第43話 パーティーメンバーの勧誘

 しばらく、走っていると。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!た、助けてくれ!!」


「悲鳴!?」


 探索者シーカーの叫び声がはっきりと聞こえた。


 俺は、さらに加速すると、そこには。


 カカル3匹が探索者シーカー4人をかこっていた。しかも、その中には、金髪の女の子もいた。


 (もしかして、『巌窟』パーティー!?)


 そう、襲われていたのは、最近名を挙げている『巌窟』パーティーだった。


 カカルがかこっている探索者シーカーは、足に力が入らないのか、尻もちをついて、動かない。


 あのままじゃあ、死んでしまう。


 俺は、すかさず、漆黒の剣を引き抜き、冷静に構える。


 すると、漆黒の剣に青白い光が奔流し、そのか輝きが閃光する。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 地面を一気に蹴り上げ、加速してカカルに急接近する。その音に便乗びんじょうするように、カカル3匹はこちらを向く。


 が、その瞬間、カカル2匹の頭を切り裂いたが、とらえきれなかった最後の一匹を逃し再び、剣を振った。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 しかし、そこでカカルは足で攻撃を受け止めた。


「う、うそ……」


 そのまま剣ごと、地面に足で押さえつけられ、隙あらばとカカルは俺をとらえて攻撃を仕掛ける。


 頭突きだ。


 俺は瞬時に剣を手放し、後方へと下がり、すかさず、カカルの頭を捉えて、回し蹴りを決める。


「ふぅ~~~」


 こういう時のために、体術を嗜んでおいてよかった。


 回し蹴りはカカルの頭に直撃し、そのままその場で倒れ伏した。


 脳震盪のうしんとうによる痙攣、魔物であろうと、脳に多大なる衝撃を受ければ、ただでは済まない。


「危なかった……って」


 後ろを振り返れば、襲われていた探索者シーカー達の姿はなかった。


「俺をおとりにして逃げやがった」


 俺は、カカルの魔石を回収して、ダンジョンの出入り口へと向かう。


「あの女の子……大丈夫だろうか」


 『巌窟』パーティーは最近名を挙げている。だけど、俺から見た印象は最悪なものだ。


 (てか、そもそも『巌窟』パーティーってあんなに荒々しかったっけ?)


 俺がまだ、探索者シーカーになって数日の時は、もっとほんわかとした雰囲気だったような気がする。


 それに、メンバーだってもっと少なかった。そうなんというか、ごく普通の仲良し組で組んだパーティーって感じで、そこらへんのパーティーと大差なかったはずだ。


 なのに今は、メンバーが増え、騒動が多発している。


「菜々花さんなら何か知ってるのかな」


 そうこう考えているうちに、ダンジョンの出入り口に到着した俺は、そのまま『シリア商店』寄ろうと、探索者協会シーカーきょうかいを通って帰ろうとしたとき。


「くそぉぉ!!お前のせいではじをかいたじゃねぇか!!」


「ご、ごめんなさい」


「これって……」


 怒鳴り声が聞こえたほうへと顔を向けると、俺が助けた『巌窟』パーティーのメンバーが金髪の女の子相手に向かって拳を挙げていた。


「ちっ、この落とし前はこのパーティーから脱退で許してやるよ」


「ふぇ?」


「だから、パーティーを脱退したら、許してやるって言ってんだよ!!」


「そ、そんな!?」


「おい、お前らいくぞ!!」


「「「はい!!」」」


 そう言って、金髪の女の子をおいて、去っていこうとする、彼らに女の子は男の足をつかむ。


「どうか、脱退だけは、お金がお金が必要なんです!!だから、脱退だけは!!」


「うるせぇ、もう決まったことだ。それに汚い手で俺の足をつかむな!!!」


「きゃぁ!!」


 その男は、もう片方の足で金髪の女の子の頭を蹴り飛ばした。


「…………いくぞ」


「うぅぅ……」


 金髪の女の子はその場で静かに泣いた。瞳に涙を流しながらも、手で何度も拭っている。


 (これは、ほっておけないよな)


 俺はゆっくりと彼女のもとへ向かい、そして目の前に来ると。


 俺の陰が彼女と重なり、暗くなったことに気づいた彼女はふと上を見上げる。


「ふぇ?」


 そして、俺は手を差し伸べる。


「大丈夫ですか?」


「あ、あ……はい」


 戸惑いながらも、金髪の女の子は俺の手を掴んだ。


「立てます?」


「な、なんとか……」


 足が震えている。俺は、握った手で支えながら、立てるように手伝い、ゆっくりと近くにある椅子に運ぶ。


 腰が抜けているのか、全身に力が入っていない。そのせいか、金髪の女の子は全体的に身が俺のもとに寄りかかる。


 (ここまで、女の子と密着するとさすがに、少し……)


 俺は、金髪の女の子を椅子に座らせると、その向かい側の席に俺も座る。


 さて、どうしたものか。


 沈黙の時間が続いた。金髪の女の子はずっと、俯いたままの状態だし、話しかけた俺も正直、後先考えずに行動してしまったがために、何を話せばいいかわからない。


「あ、あの~~名前を聞いてもいいかな?」


 まずは、お互いを知るところから。そのためにもまずは、名前を知らないといけない。


「え、え~と明日菜あすな天宮明日菜あまみやあすな……です」


「そうか、俺の名前は柊日向、日向って呼んでほしい」


「あ、はい。日向さん」


「さん付けはいらないよ」


「日向くん?」


「まぁ、それでいいよ」


 さてと、ここからどうする。いや、やるべきことは決まっている。


「それで、明日菜さん。俺は君に一つ提案したいことがあるんだ」


「て、提案ですか?」


 疑いの瞳、それも仕方がないことだ。だって、明らかにはたから見たら怪しいもん。でも、俺は真剣だ。


「明日菜、俺のパーティーメンバーになってくれないか?」


「え?」


 俺の一言に明日菜さんは目を見開いた。

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