第38話 【脅威種】ジャイアントコボルト 決戦
それを見た瞬間、俺は、ジャイアントコボルトに向かって、飛び出した。
勢いのまま飛び出した俺は、漆黒の剣をより強く握りしめながら、攻撃する隙を伺い、ジャイアントコボルトの動きを観察する。
しかし、ジャイアントコボルトは突進の姿勢から、一歩も動かず、こちらを見つめていた。
(なんで、一歩も動かないんだ?もしかして、何かを狙って——)
いや、もう考えても無駄だ。一歩も動かないなら、狙いやすいし、むしろ好都合だ。
俺は、深く考えることなく、【脅威種】ジャイアントコボルトの目の前まで接近する。
(この距離でもまだ動かないのか——なら、全力で……)
漆黒の剣が纏う真紅のオーラが激しく奔流を始め、深く構える。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
(この距離なら、届く!!)
全力で俺は、剣を振るった。余すことなく全力で。
が次の瞬間。
ジャイアントコボルトが不意に左に体をずらした。
「なぁ!?」
俺の攻撃はジャイアントコボルトの胴体を狙っている。
(ダメだ!修正できない!!)
そのまま、俺の全力の一撃は、ジャイアントコボルトの右腕を引き裂いた。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲痛な叫びを上げるジャイアントコボルト。しかし、瞳にはまだ戦う闘志が燃え盛っている。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
右腕を失い、そこから大量の血があふれ出だす中、ついにジャイアントコボルトは動き出した。
(しまった!完全に誘導された)
最初っから、右腕を犠牲にするつもりだったんだ。
俺が右足を地面につけた瞬間、ジャイアントコボルトは俺にめがけて突進する。
よける時間などない。受けるしかない。
(だが、ここで受ければ、確実に勝機を失う。なら、ここで限界を超えろ!!由紀さんが見ているんだ!!情けない姿なんて晒すな!!)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(右腕が引きちぎれそうだ。でも!!)
体をねじりながら、漆黒の剣を無理やり、ジャイアントコボルトに向けさせた。
その時間、わずかコンマ数秒。
そして、突進するジャイアントコボルトと漆黒の剣が衝突する。
「ぐぅ!?」
無理な態勢で受け止めたジャイアントコボルトの攻撃に俺の体は悲鳴を上げる。
まるで、重力が何十倍にもなって潰される気分、拮抗する時間が長ければ長いほど、血が飛び散り、痛みが走る。
でも。
それでも、体に力がみなぎる。限界を超えているはずなのに、まだ超えられると訴えかけてくるように。
真紅のオーラはさらに大きく輝きを炎のように燃え盛っていく。
『ここからだろ?本番は——』
不思議と安心感を感じられる声が耳元で囁かれた気がした。
「まだ——」
少しずつ、ジャイアントコボルトの突進を押し返していく。
「まだ——俺は——」
拮抗した二人の力が徐々に
「由紀さんに追いつけていない!!!!」
【脅威種】ジャイアントコボルトの猛突進を押しのけていた。
その時、後方に押し倒されるジャイアントコボルトと目が合う。
最後のチャンス、この機会を逃せば今度こそ負ける。
「———ここで決める」
漆黒の剣を強く握りしめながら、深く構えると、真紅のオーラが激しく剣に流れ込む。
すでに、体は限界にきている。武器一つ振るのすら、激しい激痛が走る。
剣につく滲む血がどれだけ力を入れているか物語っている。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
その時、真紅のオーラはより激しく燃え盛り、漆黒の剣の刀身を真紅に染め上げた。
もはや、あとは斬るのみ。
俺は、最後の一滴を絞り切るように、刀身を真紅に染め上がった漆黒の剣を振り下ろした。
そして、ジャイアントコボルトの胴体に漆黒の剣が食い込んだ。
(切り裂けない!?)
よく見ると、ジャイアントコボルトの胴体の筋肉が収縮し、漆黒の剣を抑え込んでいた。
それに気づいた俺は、それでも、さらに力を込める。
(ここで決めなきゃ次はない!!力を込めろ!!今あるすべてを絞り出せ!!)
等に限界を超えている。すでに全力を出している。でも足りない。
だからなんだというんだ。足りないなら、ここで成長すればいい。
(渇望しろ!!力を求めろ!!最後の最後まで力を入れろ!!)
真っ赤に染まった刀身が炎のように燃え盛り、徐々に筋肉の繊維を切り裂いていく。
(負けるな!!押し返せ!!俺は——)
ふと、何かが壊れる音が聞こえた気がした。
「俺は、由紀さんを超える
その瞬間、真っ赤に染まった刀身はより神々しく輝き、そのままジャイアントコボルトの胴体を切り裂いた。
「ッッッッッッがぁ!?」
悲痛な叫びが広間全体に響き渡り、そのまま【脅威種】ジャイアントコボルトは倒れ込む。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ———」
気づけば、真紅のオーラは消え、瞳も黒に戻っていた。
力尽きた俺の体は、自然と漆黒の剣を手放し、上を見上げる。
(倒した——のか?)
もはや、言葉すら出ない。ただ、残るのは最後に振るった剣で切り裂いたジャイアントコボルトの感触のみ。
静まり返る広間、それが物語るのはただ一つ。
「やっ——たぁ」
その瞬間、体の隅々から激痛が走り、勢いよく
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