54話 メイキングビタースイート


Natica Ch.帝星ナティカ

【料理】オフコラボでバレンタインのチョコを作るぞー!【帝星ナティカ/紅焔アグニス/YaーTaプロ】

1.2万名人が視聴中 チャンネル登録者数30.5万人

#steam explosion


:コラボタグが水蒸気爆発wwwww

:これ考えたの絶対お嬢だろwwwwwwww

:お嬢って英語を理解して使えるのか……?

:姫さんのセンスでは無いと思うが

:謎のままにしたほうがいい謎だってある

:↑ミステリースポットかよw

:結局、30万耐久配信は無かったな……残念

:ところで、このふたりって料理できるのか? 話を聞いたこと無いんだが

:個人的な予想だと、ふたりともできない説を推す

:お。きちゃ!

¥710:待ちわびてしまって良かったのだろうか……この現状を

:↑兄さんが困惑しておられる

:祈りましょう 私達に許された唯一の希望です

 

「こんナティカー! 得意料理はチーズトーストとミルクコーヒー! Ya-Taプロ1期生の帝星ナティカです!」

「イグニッション! 得意料理は炊飯すいはん! Ya-Taプロダクション1期生の紅焔アグニス、現世に顕現!」


:どれも料理じゃねえwwwwww

:開幕即死魔法www

¥7100:神 は し ん だ

:俺たちの心を折るRTAされちまったwww

¥9999:メ○ドラオンでございます

:い、いや、炊飯いうても鍋から炊くとかやろ?(震え

:↑鍋から炊ける奴が得意料理にワザワザ選ぶと本気で思っているのか?

:早く来てくれ団長ーッ!


「ね、ねえアグちゃん。今の挨拶って正解ルートで良かったのかな。リスナーさんが滅茶苦茶心配してるんだけど」

「獲った狸の皮ザマスってヤツだね。杞憂民が杞憂してるだけで、何もおかしくはないよ」


:捕らぬ狸の皮算用ね

:おかしいのはお嬢の語彙力です

:わざとにしか聞こえない……

:意味は合ってるんだけどな


「紅焔ちゃんは紅民のご指摘で少しずつ成長するタイプの精霊ですので。大器盆成たいきぼんせいなんだよ」

大器晩成たいきばんせいですね。アグちゃん、もうシンプルに喋ろう」


:期待できねえ……

:どっちかってーと、お嬢は早熟タイプだと思うんだけどな 歌的に

:つまりお嬢の頭はもう……


「まーた紅焔ちゃんイジりが始まっちまった。今日はナティ姉のチャンネルだから、紅民たちはプロレスを控えめにね。ナティ姉、進行しよう!」

「それじゃあ、お姉さんたちが今日の配信の趣旨を説明するね。ずばり、今日はアグちゃんの家にお邪魔して、アグちゃんと一緒にお料理します!」

「バレンタインだからね。市販のチョコをしこたま買ってきて、そいつを新しくデザートにアレンジだ!」


:不 安 し か な い

:頼む……もってくれよ、オラの心臓!

:ろくに料理しない初心者が思いつきでアレンジして大失敗するパターンですね


「用意したお菓子はこちら。映像のカメラは用意できなかったから、写真でジャン!」

「レシピはネットに上がっているものをチョイスしてみたよ。だからダイジョーブ」

「作るものはガトーショコラです。手作りお菓子の定番だね」


:いきなりガトーショコラだと……正気か?

:レシピってどんな感じなの? 教えてプロフェッショナル

¥710:超ざっくり書くと、①チョコとバターを溶かす ②卵黄と砂糖と生クリームを①と混ぜる ③メレンゲつくって②と混ぜる ④薄力粉とココアパウダーも混ぜる ⑤オーブンで焼く

:↑メレンゲは砂糖入れて卵白を泡立てたやつな

:せめて、ちゃんとレシピとコメント見ながら調理してね

:材料見る限りだと、ゲテモノは入ってないね

:団長のバレンタイン製菓配信は終始和やかだったのに……


「バレンタイン用のチョコだから、ちゃんとプレゼントできるものを用意するよ」

「送り先は当然、ルルちゃんです!」

「配信後に我が家へ合流予定なんだよ。そこで食べてもらうんだ」

「こちらに来られる時間がはっきり決まってなくて、配信に出てもらえるかまでは分からないから、動画のタイトルやタグから抜いてるけどね」


:なにぃ!?

:団長に食わせる……だと?

:お前らー! 全力でメシマズ化を止めるんだ! 俺も協力するぞ!

:団長がお召し上がりになるならば話は別だ! 全力で支援させてもらう!

:あらゆる情報を拾え! つぶさに観察しろ! 想像力だ!

:レシピから考えられる全てのリスクと回避パターンを算出します!

:全ての可能性を考えるんだ! 俺たちの失敗は団長の死だと思え!

 

「……スタメンの人たち、モンスターでも狩りに行くのか? ノリが総決戦じゃん」

「ペーヨンゴ焼きそばの件から、ルルちゃんには美味しいものを食べてもらいたい人が増えたんですって」

「大げさだなー。よーしまずは……買ってきたチョコを刻んでいこう」

「お姉さんはお湯を沸かすのと、オーブンを温めておくね」


:ま、まあ、チョコを刻むくらいなら、お嬢でもいけるやろ……

:ナティ姉、2つのことを同時にやろうとしないでくれー!

:あああああ、不安すぎる

:下手なホラゲーより怖い……


「うわ、チョコかった。チョコのくせに生意気よのう」


:ガツンガツン音してるんだが!?

:包丁で物を刻む音じゃねえ!

:✕調理場 ○工事現場

 

「あ」

「ひゃん!? なに、今のすごい音!」


:耳が!

:何の音ォ!?

:爆発したぞ!?


「やっべ」

「どうしたのアグちゃん?」

「力入れすぎて、まな板が割れちった」

「まな板……んンン!?」

「新品なのに脆いなー。100均の包丁とまな板だし、まあそういう事もあるよね」


:割れ……え、割れた? まな板が? 聞き間違いか?

:そろそろ驚きコメントのバリエーションが尽きてきたんだが……

:いや待て、我々は何に突っ込んだらいいんだ!?

:100均のなまくらで、どうやったらまな板が切れるんだよ!?

:まな板が木製かそれ以外か……そこが論点になるな

:↑いやならないよ!?

:↑団長の御口に入るんだぞ! 重要だろうが!

:落ち着け冷静になろう。まだ慌てるような時間じゃない


「……まー、どうせ溶かすからええか。まな板の破片だけは入れないようにしなくちゃだね。刻んだチョコを沸騰したお湯の中に入れまーす。えーい、バターごと全部入れちゃえ」

 

:……ん?

:チョコとバターをお湯に入れる?

¥1000:待て! 待ってくれ! 今の状況はどうなっているんだ!?

:湯せん用のお湯じゃねえのか!? なんでチョコとバターを入れるんです!?

¥10000:お願いだから一度手を止めてくれぇええ!

:あああああ、ぼちゃぼちゃ音がしてる……


「え? アグちゃん、お湯にチョコ入れるの?」

「湯で煮るって書いてあるから、そうなんじゃない?」

「煮るって字じゃなくてるって字だよ。煎茶せんちゃの煎だね」

「どういう意味?」

「さあ……とりあえずお湯の字が書いてあったから、お湯を沸かしておいたんだけど。今調べてるところです」


:今 調 べ る な

¥1000:\(^o^)/オワタ

:ツッコミ不在の惨事

:超次元調理の現場はここですか?

:おかしいな……コントを見てるはずなのに、ピクリとも笑えネェ

:湯煎は、食材を入れたボウルをお湯につけて、低い温度でゆっくりと加熱することです


「あ」

「あー……やっちゃったね」


:お気づきになられましたか

:だがもう遅い

:ざまあ要素なしのもう遅いはニーズが無いんですわ……

:12000の衆人環視の中でチョコが全滅……? 5分足らずに? 化け物か……!?

:夢……夢を見ています……どこか温かくて懐かしい夢を……

:↑寝るな死ぬぞ!

:時間操作の能力がこれほど欲しいと思ったことは無い

:逆行系主人公になりたい


「どうしよう。チョコは全部使っちゃったぞ。作り直しは無理だなー」

「とりあえずアグちゃん、水分飛ばそっか」

「ナイスアイデア」


:とりあえずで飛ぶ水分じゃねえと思うんですけど!?

:バター入ってるんだろ? 何時間かかるんだ

:じっくりコトコト煮込む系のデミグラスソースかな?

:色は似てるな 色は


「うーん……かなり時間かかりそう。このままじゃ出来上がり前にルルが帰ってきちゃう」

「他の材料も入れて濃くしちゃおっか」

「そだね」


:いま二人の中で、どんな計算式を組み立てているんだ!?

:ナティ姉の中で水のヒエラルキーが低いことだけは分かったわ


「えーと、お砂糖、おさとう……っと」

「!! ナティ姉ストップ!」

「わっ! どうしたの!?」

「それ――アレです。ちょっと舐めてみて」

「あれって――あ、あああ!」

「嘘だろ……まさかナティ姉……いにしえより伝わりし、あのボケじゃないか……」


「お砂糖とお塩、間違えちゃった……」


:馬鹿な……令和だぞ!?

:原 点 に し て 頂 点

:おいこれ台本なんだよな?

¥5000:「こちらが完成品となります」を期待してます 頼むから期待させてくれ

:あーもう滅茶苦茶超えて地獄絵図だよ

:団長の命が……縮んでいきます……


「うわー……」

「コールタールみたいに見えてきたよ……」

「これはさすがに、ルルには食べさせたくないな……どうしよ」

「この作ったやつは、お姉さんたちで頑張って食べるから、ルルちゃんには大人しく既製品をあげるしかないかなー」

「けっこう量あるんですけど……どれ、ちょっと味見」

「うわっ、アグちゃんチャレンジャーだねえ」

「しょっぱっ! 塩じゃん!?」

「ですよねー。お姉さん、けっこう入れちゃったんだよね。ごめんねアグちゃん」

「バターのしょっぱさも合わさってダブルパンチですよ……」


:なぜ無塩バターを使わんのだ……菓子作りの基本やぞ……

:↑基本があったらこんな大災害が起こるはずないだろう!

:何なのだあれは!? どうすればいいのだ!?


「リスナーさんもお手上げ状態だね」

「ここから入れる保険無いかなー」

「もうお姉さんは、ルルちゃんに何とかしてもらうしか思いつかないよ」


¥5000:神様、あなたはどこにいるのですか。あのチョコはもう持てるものすべてを失いました。甘みも、風味も、僅かな苦味すらも。これ以上あのチョコから、何をうばおうと言うのです。

:もうマジで祈るしかできねぇ……

:お手上げハングアップでしゅ

 

¥710:Shock!噛チャンネル:差し出がましいのは承知ですが、よろしければお手伝いしましょうか?

:!?

:しょくかみさん!?

:ナティ姉、お嬢、このスパチャに気づいてくれー!

:祈りは届いた! 拾う神はいたのだ!

:一転攻勢だー!

:来た! 神様来た! これで勝つる!


「え? お? おおお!? マジか!?」

「どうしたのアグちゃん?」

Shockショックかみチャンネルさんが見てくれてる! 超最大手の料理チャンネルの人だよ! 不人気マイナー食材をめちゃ美味しく食べさせてくれるレシピを編み出すコーナーが人気なんだ。このチャンネルのおかげで救われた農家さんもいるって話だよ! レシピ本もいっぱい出してる、ホントにすごい人!」

「へー、どれどれ……チャンネル登録者数500万!?」

「運営オーケー出た! ごめんなさいShock!噛さん、ヘルプお願いします!」


¥710:Shock!噛チャンネル:迅速な対応ありがとうございます。確認です。皮むき器とスライサー、予備の鍋(大きめ)はありますか?


「はい、全部大丈夫です!」


¥710:Shock!噛チャンネル:承知しました。それでは、今から材料を書きますので、準備をお願いします。


「これって……んんん!?」

「ええっ!?」






―― Twister ――

 

【ルルーナ・フォーチュン@YaーTaプロ1期生 @LurunaFortune】

もうすぐお嬢の家に到着。この時のために昼食を抜いてきたぞ。

配信も見ていないから余計にワクワクが押し寄せてくるな。

さあ、お嬢たちの会心の逸食、いただかせてもらおうか。




 

【ルルーナ・フォーチュン@YaーTaプロ1期生 @LurunaFortune】

ごちそうさまでした。期待以上の味だった。ファンにとっては垂涎ものだろうが、残念ながらお嬢の母君と俺で独占させてもらったぞ! むはは!


しかし、やはりカレーは最高だな! 味のベースにチョコを入れるとは恐れ入った。

これぞ人類が生み出した文化の極み!




【帝星ナティカ@YaーTaプロ1期生 @mikadoboshi】

なんとかなった……良かったー……次はしっかり勉強してから配信します。Shock!噛チャンネルさん、ありがとうございます!


【紅焔アグニス@YaーTaプロ1期生 @guen_agnis】

@mikadoboshi

 なんだかんだで好評だったから、またやろうね! 次はフランベやりたいからフランス料理に挑戦しよう!


【YaーTaプロダクション【公式】 @yata_pro】

@guen_agnis

許可すると思っているのか 調子に乗るなよ小娘(#^ω^)


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