第20話 ついに一発100万ゲット!!
シリア商店の扉を開けると、タバコを吸って一息している明さんが退屈そうに虚空を見つめていた。
「お邪魔します……」
「……うん?おっ!?日向か……こんな時間に珍しいな」
「明さんこそ、今日は暇そうですね」
「うるせぇ!!この時間帯は、ふと客が来なくて暇なんだ。それより、今日は何の用だ?こんな時間にお前が来るなんて珍しいじゃねぇか」
「今日はたまたま、早く終わったので、さっさと換金しよかなって」
「なるほどな。まぁ、その左腕じゃあ、長くは潜れねぇからな。ほら、さっさと魔石だせ。換金してやる」
「お願いします」
すると、俺は革袋から今日集めた魔石30個以上を取り出し、明さんの前に並べた。
「………………え!?」
一息間をおいて、小さい声で驚きの表情をする明さんに。
「どうしたんですか?」
俺は、平然と明さんに声を掛けた。
「おい、俺の見間違いかもしれねぇから、ちょっと俺の頬をつまんでくれねぇか?」
「はぁ……いいですけど」
俺は、何を言い出しているんだ?っと思いながら、明さんの頬をつねった。
「いてて……夢じゃねぇな。おいっ!日向!!この魔石どうしたんだよ!?」
「どうしたって、ダンジョンで魔物を倒して、魔石を集めたんですけど……」
「で、でもよ。この魔石の色、紫色に輝く魔石はベアウルフ、これなんてハチーの魔石じゃねぇか。っておいおい、よく見たらこの濁った紫色の魔石は!!ケルベルスの魔石だぞ!!日向……お前、盗んだのか?」
「なわけあるか!ちゃんと、ダンジョンで自分で倒して手に入れました!!」
「信じられねぇよ……だって、まだベアウルフやハチーは分かる。でもよ、ケルベルスは4層に住み着く凶暴な魔物だぞ?日向のようなレベル・1なんかに
「ふふふ、えっへん!すごいでしょ!!」
疑いのような視線を向けてくる明さん、それも無理はない。
「にわかに信じがたいんだが……本当に倒したのか?」
「そこは疑わずに誉めてほしいんだが、本当です!!正真正銘!!俺が倒し、集めました!!」
「……まぁ、日向が噓つく度胸があるはずがねぇしな。とりあえず、さっくと換金だけしておくか。……そういやお前、銀行の登録はしたのか?この魔石の数だと余裕で100万は超えるぞ?」
「あ~そういえば、してないや……」
「じゃあ、ここで済ませおくか。書類持ってくるから、ちょっと待ってろ」
ついに一発で初の100万以上の稼ぎをしてしまった俺の心境は驚くほどに落ち着いていた。
別にうれしくないわけではないが、それ以上に早くダンジョンに潜って強くなりたいという気持ちが強かった。
「お~い。これが銀行登録用の書類だ。書けたら、明日中に振り込んでおくぞ」
「分かりました。それじゃあ、また来ますね」
「おうよ。次来るときはもっと貴重な魔石を期待しておくぜ!!」
「あははは……冗談がうまいですね。明さん」
「やめろよ。その死んだような魚の目をするの」
「冗談ですよ。今日の俺はすごく機嫌がいいので……」
「おっおう、そうか……」
「じゃあ、今度こそ」
こうして、俺は『シリア商店』を後にした。
そのまま、家へと帰りいつも通りの普通の生活を送った。
学校では千住君を警戒しながら、帰りはダンジョンに潜り、スキルの力を確かめながら、自身の力を高めていった。
それは日々の日常の一部となり、気づけば、1ヶ月の月日が経っていた。
左腕は完全に完治し、いつも通り使えるようになり、ダンジョンも5層の入り口に到達。
苦戦していたケルベロスも左腕が使えるようになってから、簡単に倒すことが出来るようになった。
5層に到達してからは、菜々花さんに過剰に心配されるけど、5層で危険な毒草や魔物などを教えてくれる。
さらに、俺が手に入れたスキル『
自分なりに予想を立てたが、確証はないし、もし間違っていたらと思うと、この考えですら恐ろしく感じる。
そこで、俺はざっくりとした考え方を持つようにした。
スキルを手に入れてから、すべての動きが遅く感じるようになった、という感覚があることから、スキル名に因んで、自身を加速するスキルだと認識するようにした。
これがあっているのかはわからない。
なんで、俺がスキルの能力についてこんなにも悩んでいるのかというと、スキルは本来、
だが、俺が手に入れたスキルには一切記載されていなかった。
つまり、知る手段がダンジョン内で探るしかないのだ。
不便ではあるが、ここ最近スキルに関してはどうでもよく感じていたりする。
だって、スキルを意識しなくても強くなっていけるし、お金を稼ぐことができるからだ。
とはいえ、最近俺には悩みがいくつかある。
その一つが。
『成長の遅さ』だ。
最初のころに比べて、成長した実感が全く得られず、その不安が俺の心を焦らせている。
「はぁ~~」
探索者育成高等学校に向かう途中、ため息が漏れた。
別に嫌なことがあったわけでもないし、ストレスを抱えているわけでもない。
成長速度の悩みはいずれ来るだろうと予想はしていたし、実際に訪れるとたしかに精神を蝕んだが、そんなことを気にしていたら、何も手につかなくなる。
俺が今、一番に悩んでいるのは。
「なるほど。今日も日向さんはこの時間帯に登校と……」
ぼそぼそと呟きながら、右手にシャーペンを左手にメモ帳を持って、すらすらと書き記している。
そう今、俺はストーカーに目をつけられているのだ。
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