第39話 戦いの跡・探索者能力値の更新
その後、俺は『天狼』パーティーによって、ダンジョンの出入り口まで運ばれ、そのままダンジョン病院に搬送された。
状態はかなりひどく、緊急手術を受けて、何とか生き延びた。
それから、2週間後。
「うまいな、リンゴ」
「吞気に病室でリンゴ食べて、体は大丈夫なの?」
「ああ、この通り!!痛みはもうないよ」
「そう、ならいいんだけど、心配させないでよね」
入院して2週間、俺は、吞気にリンゴを食べていた。
定期的に愛華がお見舞いに来てくれてはいあるが。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。あ~~んして」
「はいはい」
(俺、一応入院している身なのに、なんで愛華にリンゴを食べさせているんだろう)
ダンジョン病院に運ばれた俺は、今も完全に傷が癒えているわけではない。
ただ、先生に驚かれたのは、異常なまでの回復速度だった。
運ばれてきたときは重傷だったのに、手術を終えて、1週間もすれば、深かった傷はほとんど癒えていたのだ。
おかげで、この通り、笑って過ごせるわけで、愛華にも小さい子供のように、あ~んをしてあげられているわけだが。
「そういえば、お兄ちゃんってもうすぐ退院できるんでしょ?」
「まぁ、けどまだ右腕のリハビリがあるし、もう少し入院するよ」
「え~~~~」
唯一、完全に癒えなかったのは、右腕だった。
見た目は完全に治っているのだが、少しも動かせないのだ。
どうやら、あの戦いで酷使し続けたせいか、筋肉繊維と神経に異常をきたしたとかで、リハビリを余儀なくされた。
これもまた、無理な戦い方をした代償だろう。
「それよりも、愛華はちゃんと勉強してるのか?まさか、俺が入院している間に好き勝手お菓子とか食べてるんじゃないんだろうな?」
「ギクッ!な、なんのことかな~~わからないな~~~~」
この様子だと、勉強はしてなさそうだな。
「はぁ~~~~~」
「ちょっと、なんでため息つくの!?」
「いや、別に……」
「え、気になるんだけど~~~」
なんやかんやで、平和でなによりだ。
それから、3週間が経過し、無事に右腕も完治して退院した。
そして、俺がまず訪れたのは。
「菜々花さ~~~~ん!!」
「あ!?日向くん!!」
俺を見つめると、即座に飛び出してくる菜々花さん。
「退院したんだ!!」
「はい。今日、退院しました」
「そうなんだ。よかった~~~今度こそ、本当に、死んだかと思ったよ~~~」
「いや~~本当に、俺も死ぬかと」
「それで、何しに来たの?今日、退院ってことは、久しぶりに家でゆっくりしたいんじゃない?」
「あ、実は
「なるほどね、ちょっと待っててね」
そう言って、菜々花さんは窓口の方へと走っていった。
【脅威種】ジャイアントコボルトを倒した功績はすべて柊日向に与えられた。
理由はその場に居合わせた『天狼』パーティーが証言したとか、でその魔石を手に入れたわけだが、手術費用から入院費用を合わせて、5000万…………。
最初にそれを見たときは、
運良くも、【脅威種】ジャイアントコボルトの魔石を4000万で買うと言われたので、即売って、他の品も売って、何とか5000万を払ったわけだ。
おかげで、貯金は減り、貧乏生活へ元通り。学費は残してあるから、そこは安心だけど、生活するためにも、またお金を稼がなくちゃいけない。
本当に、世の中、お金社会だ。
「日向くん!
「じゃあ、お願いします」
俺は、その後、
「いや~~やっぱり、わが家が落ち着くな」
ボロボロなソファーに身を任せ、寝転がっていると。
「お兄ちゃん、だらしないよ」
愛華がパジャマ姿で俺に話しかけてくる。
「いいじゃないか。どうせ、あと三日までは学校休みだし」
「いいな~~私も学校休みたい」
「だめだぞ。愛華、せめて義務教育は終えてもらわないと」
「わかってるよ。そんなこと……」
そんな会話をして、愛華は自分の部屋に戻っていった。
「平和だな~~~」
久しぶりにゆっくりしている気がする。
ダンジョン5層でのジャイアントコボルトとの激戦。
正直、後半あたりはうる覚えだけど、由紀さんがいたことはハッキリと覚えている。
あとは、あの刀身が真っ黒な剣だ。
退院した時に、所持品などを受け取るわけなんだが、見覚えがないものが一つあった。
それが、真っ黒な剣だ。
確認したところ、
「まぁ、ちょうどいいか」
ジャイアントコボルトとの戦いで剣を失ってしまったから、正直、タダでもらえるなら、別に気にしない。
(タダは正義!タダは絶対!!)
「俺は悪くないよな。さてと、そろそろ見ますか、俺の
菜々花さんから渡された封筒を取り出し中身を確認する。
すると。
『探索者能力値』
【柊日向】
Lv.1 → Lv.2
【スキル】 加速昇華:EX
【攻撃力】 89→323
【装甲】 50→267
【魔法】 なし
【魔力量】 0→10
【アビリティ】 渇望:E→渇望:D
絶句した。
【攻撃力】と【魔力量】の上昇に加えて、【アビリテ】のランクアップ、さらに。
「———レベルアップしている」
レベル・2、それが意味するのは、
何より、レベルアップするとは思ってもみなかった俺は、ふと瞳に涙を流す。
「は……なんで、涙なんて流しているんだ」
なんだか、噓みたいだ。
最初は、スキル『なし』のレベル・1だった俺が、ここまでこれたことへとの感動と、彼女に追いつける、追い抜ける可能性が見えたこと。
いろんな感情がぐちゃぐちゃに俺をかき回す。
袖で瞳から流れる涙を拭いながら、改めて決心する。
「絶対に、由紀さんを超えてみせる」
追いかけて、追い抜いて、由紀さんを超える
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます