第3話 打って変わって。

――――チュンチュンチュン。

今日は良い日だよな、小鳥はさえずってるし…って違う違う!


「いつつつ……どこだよこ…こ!?」

『よーやっと目覚めたか、寝坊助』

「いや目覚めたけど、なんでオレ…オレ…パンツでゴミ捨て場に寝てんだよ!」

『これは重症な記憶障害だな?よぉーし電気ショックd』

「待て待て待て待って!ちゃんと思い出すから!」

『ちぇっ…じゃあ軽くおさらいな。

1.オマエ、チマミレ。2.オマエ、ソラトブ。3.オマエ、マルカジリ』

「説明になってないしおさらいにもなってない!!!」

『はっはっは!気にしてたら禿げるぞ!』

「うるさいな!…ってか今何時!?」

『おぉ、今か?9時だが。』

「学校あるんだってぇ~!!!」


…とにかく急いで自分のマンションまで帰った。

正直パンツ1枚でゴミ捨て場に寝てたこともこれで帰ったこともすごい恥ずかしい。

急いで支度して、急いで学校ついて、まさかの昼休み後‥‥。



「まっさか…朝比奈が休みだなんてなぁ…ってか、オレが悪いの?アレ」

『んなわけ。とはいえこうなっちまったんだ、末永ーくよろしく頼むぜ?かっちゃん♡』

「かっちゃんって……お前、いつ俺の名前ってか苗字わかったんだよ!」

『そりゃあ、オマエのミブンショーってやつを読ませてもらったからな。

いろんな情報と性癖とか丸わかりだぜー?』

「きっしょ!きっっっっしょいな!こいつ!!!ってかオマエホントなんだよ!」

『あぁ、オレ?そーだな。イノセンスって呼ばれてたな』

「胃の…センス?」

『胃袋じゃねーよ!イノセンス!イ・ノ・セ・ン・ス!』

「あぁ~・・・・・・・で、それなに?」

『なんも知らねーのかよ!!!』

「…だって、あの石がぶつかってオマエが出てきてそれっきりだし

オレなんもわかってねーんだけど。なんなんだよアレとかコレとか」

『しゃーねぇなぁ。じゃあ説明してやるからオクジョー。行こうぜ』

「オクジョー…屋上?いいけど、何の関係があるのさ」

『ちゃんとしたチュートリアルだ、大事だろ。オマエ』


そうやってイノセンスと自称する謎の特殊能力?パワー?自我のある何かがオレを諭す。

そのままオレは連れていかれるように屋上へと足を踏み入れた。

そういや、一年生の時は朝比奈と一緒に屋上に抜けてご飯を食べたっけなぁ……


『おい、ボケっとすんな。何考えてるか丸わかりだぞ。』

「なんだよ、良いとこだったのに。で?そのチュートリアルっていうのは?」

『お前のその異能センスってのは血液を操って出す。というか血液凝固ブラッドセンスってやつだな。』

「ぶらっど・・・せんす?なにそのネーミング、安直過ぎない?もしかしてイノセンスが考えたの?ねぇ、イノセンスが考えたの?」

『うるさい。オマエがよーく知ってるヤツならすぐこれが出るはずだ。あのゲームの』

「ゲームって…あ、ネイド・オンラインのこと?でもそんなスキル……あ、あったわ」

『だろう?というか、それが手っ取り早いイメージだと思ってな、そういう名前にした。』

「へぇ~。でももっとあったじゃん。赤いレッドウィンターとか。」

『そうはいかないな。何より、異能センスの使い手が一番馴染む名前じゃないと上手くいかないんだぜ?』

「馴染むって…まさか、あの時に頭の中でものぞき見した?すごいプライバシーの侵害なんだけど」

『馬鹿言え、そこまでぐりぐりしねぇよ。せめて植え込みとか改竄とか…』

「もっとタチがわるいな!?そこまでするならさっぱりやってくれよ!」

『へへっ、悪い悪い。…じゃあ、まじめな話だ。かしわ……心して聞け』

「なんだよ急に改まって。さっきより気持ち悪いぞ……」

『それで結構。あの時に見た怪物、まだ覚えているだろう。

これから先、オマエは異能センスに惹かれてあの怪物が寄ってくる。

そして、あの怪物が夜な夜な来る世界を生き延びなきゃならねぇ』

「……。」

『だから、オマエが独り立ちできるようにオレがついてやる。

NOとは言わせねぇ。埋まった以上は最後まで面倒見てやるよ』

「………。」

『おい、かしわ…どうした?』

「いや、なんでもねぇ。むしろ、よろしくってヤツか」

『…かしわ…。あぁ、そうだな。これからヨロシクってやつだ』


こうして、イノセンスとオレ かしわ 拍理ひょうりはこんな出会いをした。

今となってはいい語り草なのかもしれない。

でも、これから先ずっと続くんだ。死と隣り合わせの生活が。


「あ。しまった……」

『どうした?かっちゃん』

「ほら、朝比奈のこと。昨日のド深夜であんな騒ぎしたじゃん

大丈夫かなって今心配になって…今日欠席みたいだし。」

『あの女か…じゃあ、お見舞いとはいかないが様子を見に行くか?』

「もち。そのつもりだっての、アイツがいなくなったらオレがどうなるか……」

『……いろいろと察しておくぜ、かっちゃん』


―――――オレたちは、幼馴染の家へと向かったのだった。

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