第12.5話 ダンジョンマスター

 とある日の夜、突然、ダンジョンが揺れた。


 それは、地上にも地面を通して伝わり、ニュースでは地震と報道したが、人々に不安を抱かせてしまい、すぐにダンジョンの現地捜査が行われた。


 捜査結果は、特に問題なし、異常は一切見られなかった。


 だが、一つ、不可解な報告を受ける。


 ダンジョンが揺れたあと、一人の探索者シーカーが重症な状態でダンジョンから出てきたと言う。


 その男の名前は。



柊日向ひいらぎひゅうが



 果たして、これは偶然だろうか。


 これは、あくまで私の憶測でしかない。


 だが、疑っておいて損はない。


 何事も身構えておくことも作戦の一つ、保険は多ければ多いほどいい。


 とある一室。


 暗闇の中を照らすのは松明のみ。


 松明が続く道に視線を伸ばすと、奥に一つ、ポツッと玉座が置かれている。


 その玉座で堂々と座っているのは影のもやで認識ができない誰かがいた。


『報告は以上か?』


「はいっ!!」


 玉座に座る謎の人物。


 その者の声は、重く太くノイズのような声でその場にいる全員の耳に響くように聞こえてくる。


 黒い影で認識できないため、姿は見えない。


 だが、このお方の名前は、探索者シーカーなら誰もが知っている。


 ダンジョンの運営者にして、探索者協会シーカーきょうかいの会長であり、ダンジョンの行く末を見守る者。



大條茂だいじょうしげる



 この場所ではダンジョンマスターとも呼ばれている。


 ダンジョンは代々ダンジョンマスターが管理しており、すべての権限がダンジョンマスターにある。


 彼の名を知らない者はおらず、探索者シーカーなら、誰もが耳にする。


『ふん、念の為、柊日向の監視を命ずる』


「はっ!!」


 命令を受けた部下はそのまま、後を去っていった。


『これで、二回目か……どう思う?』


「どう思うとは?」


 物影からフードを被る謎の人物が現れる。


『そのままの意味だ。ダンジョンの揺れ、これはダンジョン内で異常事態が起きことを示している。しかも、それが二回目だ』


「私は何とも……偶然ではないのか?」


『偶然とは、偶発的に起こる言わば、神のいたずらだ。それは二度も起きるものではない』


「それはいささか、視野が狭いのでは?偶然の2回や3回、あってもおかしくはないと思うが……」


『貴様はまだ、ダンジョンの未知の恐ろしさを知らない。ダンジョンの揺れはダンジョンの悲鳴だ。そんな偶然が起きるのなら、とっくに人類は滅びている』


「……確かに、そうかもしれないな」


『だからこそ、もう一度、問おう。どう思う?』


「ふん……」


 フードを深くかぶる謎の人物は、考える素振りを見せる。


 ほんの少し間をおいて。


「私の見解でしかないが、柊日向とはかなりの高確率で関係があると思う。原因は予想しかねないがね……」


『やはり、貴様もそう思うか……』


 するとダンジョンマスターの顔向きが少し下向きに落ちた。


 それは見た謎の人物は、あることに気づく。


「……うれしそうですね」


『そうか?』


「ええ、影で表情は見えませんが、見えなくてもわかるほどに……」


『ふふ、そうか……わかってしまうか、うまく隠していたつもりなんだがな』


「ダンジョンの揺れの原因、すでに知っているのでは?」


 フードを被る者は確信を突く。


 今までの、彼の言動を考えれば、すでに答えは出ていた。


 わざわざ、原因の候補である柊日向を監視程度で済ませたダンジョンマスターの行為。


 もし本当に疑っているのなら、しっかりと取り調べをしたほうがいいはずだ。


『ああ、知っているとも。だが、それをわが口から言うことはできない』


「それは、残念です」


 本当に残念だ、そう思った。


 けど、仕方がないことだ。


 最近のダンジョン内のことを私は知らないし、調べる手段も持ち合わせていない。


「仕方がない。答えは、現れるのを待つとしよう」


ーーーーーーーーーー


少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします!!

ご応援のほどお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る