第40話 根源スキル・桜木家本土
暗闇の中、松明のみがその場を照らす。
そんな中で、玉座に座る一人の影。
『ついに、覚醒させたか』
「あの真紅のオーラ、あれは、桜木京香が纏うオーラを同一ものだった。まさか、ギルドマスター!?」
『そう、あれは、桜木京香と同性質を持つスキルだ』
そうギルドマスターは断言した。
桜木京香のスキルは、ギルドマスターおよび、この私しか詳細を知らない。
「つまり、柊日向がもつスキルは根源スキルか」
根源スキル、それは始まりのスキル。唯一概念に干渉したスキルのこと。
桜木京香が持つ根源スキル『
その強化に限界はなく、発動時間が長ければ長いほど、強化されていく。
このスキルの真に恐ろしいのは、たとえ、槍などを使ったことがない初心者の一撃も強敵を倒しうる一撃になるということだ。
すなわち、すべての攻撃が致命傷になりうる。
彼女にとって、あらゆるものが武器になり、防御力も固く傷つかない。
しかし、弱点も存在する。このスキルは、発動時間が長引くにつれて冷静さを失い、狂暴化する。
長くても、1時間。それ以上の使用は、下手をすれば、自分自身すら傷つけることになるかもしれない。
「それじゃあ、ギルドマスターはすでに柊日向がもつ根源スキルを知っているのかい?」
『ああ、あれは恐らく、
「
『理解したか?』
「ええ、理解したよ。なるほど、道理で成長スピードに加え、傷が癒えるのが早いわけだ」
スキル、
物には必ず加速があり、人もまた加速している。そしてこの
たとえば、成長スピード。人とは個性があり、成長スピードが異なり、遅いものから早いものまで人それぞれだ。
しかし、このスキルはそれを破壊する。一度発動すれば、成長スピードに加速が付与され、成長スピードが爆速する。それは徐々に早くなり、いずれ最大加速に至る。
これはあくまで例であり、腕力、視力、聴覚、動体視力、跳躍なども含まれている。
唯一の弱点は、このスキルはあくまで成長の限界値以上は伸びないといことだ。
探索者能力値一覧にある【攻撃力】はいくら伸ばそうと9999が限界値だ。つまり、その数値以上は伸びない。あくまで、自分の限界値までしか伸びないのだ。
その代わりに、成長スピードは異常なまでに早くなる。
強力がゆえに、弱点も存在するが、間違いなく、規格外のスキルと言えるだろう。
「これで3人目となると……」
『ついに、時代が動く。ダンジョンという人々の帳がついに、真の恐怖をもたらす時が……』
ダンジョンマスターは高らかに笑う。まるで、すべてが想定通りだったかのように。
桜木家の本土。
「どうやら、柊日向様が【脅威種】ジャイアントコボルトを討伐したそうです」
静かに京香の隣で告げる朱里に、京香は笑う。
「それはそうですよ!勝ってもらわないと!生き残ってもらわないと!です!!」
まるで、確信していたかのような、口ぶり。しかし、突如、声色を変えて、朱里に説いた。
「ねぇ、朱里が仕掛けたんでしょ?」
京香の瞳が朱里の瞳を覗き込む。濁った青い色の瞳、まるですべてを見透かしているかのようだ。
どうやら、京香様にはすべて見透かされているようだ。
「はい、そうです」
「ギルドマスターの命令?」
「はい」
「ふぅ~~つまり、私に監視を頼む前から、朱里ちゃんとギルドマスターは繋がっていたってわけですね」
「…………」
何も言えなかった。
今回のダンジョンの異変、【脅威種】ジャイアントコボルトの出現は偶然ではない。すべて、ダンジョンマスターの命令のもと、私が行ったことだ。
まず、日向様が、ジャイアントコボルトからの窮地から逃げ切れた後、私は、生き残ったジャイアントコボルトに接触した。
理由は簡単。日向様の好敵手にするためだ。
ダンジョンマスターは言った。
『彼を強くするためには、より強大な敵が必要だ。だから、わかるな?朱里……』
私は、ジャイアントコボルトを鍛えた。
魔物だって、経験を積めば成長する。だから、死ぬ寸前まで追い込んで何度も、鍛えてあげた。
そして、【脅威種】として進化を遂げ、今回の事件を起こした。
「まぁ、ダンジョンマスターには逆らえないのは知っているですし、今回は許すです」
京香様はすぐに機嫌を直すように笑った。
「ですが、次にまた、ダンジョンマスターから命令があれば、すぐに私に知らせなさい…………いいね?」
「は、はい……」
京香様の瞳は一切の光を通さなかった。ただ恐怖で心が侵食される。
「朱里ちゃん、そろそろ行くですよ」
「はい」
私はいつも、過去の追憶に蝕まれている。
それから、1週間。柊日向のレベルアップしたニュースが流れた。
『レベルアップニュース!なんと!!2ヶ月でレベル・2アップした
そのニュースが流れてから、俺は一役有名人になってしまった。
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これにて1章完結!!
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