第21話 ストーカーされている理由
同じ制服を着ており、フリフリのスカートから女子生徒だ。
しかし、制服の上にパーカーを着ており、フードを深くかぶっている。
俺はふと、後ろを振り返ると、
「なんて、分かりやすいんだ」と思いながら、気づかないふりをして、再び前を向いて歩き出す。
なぜ、こんなことになったのか、実はその理由は俺もまったくわかっていない。
最初は新手のいじめだろうかと疑ったが、この3日間、特に学校生活に支障はない。
つまり、別の目的であるということなのだが、それがよくわかっていないのだ。
ただ、間違いなく、普通学科ではないことだけは分かっている。
探索者育成高等学校には4っの学科に分かれているが、その学科の区別は右胸につけられているバッチの色で判別できるようになっている。
アタッカー学科は赤色のバッチ、タンク学科は青色のバッチ、サポーター学科は緑色のバッチ。
そして、普通学科は黒色のバッチを付けている。
このようにして、学科の区別をしているのが、探索者育成高等学校の
つまり、いま付きまとっている女子生徒のバッチの色を見れば、どの学科かわかるわけだが……。
(全然見えない……)
パーカーでほぼバッチが隠れていて、見えないのだ。
「これは、隙を見て暴くしかないな」
なぜ、俺が総合学科ではないと確信できるのか、それは彼女の動き方や歩幅だ。
普通の人は足音を立てて歩く、だが彼女には一切足音が響いてこない。
こんな芸当、普通学科が出来る芸当ではない。
俺は後ろを警戒しながら、歩き続け、気づけば、学校に到着。いつも通り自分の教室に行き、席についた。
そのまま、いつも通り授業が進み、お昼放課の時間になる。
俺は千住君に気づかれないように、屋上へ向かった。
すると。
「げっ……誰かいるんだけど」
屋上の扉の先から人影が見える。
扉の前で立ち尽くす俺は、どうしたものか悩み、ぐるぐると徘徊し、頭を回転させる。
ここは、何も知らずに屋上に入るべきか?でも、もしかしたら、俺と同じ考えの人が、屋上に訪れた可能性もある。
なら、ここは空気を読んで、後ずさったほうがいいか?俺だったら、その方がありがたい。
(今まで、俺が屋上を占領していたんだ、今日ぐらい譲ってもいいのでは?)
しかし、もし俺と同じ考えを持っているのなら、また屋上に訪れる可能性もある。
なら。
その結果、俺は屋上に入ることにした。
俺は、堂々と扉を開けるとそこには。
「きゃぁ!?だ、誰ですか!!」
驚きながら、飛び跳ねる女子生徒、右胸には赤色のバッチ、アタッカー学科の生徒だ。
「って、日向さん!!」
「え……なんで、俺の名前って、待て!どうして、普通学科の校舎の屋上にアタッカー学科の生徒がいるんだよ!!」
「そ、そうだったです。もうお昼の時間だったんですね。完全に油断したです!せっかくの完璧な隠密行動がこんなミスでバレるなんて!!!」
金髪のショートヘアに、見たことがあるパーカー、俺は、少し考え、すぐに答えにたどり着く。
「も、もしかして、ここずっと後ろについてきた女の子か!!」
「ばれてしまったです。完全に終わりです!!」
頭を抱えて、絶望し切った表情を浮かべるアタッカー学科の金髪生徒。
そして、なんやかんやり、いま俺たちはお互いに向き合う姿勢でにらみ合っている。
「それじゃあ、まず君の名前を聞こうか?」
「うぅ……
「じゃあ、水瀬さん。どうして俺の背後に付きまとっていたのかな?」
「それはですね……その、何と言いいますか。最近噂になっておりまして……」
「噂?噂って何の噂だよ」
俺は、水瀬さんが言う噂について気になった。
「はい、最近ですね。レベル・1のスキル『なし』がダンジョン4層で暴れまわっているって言う噂でして、で、でも、レベル・1のスキル『なし』がダンジョン4層に潜れるはずがないって……それでその気になって……」
「それで、付きまとっていたと?」
「はい!はい!そうです!はい!!」
大きく何回もうなずく、そんな水瀬さんに不信感を抱いた。
水瀬京香の目線が少し虚ろなところや、手を両手で握っているあたり、まだなにか隠しているそんな予感がする。
ただ、水瀬さんが言っていることはすべて、理解できることだし、納得ができる。
ここは泳がせるべきか、それとも問い詰めるべきか。
いや、ここは。
「水瀬さん、まだなにか隠していませんよね?」
「え、ええ。何も隠していませんです!」
「心に誓って言えるか?」
「はいです!!心に誓って言えます!!」
「そうか、なら許す!!」
「ありがとうございます!!日向様!!!」
なんだ、この状況。
少し圧力をかければ、ぽろっと口を滑らすかなって思ったが、そうでもなかった。
今思えば、水瀬さんってアタッカー学科の生徒だし、普通に俺より強いんだよな。
ははは、もしこのまま攻撃でもされたら、命なかったかも。
「ごほんっ、ではもうこれからは付きまとってこないように」
すると。
「それは無理です」
きっぱりと否定してきた。
「え……」
「それはできませんです。何を言われようとお断りするです」
真剣な表情で、こちらを見つめてくる水瀬さんに俺は戸惑った。
「り、理由を聞いてもいいかな?」
「そ、それはですね……」
目線をそらし、ひきつった表情を見せ、ためらう様子が伺える。
「おい、なぜそこで———」
その瞬間、大きな力がぶつかり合い、衝突したような、そんな騒音が校舎全体に轟いた。
地面が揺れ、校舎が揺れ、その場で立つことすらままならないほどの揺れが学校全体を襲い、俺たちはふと、グランドを覗く。
もくもくと上がる煙、散乱する砂煙がグランド全体を覆い隠している。
「な、なんだ?……ってあれって!?」
煙が徐々に消えていく中、二人の影がうっすらと見える。
その瞬間、考える間もなく、俺はすぐに屋上から駆け下りた。
最短距離で、階段を飛び越え、一気に下の階まで下りきり、グランドに着くと、うっすらとしか見えなかった影がはっきりと見えた。
そこには、千住君と由紀さんがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます