100話 烏の羽根は真紅に燃ゆ 前編


―― 個人Vtuber 七海ナナミ (峰夏美) ――


NaNamiN Ch/七海ナナミ

【#新人Vtuber】YaーTaプロのトークイベントに参加しました! 感想です!【アグちゃん最高でした!】

29人が視聴中 チャンネル登録者数 230人

#新人Vtuber #Vtuber #バーチャルYuTuber #雑談 #歌枠


黄泉:待機

静かなる静謐:待機

野生の森人:たいき

 

 個人Vtuber「七海ナナミ」として配信を始めてから約1年が経とうとしている。それでも配信前はいつだって緊張してしまうな。アグちゃんとは大違いだ。

 

Yaku-lutus:あれ、登録者数かなり減ったな 前250いってたでしょ

T・S・R・S:察してやってくれ(リアル勢)


 登録者数が減ったのは、たぶんヨーミさん達と仲良くなったからだろう。リアルで顔バレしてるから影響が出ちゃってるね。でも私は気にしてないよ。本当に見てもらいたい人には見てもらってるもん。

 ……よし、配信素材の確認オーケー。始めよう。

 

クレイジーピスタチオ:お、明けたか

 

「こんナナミーン。地域密着型・個人Vtuber七海ナナミです。今日もたくさんの方が来てくださってありがとうございます!」


トゥンクトゥンク:未完の大器の成長を眺めているだけだ 何も可笑しい話じゃないさ

ベシャメル:なにげに登録者数の10%超えってすごいと思う

 

 1年も配信を続けてまだ登録者数230人という弱小者だけど、固定層はそれなりに多いほうだと思う。私の密かな自慢だ。今日は珍しく新規のかたがちらちら見えるけど。

 

「トゥンクトゥンクさん、ベシャメルさん、ありがとうございます! 今日はタイトル通り、YaーTaプロダクションのトークイベントにお客さんとして参加したので、その感想をお伝えしようと思っています。雑談のネタをあまり用意していないので早めに切り上げちゃうかもですが、よろしければお付き合いください」


Yaku-lutus:おけまる


「早速メインテーマに行きましょう。タイトルはもちろんこちら! 紅焔アグニスちゃんとオンライントークしてきました! です!」


永遠ニート:今日だよね? よく許可が取れたな

 

「永遠ニートさん、お答えしますね。このイベントのトーク内容自体、お話する前後で配信許可の同意をお互いに行っているので、YaーTa側からNGが出なければ内容の配信自体は大丈夫なんです」


クレイジーピスタチオ:つまりナナミンの事をお嬢から話してもらえる可能性が無きにしもあらずか

ーLightー:それで、生の紅焔ちゃんはどうだったん?

 

「生のアグちゃんですね! いやー、本っ当に最高の3分間でした! まだ夢見心地です!」


五月雨:ナナミン、声がウキウキしてるwww

TAKEHSI:超倍率の紅焔アグニスのチケットがゲットできればそうなるわな

守護神ブナシメジ:悲願が叶ったらそりゃ嬉しい

アイアム関西:ウチもにっこり笑顔やで

 

「まずはイベントのチケットを取ったところから順番に話していきますね」





 イベントに参加しようと思ったきっかけ、実際にチケットを取った手順、チケットが取れた時の感動を時系列で話していく。

 はやる気持ちを抑えながら説明していくけど、いざアグちゃんと話をするという段階になった途端、自分が抑えられなかった。

 

「ひとことで言うなら、もう雲の上の存在って感じです。

 私が緊張して上手く話せなさそうっていう空気を一瞬で悟ってくれて即座にカバーしてくれたり、たったの3分でしっかり言いたいこと聞いてほしいことを引き出してくれたり! 今年17歳になって同じ学年の子で、しかも配信歴だけなら私のほうが長いのに、もう完全にベテランの貫禄なんですよ! それでいて一言ひとことが情熱たっぷりで、アイドルVtuberの業界が本当に好きなんだなってしっかりと伝わってくるの! ――あっ」


T・S・R・S:鼻息荒いwwきもちわるいwww(褒め言葉)

守護神ブナシメジ:熱弁乙 いいぞもっとやれ

けせらせら【あおによし】:限界化すげえ……よっぽどなんだな

永遠ニート:こんなナナミン初めて見た


 しまった。めっちゃ恥ずかしい。

 

「あはは、ごめんなさい。気持ち悪いこと言っちゃって。でもほら、推しとマンツーマンで話ができるって二度と無い機会だと思うから、どうしても興奮しちゃいますよね」


五月雨:そりゃあ誰だってそうなる 俺だってそうなった(ナティ姉に1敗)

和製トッポギ:↑う ら や ま し い


「お話しか聞いてないのに住んでる場所が違うって分からされちゃいますね。くわえてあの歌の上手さがあるなんて……本当、アイドルをするために生まれてきた女の子っていう印象でした。アイドル目指す人なら誰でも憧れちゃうんじゃないでしょうか」

 

永遠ニート:ナナミンも紅焔ちゃんみたいになりたいのかー

T・S・R・S:てか、何を話したの?

 

「ごめんなさい。お話の内容はプライベートなものだから、ちょっと話せないんです」


 そういえばアグちゃん、最後に何か話したがっていたな。何だったんだろ。すごく感情がこもった感じだったから気になったけど、さすがにダイレクトメールやってまで聞く勇気は無いんだよなあ。

 

五月雨:残念

黄泉:まーでもトークの可愛さならナナミンも負けてないと思うが

TAKEHSI:少なくともナティカよりは上手いと思う

和製トッポギ:↑おい

永遠ニート:ナナミンなら企業いけるんじゃね?


「私が企業所属ですか? いいですねー。もっとファンのかたが増えたら素敵ですし」


トム:企業所属だと「ナナミン」は卒業になるか?

けせらせら【あおによし】:最近は名義を変えずに所属もいるだろ

トム:でも汎用モデルだしな

ベシャメル:ここは絵師さんに頼んで専用モデルをだな

静かなる静謐:個人でのんびりもアリだと思いますが

 

 む。ちょっと荒れてきちゃったか。

 

「えーと。企業へ所属するにしても、まずは合格から始めないとですね」


五月雨:目指せYaーTaプロ!

Yaku-lutus:お嬢とコラボが実現できたらいいね

トム:夢のまた夢だが

守護神ブナシメジ:アイドルナナミン……ありです

T・S・R・S:なんか無性にナナミンの歌が聞きたくなってきたぞ

ベシャメル:アイドルといえば歌だから気持ちは分かる

五月雨:ハッシュタグに歌枠あるからいけるのでは?


「歌枠がある……? あっ。前回のタグ消し忘れちゃった」


黄泉:あらら

アイアム関西:どんまーい

守護神ブナシメジ:だがこれで合法的に歌が歌えるな!


「あはは、ブナシメジさんの言うとおりですね。アグちゃんとお話できた記念に何曲か歌っちゃいますか」


けせらせら【あおによし】:やったぜ

五月雨:言ってみるもんだな

和製トッポギ:よく分からん記念だけど、まあいいかw


 本当はアグちゃんの褒めちぎり雑談で終わろうと思ってたんだけど……リスナーが望んでるならしょうがないよね。歌いたい気持ちになってるのは確かだし。気持ちが昂っちゃって発散したいんだよね。


ベシャメル:やっぱり曲は「Say、Hello World!」っすかね!

T・S・R・S:いやグレレンでしょ


「ごめんなさい。紅蓮烈火は難しすぎて本当に無理です……『Say、Hello World!』なら大丈夫ですから、それでいきましょうか。準備しますねー」


T・S・R・S:よっしゃあああ

クレイジーピスタチオ:あがってきた 5573!

五月雨:5573!

RinRinRin♪:初見です。5573ってなんですか?

T・S・R・S:初見さんいらっしゃい 5573はゴーゴーナナミンの略だよ 応援する時の掛け声

RinRinRin♪:ありがとうございます


 カラオケ用のセッティングに切り替え、音源を用意する。カラオケ枠もだいぶこなしてきたので迷うことはない。リクエストの曲だって何回も歌ってきた。目を瞑ったって歌えるよ。


「準備オーケーです。それでは行きまーす!」


五月雨:きちゃあああ!

クレイジーピスタチオ:ハロワのギターイントロすこ

T・S・R・S:5573!

黄泉:5573!

Agnis Ch.紅焔アグニス:5573!

野生の森人:5573!

RinRinRin♪:5573!

けせらせら【あおによし】:え

ベシャメル:は?1

トゥンクトゥンク:ぐえんアグニスいるううううううう

トム:なんでこんな配信にアグニスいるんだよ!!!!!!!!

永遠ニート:dfsdp」こ@

守護神ブナシメジ:やべ咆哮した

和製トッポギ:うそだろお

静かなる静謐:お嬢……

 

『瞳を開くと 蜃気楼の向こうでえええええあああああああああ!??!?!??」


 アグちゃん!? なんで!? なんで紅焔アグニスちゃんがここにいるの!?

 急いでコメントを巻き戻す。

 

 紅焔アグニスの名前を見て、私はもう一度絶叫した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る