第9話
「かんぱーい!」「お疲れ~~」私たちは居酒屋にいた。サークルに入って三回目の飲み会。だんだん焼酎の味もわかってきた気がする。
「ウタちゃんって彼氏とかいるの?」とヒロさんに話しかけられた。「いないです・・・」「だよな。」「だよなって。」「だってどう見てもいなさそーだもん。芋っぽいっていうか。」「芋っぽい?どういうこと?!」「雰囲気が子供なんだよなあ(笑)」「はー!?」と怒った。怒ったが、ある意味感動する。コミュニケーションをとることができるまで成長した自分。当初の自分だったら、緊張して話せなかっただろうし、ましてや怒るなんてできなかった。サークルの先輩はこわそうに見える人が多い。しかし一緒に飲んでいると、意外と楽しくて。意外と仲良くなれるんだ、ということに気づいた。「じゃあサークルで気になってる人とかはいないの?」「それ気になるな(笑)オトちゃんの。」「うーん・・・」いまだに全く話せないアオさんのほうを見た。「あ、アオのこと好きなんだろ。」「え!」「図星だ!(笑)」「まじ!?ちょーおもしれーじゃん。」先輩たちはどことなく嬉しそうにしている。「なんでわかったんですか?!」「だってお前わかりやすいもん。」とヒロさん。ヒロさんはタバコをふう、と吐いて、続けた。「アオかー・・・。あいつはやめといた方が良いよ。」「え、なんで・・・」「・・・あいつはね。あんまり良くないよ。」アオさんと同じ二年のヒロさん。詳しく聞きたかったが、それ以上は答えてくれなかった。どうしてアオさんは好きになっちゃだめなんだろう。
「二次会行く人―!!」「はーい!」「人数多いから二つに分かれるか。」「ぴーす(立ち飲み居酒屋・狭い)と、カラオケ」私は近くにいた先輩と店を出た。外に出ると、ウタちゃんがいた。人数の多い飲み会では席の関係で喋れない人がいる。ウタちゃんとは席が遠くて全然喋れなかった。もっと喋りたいな、と思った。「ウタちゃんだあ(酔っ払い)」「オトちゃんどうしたの~(酔っ払い)」「ウタちゃんもう帰るの?」「ううん。タイチ先輩に誘われたから今から二人で飲むんだあ。」とウタちゃん。タイチさんと言えば、前回「一年生持ち帰り疑惑」が出ていた先輩だ。噂ではチャラいらしい。「えー、タイチさんはやめたほうが良いよ~。みんなチャラいって言ってるよー。」「えー、そんなの本当か分かんないじゃん。私は噂よりも自分の気持ちを信じたいの。」急にかっこいいことを言い出すウタちゃん。だけど、タイチ先輩相手にそんなにマジにならなくても・・・と思った。ウタちゃんは「チャラい人かどうか確かめる。」と言いながらタイチ先輩と消えていった。「オトちゃんは二次会くるよね?」と先輩に言われた。「行きましょ!」「行こー!」
6人くらいで歩いている私たち。「あの、私たちってどこ向かってるんですか。」「え?ぴーすだよ。」しまった、アオさんはここにはいない。飲むのが好きなアオさんは二次会に参加している。いないということは、カラオケ組に行ってしまったのだ。「私、カラオケしたいです。」「あ~カラオケ組はあっち行ったよ。多分、ボンボンに向かってるから追いかけなよ。」「・・・」今更一人で追いかけるのはカラオケへの熱意がすごい人っていう感じで恥ずかしい。それに、頑張ってアオさんを追いかけていったところで、あんまり良いことは起こらない気がする。前回部室で話しかけた時のひんやりとした空気を思い出した。私一人だけ舞い上がっている状況。
どうして、私はアオさんと喋られないんだろう。飲み会で、喋っている一年生はたくさんいるのに。きっと私が一番アオさんと喋りたいと思っている。だけど、そう思えば思うほど、遠くなっていっているような気がするんだ。
もしかしたら、アオさんにあんまり好かれてないのかもしれない。そんなことが頭をよぎった。そんなわけない、だってまだ知り合ったばっかりだし。友達割引だってしてくれたし。二次会ではわざと元気な振りをした。何も考えたくなかったから。
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