第16話 俺はついに手に入れたぞ!!!!!
「ダメだ……濃すぎる」
この一日の濃さに少し、頭が痛いと感じる俺は、頭を抱える。
ふと、時間を確認すると、夜8時を過ぎており、俺はとりあえず、ゆっくりと家に向かうことにした。
「はぁ~今日のことは忘れようかな……」
由紀さんと話せたのはすごく、うれしかったけど、それ以上に変なところを見せてしまったと、その恥ずかしさが今頃になって、込み上げてきた。
もう顔すら見れないかもしれない。
「まぁ、いい刺激にはなったのかな……それに……」
そう深く考えていると、気づけば、家の前だった。
「ただいま……」
玄関の扉を開けるとリビングの灯りが付いていた。
すると、リビングから女性らしき影が見えると。
「お帰りなさい、お兄ちゃん!」
「ああ、ただいま、愛華……」
リビングを見ると、机に豪華な食事が並べられていた。
「ど、どうしたんだ?、この
「退院祝いだよ!お兄ちゃん!!どう?うれしい?泣いた?」
「なぁ……愛華……」
「なになに!感動のあまりに妹の好感度が上がっちゃった?」
「いくらかかったんだ?」
「…………」
俺は初めて愛華から渾身の腹パンをくらった。
「ぐふぇ!?」
「お兄ちゃんのバカ!!」
「な、なんでぇ……」
「ふぅん!!お兄ちゃんなんて、地面に這いつくばって、私が美味しい料理を食べている姿を眺めていればいいんだよ!!」
「……ひ、ひどくないですか?」
俺はしばらく、愛華のご機嫌を取り、何とか、ご飯を食べる許可を貰った。
なんで、ご飯を食べるのに許可がいるのだろうかと思ったが、それを言ったら、本当に食べられない気がしたので、黙ることにした。
「お兄ちゃん、いい!!せっかくの退院祝いにいきなり、値段を聞くのは失礼でしょ!!」
「はい、誠に申し訳ございません」
「よろしい!!さぁ、お兄ちゃん、最愛の妹が作ったご飯を召し上がれ」
妹の素敵な笑顔に、さりげないウィンク。
きっと、ほかの男ならきっと心に恋のキューピットが放つ矢で
俺は、久しぶりに愛華の作る手料理を食べると、涙が出そうなほどにうまく感じられた。
「お兄ちゃんは、明日からまたダンジョンなの?」
「う~ん。そうだな」
「あんまり無茶しないでよね。左腕のこともあるんだし……」
「わかってるよ……」
一応、125万があるし、この1週間は潜らなくてもいいかなって一瞬思ったりしたけど、今思えば、こういう甘い考えが、自分の首を絞めるんだよな。
「じゃあ、私が先にお風呂に入るけど……」
「いいよ。俺は後で入るから」
「やったぁぁ!!一番風呂だぁぁ~~!!!」
そういいながら、俺の目の前で服を脱ぎだす愛華。
「おい!!脱ぐなら、洗面所で脱げ!!」
「いいじゃん。見られて減るもんじゃないし……」
「俺のライフが減るんだが……」
「なになに、もしかして私の美しくスレンダーな身体に興奮してるの?」
「ふざけてないで、洗面所で脱げ」
「きゃ!脱げだなんて、お兄ちゃんも男の子なんだね」
「愛華もこんな変態に育って、お兄ちゃん悲しいよ」
「お兄ちゃんが悲しんでる……すごくウケるだけど」
「ウケないよ、そんな悪い子には俺のきついお尻ぺんぺんを……」
「きゃぁぁぁぁぁ~~~じゃあ、はいってきま~~す!!」
愛華は着ている服を脱ぎながら、お風呂場へと走る。
「おい!もう~子供じゃないんだから……」
俺は散らばった愛華の服を拾う。
ああやって、愛華はたまに、俺の反応を見て楽しんでいるけど、しっかりとシャツとズボンをはいているから、しっかりと羞恥心はあるようだ。
「よいしょっと」
拾った服を、洗濯機に入れ、洗濯機を回していると、「るっるる~~」っと楽しそうにシャワーを浴びている愛華の声が聞こえる。
「全く、世話のかかる妹だ」
俺は、そのままリビングに戻り、一枚の封筒を取り出した。
「よし!どうか!!」
微かな希望を持って、俺は封筒の封を開ける。
俺の期待は、レベルアップ。
『ジャイアントコボルトの激闘』と自分で言うのもあれだけど、あの経験は自分の糧になっていると思っている。
レベルアップすれば、さらに深い層への挑戦ができるし、その分魔石の金額も跳ね上がる。
それに、より強い魔物と戦えれば、俺はもっと強くなれるはずだ。
そうすれば、少しは……彼女に。
「ふんっ!!」
封筒の中の一枚の紙を取り出し、パッと開くと。
「……はぁ?」
俺の口から出たこともない声が出た。
「う、噓でしょ……いやいやいや、そんなわけ……」
もう一度、見る。
「……がちで?」
俺は、その一枚の紙を見るも、とても信じられなかった。
『
【柊日向】
Lv.1
【スキル】
【攻撃力】 89
【装甲】 50
【魔法】 なし
【魔力量】 0
【アビリティ】 渇望:E
書かれているはずのないスキル欄にスキルが記載されている。
俺は何度も何度も何度も確認する。
「書いてある……」
驚きのあまりに言葉を失い、自然と体から肩へそして足腰へと力が抜ける。
「まっ待って!しかも、アビリティまであるんだけど!!」
(もしかして、今日死ぬのか?)
「もう一度、見てみるか……」
じっと一枚の薄っぺら紙を眺める。
「う~~ん、夢でもない。現実だ……」
(これは喜んでもいいんだよな?いいだよな?)
俺は何度も自分に問いかける。
そして。
「よ……よしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
人生で一番の大声を響き渡らせると。
「ちょっ、お兄ちゃん!!」
大声に反応して、飛び出してくる愛華。
「どうしたの!!って何しているの?」
ガッツポーズをしながら、一枚の紙をもつ俺の優雅な姿。
「愛華……」
変な人を見るような目で見つめてくる愛華、だがお兄ちゃんとして、ひとつ言いたいことが今、この瞬間、できた。
「まずは、服か……せめて、タオルを巻いてくれ……」
愛華はふと、視線を徐々に下へ向ける。
ぽたぽたと滴る水滴はスレンダーな身体を沿って床に落ちる。
大きくも小さくもないきれいで整ったバランスのいい胸、お風呂上りなのか、ふわふわと白い湯気が見える。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
気づいたのか、隠すところを手で隠しながら、扉の後ろに隠れた。
「うぅ……見られた、お兄ちゃんに私のすべて見られた……」
扉の後ろからひょこっと顔を出し、涙目でにらみつけてくる。
「俺は別に悪くないんだけど、それに、見られて減るもんじゃないんだろう?」
「それは、ただの冗談だし!!もう~お兄ちゃんが急に叫ぶから慌てて……」
「ごめんな。心配させたか?」
「心配するにきまってるじゃん……」
我ながら、いい妹を持ったと思う。
いつも、一番ストレスを抱えているのはきっと、愛華だろう
。
家族を失い、信じて俺についてきた愛華、お母さんかお父さんについていけば、安定した生活は保障されていたのに。
「とりあえず、風邪ひくから、もう一回入りなおしてこい」
「……うん。ねぇお兄ちゃん……」
「なんだ?」
「忘れてよね?」
見せたこともない笑顔での一言に俺は、背筋を通って悪寒を感じる。
「忘れてよね?お兄ちゃん……」
「あ……はい」
あんなに笑顔だったのに、まったく笑顔に見えなかった俺は、おかしいのだろうか。
愛華はそのまま、お風呂場に戻り、俺は再び
「けど、これで夢じゃないとはっきりしたな」
俺についにスキルが発現した。
しかも、後の発現、かなり珍しい形で……だ。
俺は嬉しすぎてニヤニヤと、ずっと見ていると、ある違和感に気づく。
「……うん?スキルランクにEXってランクあったか?」
(スキルランクはEからSまでしかないはずなんだが、どういうことだ?)
「まぁ、そんなことはどうでもいいか、とにかく俺はスキルを手に入れたんだ!!これでやっと、スキル『なし』って言われなくなるし、それに……」
ふと頭の中で浮ぶ由紀さんの姿。
「やっと、スタートラインかな……」
(うれしい、うれしい、うれしい、うれしい、うれしい)
届かないと思っていた、半ば諦めていた。
でもやっと、少し見えた気がした。
希望の光のように舞い降りたスキル。
まだ能力は分からないけど、それは今後、ダンジョン内で試せばいい。
「よし!やる気が出てきたぞ!!」
天に拳を掲げ、頑張ることを決意する俺をお風呂上がりの妹はそっと扉の後ろ側で覗いていた。
「お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃない……」
そんな妹の様子を知らずに俺はずっとガッツポーズを取っていた。
ーーーーーーーーーー
ついにステータス解禁!!
スキル名が少し変ですが、お気にせずに。
攻撃力とか魔力とかのパラメーターはつけたほうがいいですか?
少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします!!
ご応援のほどお願いします。
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