第18話 俺の成長は止まらない!止まらない!
ダンジョン1層。
俺は、右手に小型ナイフを持って、コボルトの前に立つ。
「ぎゃぁ~~~~~」
「久々のダンジョンなのに、自分でも驚くほどに落ち着ているな……」
先手、コボルトが短剣を振り回しながら、突撃してくる。
動きは単調、フェイントをかける素振りもない。
それに、動きが鈍い。
「いけるっ!!」
俺にはハンデの左腕がある以上、左腕を狙わせてはいけない。
なら、姿勢を低く身構え、コボルトをできるだけ、近くまで引き寄せる。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
目の前に迫るとコボルトは短剣を振り上げる。
その瞬間、俺は、がら空きになる喉元の隙を捉える。
(今だぁぁ!!)
俺が右手に持つ小型ナイフがコボルトの喉元へと吸い込まれ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
迷いもなく、無駄もなく、最短距離で正確に、コボルトの喉元を切り裂いた。
喉元から血しぶきを吹き出し、そのまま倒れこむコボルト。
「……体が軽いし、なんだが——鈍いな」
コボルトの動きが鈍く見えた、武器が身体に馴染んでいる気がした。
「調子でも悪かったのかな……コボルト」
俺は、次々とコボルトを狩っていった。
そして。
「おかしい、おかしいぞ。弱すぎる、コボルトが弱すぎる」
コボルトの違和感は変わらず、たった30分で魔石15個。
もう、最高記録を越そうとしている。
「もしかして、スキルのおかげなのか?」
俺は、
今回の探索は、スキルの確認を兼ねている。
てか、スキルを手に入れてから、ダンジョンで試したくてうずうずしていたのだ。
「もしそうなら、いけるかもしれない、ダンジョンの2層へ……」
もうコボルトは楽々と殺すことができる、それは俺にとってうれしい成長だ。
もともとお金稼ぎが目的だから、そのまま安定して殺せるコボルトを狩って魔石を稼げばいいのだが。
「行くしかないよな」
俺には目指すべき目標がある、憧れている
その人に追いつくためには、もっと強い魔物と、より困難な試練を乗り越えなくてはいけない。
未知を恐れてはいけない、当たり前に順応してはいけない。
俺は、
ダンジョン2層の入り口の螺旋階段前。
「ふぅ~~緊張……いやワクワクするな」
唾を飲んだ、息をのんだ。
高鳴る心音は胸に手を当てなくても分かるほどに高鳴り、自然と零れる笑顔。
俺は、今このダンジョン2層という未知にワクワクを感じている。
「さぁ!行こう!!」
俺は、螺旋階段をゆっくりと降りる。
階段が終わり、地面に足がつくと視界には一度、見た同じ光景が広がっていた。
それは、一度だけ見たことがある光景だが、あの時と今とでは全く違うものに見えた。
全てが未知、灰色の壁、1層と違い、全体が明るい2層は全てが未知だった。
しばらく、奥へと進むと、紫色が特徴のベアウルフや昆虫型のハチーと遭遇する。
ベアウルフは基本3匹以上で行動する習性があり、一人で挑むのは危険だ。
それが、
でも、俺は、挑んだ。
3匹以上の集団戦は経験しているし、左腕が使えないとはいえ、それは逆に技術的成長に繋がると考えたからだ。
「思ったよりも、弱いな……」
あっさりとベアウルフ3匹を殺せた。
戦った感覚はコボルトがすばしっこくなったような感覚で、歯ごたえがなかった。
たしかに、スピードが早く、最初は戸惑ったものの、慣れてしまえば、大したことはない。
次に昆虫型のハチーは黄色と黒色が交互に色塗られ、空を飛ぶ厄介な魔物だ。
特徴的なのだが、お尻に
不規則に空を飛び回りながら視界を惑わせ、鋭い毒針で
小柄な
「まぁ、俺には止まって見えるけど……」
不規則に飛び回り、隙あらば攻撃してくるハチーをタイミングよく両断する。
ベアウルフとの戦いで目が慣れたのか、いつもよりさらに鈍く感じた。
気づけば、たくさんいたハチーは全滅し、地面に沢山の魔石が転がっていた。
それから、しばらく突き進み、魔物と戦っていくにつれて、魔物の鈍い動きが気にならなくなった。
「これって——3層の階段だよな」
2層に続く螺旋階段と同じものを見つける。
これは、進むべきだろうか、でも、左腕のこともあるしな。
「いやなぁ~~まだスキルがいまいちわかってないしな」
俺の中で今、二つの欲が葛藤している。
一つ目は、3層に挑みたいという欲、二つ目は、スキルをしっかりと確認したいという欲。
ここまで順調だと、今の俺が絶好調、調子がいい状態ということだ。
だったら、調子がいいうちに、3層に挑んでおいたほうがいいはずだ。
でも、それだとスキルが確認できない可能性がある。
せっかく手に入れたスキルだ、しっかりと能力を知って、自分の糧にしたい。
しかし、3層に挑めば、スキルを確認するどころじゃなくなる。
2層にとどまれば、スキルの確認ができるし、魔石もゲット、いいことしかない。
「うがぁぁぁぁ!でも、でも!!」
挑みたい、このうちに秘める好奇心が3層に挑めと言っている。
これは、どっちがより得かとかそんな話じゃない。
「うぅ~~ん。俺は、どうすればいいんだ」
魔石はもう十分集まったって、いうよりむしろ、ここ3日分は集まってしまった。
これ以上、集める必要はない。
俺は考えた、自分の心に聞いた。
気がつけば。
「はぁはぁはぁはぁはぁ———強いな」
3層を飛び越えて4層に到達していた。
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