第23話 実は強い?水瀬さん

 活気がありながらも、鋭い声で聞こえた。


 そして、その正体はすぐに分かる、水瀬さんだ。


 彼女は振り上げられた拳を片手で軽々と受け止め。


「落ちろです!!」


 受け止めた拳を打ち払い、由紀さん以上の力でみぞに拳を打ち込んだ。


 その痛みは誰もが想像できないほどの痛みだろう。


「その無意識で動くその体が動かなくなるまで……打ち込んでやるですよ」


 後方に飛ぼうとしている千住君の体を右手で鷲掴み、何度も、何度も溝に強烈な一撃を打ち込み続けた。


「…………」


 そのまま水瀬さんの足元で倒れこみ、千住君が纏っていた赤いオーラは消えていた。


 まったく立ち上がる気配の千住君。


「本当に困った探索者シーカーです」


「…………え」


 すると、由紀さんがこちらに急いで駆け付ける。


「なんで、ここにいるんですか、京香さん!」


 真剣な表情で水瀬さんに語りかける由紀さんに対して、落ち着かない様子で。


「お久しぶりなのです、由紀!でも今日は特に用はないので、ここで退散するです!!行くですよ、日向さん!!」


「え、ちょっと!?」


 俺の腕を力強く引っ張り、担ぎ上げながら連れ出された。


 担ぎ上げられた俺は、抵抗することもできず、見知らぬ道を奔走する。


 その途中で水瀬さんは、急ブレーキをかけ、足を止めて、担ぎ上げられた俺をそっと優しく降ろされた。


「着きました」


「うぅ……どうして、俺がこんな目に」


 状況が理解できないまま、俺は、悪酔わるよいした。


「大丈夫ですか?日向さん……すごく顔色が悪そうです?一体、何が?」


「お前のせいだよ!お前のッ!!」


「へぇ!?私はただ、日向さんを担いで逃げただけですよ?」


「そのせいだよ!!」


 連れてこられた場所は、とある喫茶店前。


 いろいろとツッコミたいところではあるが、とりあえず、最初に聞きたいことがある。


「ふぅ~~水瀬さん」


「なんですか、日向さん?もしかして、お礼ですか?お礼でしたら結構です!私は当然のことをしたまでで、もしお礼がしたいというのなら、お肉を頼みたいのです!!」


「お礼なんて言うわけないだろ」


「な、なんで!?」


「それより、お前いったい何者なんだよ。千住君の攻撃を止めるわ、容赦のない攻撃を繰り出すわ……ゆ、由紀さんと知り合いぽかったし……」


「……そうですね。それに関しては言えませんね」


 きっぱり否定する水瀬さん、反応は屋上の時と一緒だ。


「そうか、じゃあ、もう関わるな。とりあえず、学校に戻って……」


「ちょっと待ってくださいです!!」


「なんだよ!!」


 戻ろうとすると水瀬さんは涙目になりながら、ズボンを鷲掴み、離そうとしない。


 俺は、何とかして引き剝がそうとするも、あまりにも力強く、むしろ、抵抗すればするほど掴む力が強まっていった。


「こいつ、なんて力だ!!」


「絶対に離さないです!一緒に喫茶店に入るまで離さないです!!」


 力負けするのも無理はない、相手はアタッカー学科の水瀬さんだ。


 俺みたいな普通学科の生徒が勝てるはずもない。


 どうする?ここは諦めて喫茶店に入るか?でも学校の授業に出席しないと欠席扱いになるし、でも、この状況を切り抜けられる気がしない。


「わかったから、わかったから!その手を放せ!!」


「はいです!!」


 素直に鷲掴んだズボンから手を放した。


 すると、俺はふと水瀬さんに対して思った。


 「猫みたいだな」って。


 別に悪口ではない、ただ、一瞬、水瀬さんの頭上に猫耳とお尻辺りに尻尾が見えただけ。


 全くもって、一ミリも「可愛い」とは思っていない。


「では、行きましょう!!です」


「……はぁ…はいはい」


 これで、授業欠席が確定してしまったが、仕方がない。


 だが、どうせなら、水瀬さんが濁している内容部分を暴いてやる。


 こうして、俺と水瀬さんは、授業をサボって喫茶店に入店した。

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