56話 テレフォンを使いますか? 前編


Luruna Ch.ルルーナ・フォーチュン

【初逆凸】 申し訳ないが、無礼講なんだ(告知もあるぞ) 【ルルーナ・フォーチュン/YaーTaプロ】

2.5万人が視聴中 チャンネル登録者数 75.5万人

#旅団長の文化勉強 #旅団長の逆凸配信


:とうとう外部コラボじゃけえ! 鷹が胸なるな!

:今回は初手団長か。新鮮!

:逆凸だから当然なんだが、相手が一切公開されてないからめっちゃ楽しみ

:団長の友好関係って誰がいるんだ? センセェ以外で

:センセェって声が出してもOKな人間なんだろうか

:言葉アリアと蒼火セッカなら面識あるから出るだろうな

:あれ? スパチャがオフになってら

:告知関連か?

:団長がミスするとは思えんから、意図的なんだろうな

:そろそろ来るか

:待ちわびたぞぉおおおおお!

:↑そろそろ待ちわびた兄さんもネタが尽きそう


「やあ。待たせたかな。YaーTaプロダクション1期生のルルーナ・フォーチュンだ。

 皆の心に歓びと安寧を。俺の未知にうるお――おおお? 失礼、着信アリだ」


:逆凸配信に凸だと!?

:逆逆凸www

:つまり……凸ってことだな!

:普通じゃねえか!


『しもしも、ルルやーん? あたしあたしー』

「セッカ嬢か。どうした藪から棒に」

 

:セッカちゃん!?

:クッッッッッッッソフランクwwwww

:一人称オフのやつじゃねえかwww

:さすがA○フィールドの張れない女ww

:セッカちゃん事故っておるw


『どうしたって、用事があるからかけてんだろー。あたしの悩みを聞いておくれよー』

「悩みがあるような口調と様子じゃないな。まあ聞こか」

『醤油と味噌と豚骨と塩、どれがいい?』

「ラーメンの話か? 食事のお誘いかな」

『たい焼きの話だが』

「は?」


:待って、マジで何の話!?

:あの団長が困惑しておられるwwwwww

:凸待ちの時セッカちゃん死ぬほど困惑してたから、知らず知らずでリベンジしたなwww

:あれ、凸待ち配信だっけ? 逆凸だから団長が電話をかけていく配信で合ってるよな?

:↑合ってる。セッカちゃんがPONやらかしただけw

Agnis Ch.紅焔アグニス:ちょっとルル? なんでセッカちゃんとマブムーブしてるわけ? どゆことどゆこと?

:お嬢もようみとる

:お嬢大混乱ww

:知らない間に同期がコラボ予定の推しとマブだったら、そりゃ混乱するWWW


「俺の知ってるたい焼きと随分違うな。魚の形をしたクレープに似ている生地に、あんこやカスタードクリームを詰めたお菓子だったよな」

『そうそう。なんだ、たい焼きの存在を知ってたのか。ルルのことだから、魚の鯛を焼いたものと勘違いすると思ったのによー。つまんねー』

「お嬢と一緒に食べたことがあるんだ。話を戻すと、どこかの店でラーメン味のたい焼きを売ってるということだな?」

『そうそう。面白そーだろ。欲しかったら買ってお前んち行くけど』

「いや遠慮しとくよ。ところでセッカ嬢」

『なんだい?』

「今、配信中だ。声も乗っとるぞ」

『ゔぇっ!?』


:ウェーイ! セッカちゃん見てるー?

:やっぱり気づいてなかったwww

:相手のスケジュール確認しないクセまだ直してないのかww

:セッカちゃん経由でメンバーの本名バレてないのマジで奇跡よなww

:セッカちゃんは事務所に怒られてこいwwwwww


『おまっ――スケジュール共有しとけよ!』

「他所の箱の者に共有出来るわけないだろう。ちゃんとTwisterで告知しておいたぞ。電話に出てしまう俺も俺だが……大先輩である君を無視するのは忍びないだろう、蒼火セッカ」

『ありがてえ後輩だよ、オメーはよォ!』


:身内扱いwww気持ちは分かるがww


『くっそー、正論パンチしやがって! 味選べ!』

「そりゃ珍しそうだし、全部一択で」

『欲張りか! 別のやつに聞く! じゃあな!』

「君の旅路に巡りのえにしを」


:逆ギレwwww

:おでれえた……まさかのセッカちゃん


「まさか本日の初外部接触がセッカ嬢とは……予定外だよ。さすがだな。は違う。しかし、Twisterだけでは情報が流れてしまうかもしれないな。予定が公開できるサイトを運営に用意してもらうよう進言しておくよ」


:どーゆー関係? 彼女? 彼氏?


「初の凸待ち配信で連絡先を交換してから、すっかり仲良しになってしまってな。よくオフでご飯や買い物を一緒するんだ」


:知り合って一ヶ月未満って喋り方じゃなかったぞ……

:セッカちゃんフランクな性格ではあるけど、箱内でもああまで打ち解けられてるメンバー限られてるんですがそれは

:あのやり取り台本無しだったら、もう生まれついてのエンターテイナーよな

Agnis Ch.紅焔アグニス:いいなーいいなーずるいー!


「お嬢は後で存分に対談できるだろ。それまでに楽しみは取っておいてくれ。

 奇妙な幕開けになってしまったな。今日はお嬢と姫以外の、友人や知り合いに電話をかけていく予定だ。目覚めて間もない関係で友人の数は少ないが、楽しんでくれれば幸いだ。

 そしてもう一つ。今回のテーマとして、『無礼講』を掲げる。初対面だからといって遠慮はしないでほしい。もちろん話しにくいなら、敬語を使っていただいても全く問題ないぞ。

 外部からのコメントもどしどし待つぞ。せっかく外部コラボが解禁されたのだから、いろいろな人物と知り合いになりたいと思っとる。個人でも企業でも、VでもVでなくても、遠慮せずに来てくれい」


:無礼講……ますますカオスが加速する

:団長の敬語も聞いてみたかったのだが

:団長の敬語は全くイメージ湧かん


 実のところ、俺が掲げる『無礼講』とは、俺が敬語を使わないための『免罪符』的な役割の方が強い。俺の通話相手は軒並み『人生の先輩』にあたるので、本来なら敬語を使って然るべきなのだが。

 そもそも、この世界では敬語を使ったためしが無い。中身は年を取っているせいで、どうにも年下を敬えないのだろうな。褒められるべき気構えではない。

 しかし、物も言いよう、というやつだ。無礼講というワードを引っさげることにより、リスナーの受け入れ姿勢も問題ないようだ。

 

:会話デッキはあるの?


「デッキか……そういえば凸系の配信はデッキを用意するのが鉄板だったな。初の逆凸配信だから適当に雑談して終わろうと思ったが……」


:元々は会話苦手なライバーがあらかじめ準備しておく用だから、会話できる人は問題なし

:団長はおしゃべり好きだから必要無かったか


「とはいえ、せっかく逆凸配信をしているんだから、少し趣向は欲しいな……よし。会話デッキはゲストに一つ用意してもらって、その話題を出すことにしようか。先ほどのセッカ嬢の話題からあやかって、初手の質問は『好きなラーメンの味』で次の通話者に聞いてみるよ」


:話題デッキリレー……アリだな!

:スパチャのオフ設定はどうしてなの?


「スパチャ設定か。とても重要な意味を持っている、とだけ言っておくよ。

 さて、かけていこう。旅団の皆、予想が当たると良いな。先に言っておくが、ライバーさんはあまり絡みが無いのでな。もしかしたら知らない方がいるかもしれないが、ご容赦願う。それと、基本的に凸相手はコメントを見ていない前提で打ってくれよ」


:わくわく。わくわく!

:絡んでたのが箱内とアリア・セッカちゃんだけだから全員新鮮な気持ち

:初手(二番手)は誰じゃろな

:なんとなく予想はつくが……

:誰だ誰だ!

:きた!


「お名前を」

『はじめまして、どうもおおおおっ!』


:うごお! うるせえ!

:声の圧たけえ!

:スピーカーが壊れる!!

 

『ルルーナ・フォーチュンのママをやらせても――』

「…………」


:あ、切った。

:無言で切ったぞwwww

:団長も耐えられぬ怪音量ww

:てゆーか、センセェだったなww

:声が体育会系かつ陽気過ぎて解釈が完全一致ww


「すまない団員の皆。音量を調整した。それと声も小さくするようにチャットで言いつけておいたぞ。ついでに、二度とママのワードを言うなとも」


:容赦ねえwwwww

:団長のこういう対応マジで珍しいwww

:いつも紳士だからビックリしてるよ俺


「では改めてかけていこう……お名前を」

『どうも……ルルーナ・フォーチュンのデザイナーやりました、観照かんしょう退さがるッス。いやいや、開幕から酷くねえッスか団長』

「お前のママ呼びを聞いた瞬間に鳥肌が立ったぞ。生理的に受け付けんかった」

『あんまりだ……』


:センセェ! センセェだー!

:いきなり辛辣www

:失礼だなってまったく感じない……マジで不思議

:普段のやり取りをちょくちょく見るから何も違和感無いのかも

:団長があからさまに他人ディスってるのマジで新鮮

:お嬢相手でもここまで酷くないぞ(誉め言葉)

:お嬢やセッカちゃん相手もマブ感アリアリなんだが、センセェ相手だとレベルが違う

:完全に男同士の友情だなー


『まあ! まあまあまあ! 団長初の外部コラボは俺が貰えたんですし! これくらいの所業なら手打ちにしますよ! なんてたって、俺が初なんですから! うはははは!』

「すまんな。お前よりも先にセッカ嬢と話しちまった」

『はぁ!? 何しくさっとるんだ、あの小娘!!』


:蒼火セッカ/セッカチャンネル:本当に申し訳ありませんでした

:セッカちゃんwww

:大人げねえなセンセェ

:センセェ……うわぁ……うわぁ……

 

「おい……迂闊な発言をするなよ。お前のエゴのせいでセッカ嬢から詫びが入っちまったぞ」

『あれ……すんません。別にそんな怒ってないッスよ』

「楽しみにしていたのは分かるがな。お詫びにセッカ嬢へサムネの絵でも送っとけ。代金は俺が建て替えるから」

『オッス、承知っス』


:え!?!?

:仮にも大先生だぞ!? そんなフランクに依頼OKなのかよ!?

蒼火セッカ/セッカチャンネル:なんかおねだりしたみたいで悪いです


「何も気にしないでいいぞセッカ嬢。運が良かったというだけだ」

『セッカちゃん、大丈夫ッスよ。俺、筆は早い方だし、YaーTaプロ関係の仕事しながら原稿も落としてないから問題なし!』

「月刊誌だから仕事の量はガッツリ多くねえし、仕事以外は酒呑むか映画鑑賞、ゲームか筋トレしかしてねえ暇人だし、気にすんな」

『おっと、最近は酒を控えてますぜ』

「マジか。やるじゃないか」

『酔うほどは呑んでねえッス。配信見たときの記憶無くしたくねえんで』

「なんだ、禁酒じゃねえのかよ。減点」


:団長がセンセェの先輩ポジションすぎて謎……

:そういえば馴れ初めを紹介してくれるって言ってたよな。今回教えてくれるの?


「馴れ初めか。もちろん話すが、この後も人が控えてるから、簡潔に話させてもらう」

『会った時の事、案外、語れること少ねえんスよね』

「そうだな。お前が社長の兄貴で、たまたま意気投合したってだけだもんな」


:は!?

:社長の兄!?

:そういやアカルん、兄貴の話よくしてたな!

:センセェだったのか!?!?!?

:団長の凸待ち配信で言ってたアカルんの血縁者ってセンセェだったんだな!

:団長だけが知ってたの納得したわ


『俺もつい最近まで妹がVやってるって知らなかったんスよ。まさか、たまに配信を見ていたVtuberの正体が、妹かよ!? ってなったし』

「社長が俺をスカウトして、絵師をどうしようね、ってなって、流れでハゲになったんだよな」

『そんな感じッスね』


:ハゲの由来は?


「ハゲ呼びの由来を聞かれたんだが、言っていいか?」

『いいっスよ別に。てゆーか俺から言います。円形脱毛症っスね』

「見事な10円ハゲだったな。社長がハゲハゲ言ってたから、もうハゲでいいかって」

『あの時はまあまあ追い込まれてましたからね。今はもう治ってハゲてねえけど、もう言われ慣れちまったから、そのままにしてるッス』

「ということで、あえて時間を取ってまで話すことでは無かったんだよ」


:確かに、アカルんの兄貴って事実以外は、思ったほどドラマティックではなかったな

:いやいや、十分に興味深いお話でした!

:むしろ納得な流れか


 裏のチャットで、社長から『グッジョブ!』とスタンプが送られてきた。今の説明は俺と朝倉兄妹で考えた、内輪じゃないヤツ向けの偽装カバーストーリーなのだが、辻褄は十分合わせられたらしい。

 これで今回の逆凸のミッションは一つクリアした。ハゲとの関係性は月煌旅団の中で永らく疑問に思われていたから、少しでも解消の助けとなればいいが。あいつの前だと、どうしてもルルーナ・フォーチュンどころかルルーファ・ルーファすら演じきれずに態度や口調が銀星団時代に戻っちまうから困ったもんだ。


「とりあえずセッカ嬢からのお題で話すか。好きなラーメンの味は?」

『マーボカレー! ッスね!』


:ん? 質問内容はラーメンの味だよね?

:う、うまい!

:リアルで作ったら確かに美味い。ご飯と一緒ならな。

 

「……誰がボケろと言った。俺はラーメンの味を聞いたんだぞ」

『だから、マーボカレーラーメンですよ。マーボーとカレーとラーメンですよ。美味いと美味いと美味いを足して3で割らないんですよ。美味いに決まってるじゃないですか。団長にも作りましたよね。不評でしたが』

「あの辛いラーメンのことか? 味は確かに悪くなかったし、辛い物も食えなくないが……進んで食べようとは思わんな。せめてマーボーを抜いてくれ。カレーは大好きなんだから。あと、あの味付けは白米向けだ。もっと薄くしたほうがいい」

『あの濃さがたまらんじゃねえですか』

「お前、いつか内臓やられるぞ?」

『筋肉でカバーしますよ! うはははは!』


:なんという悪食

:センセェは辛党、団長は甘党か

:センセェはツマミになりそうなくらい濃い料理作ってクッソ濃いハイボールをキメるイメージ

:内臓は筋トレで鍛えられないのでは

:辛くないマーボーもありますぜ団長

:団長がすっかりママに……

:俺も団長に甘え散らかしたい人生だった


「次もつかえてるから、次の方に移ろか」

『えー。ちょっと短くないスか。俺の華々しいデビューですよ?』

メンバー限定メン限で呼んでやるから我慢しろ」

『え? マジすか? 聞いてねえスよ? てか、何やるんスか』

「気分次第だ。さ、次の方へのお題出してくれ。10秒以内」

『じゃあ『結婚したい理想の女性』でオネシャス!』

「……正気か?」

『ええ。至極真っ当。何か都合悪いッスか?』

「……ま、ええか。何か問題起こったら全部お前に押し付けよか」

『お゛!? いやタンマ今の取り消しで――』

「じゃあな。酒は程々に」


:無情にも切りおったwwww

:いつもの挨拶すらねえwww

:団長の中でのセンセェのポジションがよく分かるww

:圧倒的パートナー感

:入り込む隙間が無え


「おおそうそう、裏でハゲから伝言なんだが……『ルルーナかける観照退の薄い本はNG』だそうだ。よく意味が分からんのだが……団員の皆、意味が分かるか?」


:何だと!? あらゆる意味合いで何だと!?

:団長ってセンシティブな話題って大丈夫だったか!?

:ガイドライン! ガイドライーン!

:世の中知らなくても良いほうがあるよ団長


「センシティブ……なるほど。なんとなく察した。言っておくが、俺は全く問題ないからな。こちら方面の話題はぼちぼち勉強させてもらうよ」


:え……お、おう

:女 神 か な ?

:女 神 だ よ !


 さて、これで進との関係性を説明する、というノルマはやっつけたな。残りのノルマはひとつ。しっかり消化していこう。

 

「ほんじゃま、どんどん電話していこか」


:次は誰かな……まったく予想できない

:「結婚するなら誰」って質問が危険水域ってことは、男性系アイドルか?

:お、出た


「もしもし」

『あのー……さっきの質問、マジで答えなきゃダメですか?』

「ああ。是非お聞きしたい。クレームは観照退宛てで頼む。ま、この質問は帰り際にしようか。

 お名前を」

『はあ……誠心誠意、頑張らせてもらいまっす。

 はじめましてどうも! じゅうもんじ所属、爽やか健気系ゲーマー系Vtuberの那由多でーす! 今夜はルル団長のお部屋にお邪魔しまーっす!』


:なゆなゆ!?

:なゆたやんけ!!

:そうかBーPAX繋がりか!

:那由多はじゅうもんじでも珍しい正統派イケメン 箱内でもカップリング最多クラスやで

:人間バキュームにはクリティカルな話題だWWW

:さあ、あったまってきましたぞ


 

ーーーーーーーー

7月2日

小説家になろう様にて、普段配信を見てない人には逆凸の意味合いが分からないかもなんじゃなーい? と指摘を受けましたので、それとなく追記しました。

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