第2話 異能とは。

脳がズキッとする。

「うっ…あ…?時計、時計、あれ…?時計?…え?

気のせいか…?時計の針が……止まってる?12時に…止まってる。

まぁいいや……オレつけっぱなしで寝たのか。消さな……きゃ?」


オレがやっていた『ネイド・オンライン』のはずだよな…。

なんでこんなに文字化けして、オレのキャラが変な空間に居るんだ…?


「と、とりあえずログアウト!ログアウトさせないと!」

【ログアウトできません。】

「はぁ!?いやうそだろ!?なんでだよ!」

【ログアウトできません。】

「まじかよ…。ゲームバグったのかよ…何やってんだよ運営…」

『…ィ…ィ!……ィ!』

「…え?……?え?」

『オイ!見てるお前だよお前!後ろ!』

「は?オレ?後ろぉ!?」


なぞの声がして、そのまま振り向いて、オレの部屋の扉があるはず。

…でもそんなことはなく、扉は黒いツタが絡まっているし、何かが居る。

…まるで魚の頭をした、オレと同じ人間のようでなにかが違う怪物が…!


「ウガアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「うわあああああああああああああ!!!!」


…ついつい同じタイミングで叫んでしまった。いや、そんな場合じゃない!

あの怪物、槍みたいなのを持ってこっちに構えてるし…これ俺死んだんじゃ…!


『オイ、お前。このままだと死ぬぞ。』

「だ、だれだよ…この声…!こんなこれ聞いたこと…!」

『オマエが机に放置した奴だよ。こっちみろ。』


…振り向いてみれば緑色の石が入ったペンダントが独りでに浮いている…!?


「え、えっ!えぇ!?」

『驚いてる暇ねェだろ!』


ペンダントが怪物の頭に突っ込んで…怪物が少し怯んだ。


『オイ、お前。生きたいか?それとも死ぬか?』

「え、い、いや。ぃき…ぃっ…ぃ…」

『埒あかねェな!お前の「い」の言葉の時点で同意ってみなすからな!』

「ぃ、ぇ、っ!いき‥‥たい!!!!!」

『よっしゃぁ!』


ペンダントがオレの頭にぶつかる。それと同時に砕け、破片がオレの中に入る。

痛い、痛い痛い、痛い痛い痛い。中からぐちゃぐちゃに切り裂かれそうで

口の中が血の匂いがして、胸が苦しくて、顔が痛くて、そしてそしてそして…!


「アァ……いい、いい、いい!!!気持ちがいい!!!

何でかわかんないけど、内側から力が…なんか沸いてきてるし…!」

『気分がいいだろうな、アドレナリンぶっぱで!んじゃチュートリアルと行くか!』

「は、はぁ!?ちゅーとりあ…うっ…ううっ…おええっ!!!」


口から血を吐いた。喉が痛い、胸が痛い痛い痛い!!!

だけどその血が形を成した。…剣!?体に勝手に纏って…!


『行くぞ、その真っ赤な剣で怪物をぶった切っちまえ!』

「え、ちょ、そんなきゅうに、体が!うわあああああ!!!!」


ズバッ、ザクッ、グシャッと血液の剣で魚頭の怪物を切り刻んだ。

オレの身体が勝手に、怪物を切り刻んだ。三枚おろしよりも分厚く。


「はっ、はっ、はっ…はっ…」

『どうだよ!お前の異能センス!血液で武器ってすげーな!』


オレの脚が力なくゆっくり崩れる、へたり込むように。

でも力は入る、おかしくなりそうだ。


『よーし、あとは勝手にしとけ!外は怪物がいっぱい居るぜ!

…あぁ、そうだ。オレは誰かって疑問に思ってそうだな?』


うるさい、うるさい、うるさい。勝手に入って勝手に動いて勝手に喋って…!

黙れ黙れ黙れ黙れ!!!


『おーおー!こりゃ後でだな!

…1つ忠告しとくぜ、お前の幼馴染あぶねぇってコトをな。』

「あさ…ひ…な…が?……たすけ…なきゃ…!」


体に勝手に…いや、自分の意志で力が入る。よくわからないけど、助けないとって。

体が軽い、扉を開けてマンションの廊下から…オレは飛び出した!


『オイオイオイ!ここ4階だろ!めっちゃ勇気あるな!』

「うっ……かはっ……っ!!!」


顔中から血液を流し、それが背につく。そして固まり、大きな翼となる。

ああ…オレは滑空をしていると実感する。血まみれの顔、服、体で!

そっからオレの動きは速かった、朝日奈の家の屋根に降りては窓から入る。

…ちょうどギリギリ、それも窓を蹴破って。


「ひっ…いや…おばけ…さかなの…おばけ…!」

「ウガアア……!!!」

「お邪魔ァ《しつれいしまぁす》!!!!」


バリィンと窓が割れた、その勢いで怪物を蹴り倒す。正直体が痛い。


「きゃあああああっ!!!いやっいやあああっ!!!!

こ、こ、こここ、こんどは…真っ赤な…おばけぇ…!!!」

「あ?おばけ…?………お前か!」


踏んでいる魚の怪物に剣を突き刺し、切り上げる。

そして、怪物は肉塊ミンチとなって…消える。


「…朝日奈!大丈夫か!」

「ひっ‥‥ひぃっ…ひっ…」


彼女から水の音が聞こえて、ほんのりと香る‥‥あの匂い。

本能で実感する、たぶんこれいまやべぇ、って。


「ス~ッ……。」

『…おい?気まずいからって窓に身を乗り出しっ』

「‥‥おええええええっ!!!!」


また口から吐いて、血液の翼を作って窓から空に飛び立った。

…正直視界がクラクラする、これが貧血ってヤツ?…あーやべっ、これ駄目だ。




――――そのまま何処かへと頭から不時着した。

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