、服も血だらけなんじゃね? 町中一は、傍に来た不遜な態度の妖精の、下乳をじっと見つめつつそんな事を思った。
「ポンコツ言うなー。チーちゃん酷い」
「チーちゃん?」
へえー。名前なんてあるんだ。ていうか、まあ、あるわなあ。などと思いながら、町中一は言葉を漏らす。
「名前ー? チーちゃん?」
不遜な態度の妖精が、自分の顔を自身の指で指す。
「なあ、チーちゃん。さあ、さっき、爆発した?」
町中一は、そうだと言ってくれ。それで俺は救われる。というか、もう、そうであってくれなきゃ困る。何事もなかったかのように復活しててくれ。と、急に自分にとっての都合の良い展開が来るようにと、強く願う。
「そだよー。復活?」
「体とか、他にも、何でもかんでもその他諸々も復活してるのか? 大丈夫なのか?」
町中一は本当の本当に大丈夫なんだよな? と念を押して行く。
「大丈夫だよー。だから、もう一回やっても良いよ?」
チーちゃんが近付いて来ると、下乳を町中一の鼻に押し付けて来る。
「ちょ、ちょ、ちょっとぉぉ。お、おま、や、やめ、やめろよぉぉぉ」
町中一はだらしなくニヤニヤしながら、至極わざとらしく、というか、もうわざとなのがバレバレなのだが、それでも嫌がっている振りをし続ける。
「ちょっと。君、この子に変な事したでしょ? したよね?」
「いやいやいやいや。俺は何もしてないぞ。なあ、ちーちゃん」
「うんー? してないー?」
チーちゃんが下乳を町中一の顔から離すと、妖精女王の方に体の正面を向けて、首をかわいく傾げた。
「そんな事より、俺の質問だ。俺の能力と容姿について。早く教えてくれ」
町中一は、自分の行った行為、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁぁがバレたら困ると思い、いや待てよ。こういう秘め事がバレそうになるっていうのもドキドキして良いんだよな。などと更に思ったが、二度とやるなと言われたら、もうショックのあまりに、生きて行けなそうなので、話題の転換を試みる事にした。
「教えろポンコツー?」
チーちゃんが言って、きゃっきゃっと笑う。
「ポンコツポンコツって。女王がポンコツなら、この森の皆だってポンコツって事なんだからね。やーい。お前こそ、ポンコツーポンコツー」
妖精女王がむきになってやり返し始めた。
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