第2話 二人の転生

「………あれ……?」


 俺は思わずそう言葉を零した。何故なら、俺はゲーミングチェアに座ってPCの前でオープンワールドのゲームを起動したはずなのだ。急に強い光が出てきたと思って思わず目を瞑り、両腕をDA○SUKEポーズを思わずとって目を守った。だが、両腕を下ろし、目を開けば、そこは知らない場所だった。


「いや、ここは………」


 そうだ。あまりにも前のことで忘れかけていた。ここは…………ここは…………


「オープンワールドのアバター作って職業選んで名前付ける所じゃねぇか!!」


 そう。ここは俺が起動したゲームの1番最初に決めるはずの画面だった。

 そもそも、あのゲームにフルダイブの要素は無かったはずだし、その証拠として俺はPCからゲームを起動した。


「どういうことだ…?上手く情報を整理できん……」


 そう呟きながらぐるっと一回転する。だが、果てなく真っ白な空間が続くだけで何も無い。

 俺は視界の隅にアイコンのようなものを見つけた。「なんだろう?」と率直な疑問を抱きながら俺はそのアイコンのようなものに意識を集中する。


「うわっ……!!」


 柄にもなく大きな声を出してしまった。

 意識を集中したところ、なんと、目の前に映画館の様な大きなスクリーンが現れたと思いきや、自分の姿と、その周辺にゲームでよくあるキャラの見た目を弄るボタンがその映画館の様な大きなスクリーンに映されたのだ。スクリーンの縮小版のようなものが俺の手元に1つ現れた。映されている内容は同じだ。「どういうことだ…?」と思いつつ、俺は見た目を弄るボタンをタップする。


「これ、俺の姿を自由に弄れるって事か?」


 見た目を弄るボタンをタップすれば、ゲームと全く同じ配置、同じ内容のものが展開される。


「もしかして………俺、ゲームの世界に入っちまったのか!?」


 そう思った瞬間、少し不安だった気持ちが一気に喜びに変わる。そうして俺は、嬉々として設定を漁り始めた。


「ふむ…多少違うところはあれど、大体は俺が知ってる内容と同じだな…」


 だが、訳が分からないがゲームの世界に入ったのだ。きっと俺だけだろうし折角なら自分の姿のままで楽しもう。

 そう思い、俺は自分の姿を一切弄ることなく、その設定を終えた。


「さて、次は確か……」


 そう呟きながら俺は次の設定へと向かう。


「よし、やっぱり職業の選択だな。」


 職業。それは、現実でいう仕事の職業の事ではなく、所謂自分が使う武器の種類の事だ。種類は様々あり、王道の剣、弓、槍、盾に、特殊職としてハンマーや魔法使い、研究者……までだったはずなのだが、俺の目の前にはまだ続きがあった。刀、銃、賢者、テイマー、全職者………


「は!?全職者!?」


 バグか?こんなんチートでは…?文字通りならばここに書いてある職業全部使えるって事だよな!?……まあ、自分だけの世界だしな。多少無双したところで問題は無いだろう。

 そう心の中で、1人で勝手に結論付け、全職者をタップした。その瞬間、普通は出るはずの「この職業で宜しいですか?」というメッセージが出ずにそのまま名前を決める画面へ移動してしまった。まあ、変えるつもりはなかったし良いのだが。ただ、「普段の武器はどうしますか?」と表示されたので、ジャパニーズ魂に則って「刀」にした。


「名前……名前か。」


 顎に手を当てながらそう呟く。一応ネット活動用で俺は「星」という名前を使っていた。無論このゲームもそうしていたのだが。


「まあ、普通に名前で良いか。」


 そう言い、俺は入力欄に「七音」と入力し、確定を押した。

 そうして、俺は再び光に包まれ、俺のゲームの世界での暮らしが始まったのを感じた。

_______________________


「ん……」


 小さくそう呟きながら私は目を開けた。七音にオススメされたオープンワールドのゲームを起動した瞬間、急に強い光をPCが発した。私は思わず目を瞑った。そして、目を開けば目の前にPCは無く、大きなスクリーンと手元の小さなスクリーンに映った私の姿と、その近くに配置された、恐らく見た目を弄る事が出来るであろうボタンがあった。


「え……?」


 思わずそんな声が零れた。七音から聞いていた内容は、フルダイブではなく普通のPCゲームだったから。


「でも、これ完全にフルダイブだよね…?」


 いや、でも私は確実にPCから起動したし、フルダイブの機械も使ってない。


「とりあえず……状況を整理しなきゃ…」


 そう呟き、私は見た目なんて決めてる場合じゃないと思い、見た目を全く弄らずに見た目の設定を終えた。


「…え!?職業!?」


 七音から聞いていたものより随分と種類が多い。七音は、「奈乃は女の子だから、前衛武器は似合わないぞ?魔法使いとかなら似合ってるんじゃないか?」と言っていたが、正直高校生にもなって魔法使いになりたいなどと幼稚な事は言いなくないしやりたくもない。だが、他でもない大好きな七音からそう言われたのだから。と、私は魔法使いをタップした。「魔法使いで本当に宜しいですか?」と表示されたが、無論「はい」にした。


「えっと、次は……名前ね。」


 名前はどうしよう。一応「ちょこ」というネット用の名前はあるのだが、魔法使いで「ちょこ」は少しどうかと思ってしまったので、普通に「奈乃」にした。

 そうして、私はゲームの開始を表すかのような光に包まれた。

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 そうして、俺を包んでいた光が消え、目の前に城の王の間であろう場所が視界に映った。

 そうして、私を包んだ光が消えて、私の視界にはアニメのお城でよくある、王様との謁見をするような場所が映った。


「「ここは…」」


 その言葉と同時、二人は互いの方を向く。七音は、和服に腰に立派な漆黒の刀を携えている。はたまた奈乃は、如何にも魔女っ子の格好に魔法の杖を持っていた。その杖は普通に振り回しても十分強いんじゃないかと思えるほどの強度で、杖の先には木星型惑星のような、球体をいくつかの輪が取り囲むようなものが付いていた。


「「はあぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」」


 オープンワールドの世界全てに届きそうな大きな声で、二人は驚きをあらわにした。

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