エルフの魔術師 #2

「デムゼム領の虐殺!?あなたの知り合いが関与しているの!?」


「ええ、おそらく・・・おそらくですが」


ここ1週間の中でハーヴェス中のギルドの中で一番の話題になっている。

蛮族を率いたナイトメアに、1夜にして滅ぼされた村。


生き延びた村人たちの証言で、その地を治めていたデムゼム公は屋敷ごと焼かれたらしい。

そして、隠し育てられていたデムゼム公の子供を連れ去ったのである。

子供は、前妻との間に出来たナイトメア忌み子だったそうだ。


彼が集落を離れてから、一か月。同一人物?

早すぎるだろうか。

だが、この胸騒ぎは何だろう。

彼でなかったとしても、この話を聞いた時にそのナイトメアに接触を試みるのではないだろうか。


「彼を止められるの?」

目の前のドワーフの眉が歪む。


「わかりません」


返答に、彼女の目に驚きが宿る。


「彼と戦う事になるかも知れないのよ?出来るの?」


「それも、わかりません・・・」


彼を目の前にした時に、自分はどうなるのだろう。

説得は出来るのだろうか。

それとも力で・・・


「・・・それでも、会うのね?」


ただ、少しでも早く力を付けて、少しでも早く彼に会わねばと思ったのだ。


閉鎖的な集落で、本だけを読んでいた自分の世界を広げてくれた彼に。


「ええ・・・」


高潔に見える神官戦士の彼女には、あきれられるだろうか。


「”会う”という事だけは、決めたのね」


最後の質問は自分に言い聞かせているように見える。


「・・・そうね、”その時”どうするか決めるまで、動かないよりもずっといいわ」


ハッとした。

誰かに肯定されるとは思っていなかった。


「答えが出るとも限らないもの。

 少なくともあなたが動いたことで、私は協力したくなったわ」


「そんな、巻き込むわけには・・・」


「あんな悲しい事件は、もう起きない方が良いしね。

 それに、あなたとあの子ルーンフォークの銃手だけじゃ、人手が足りないでしょう?」


「それもそうですね」


自分のいつも通りののんびりした口調に、ドワーフの神官戦士は「フフッ」と笑う。


「だからこの依頼が終わっても、良ければパーティを組んでまた依頼をこなしていきましょう。情報を集めながらね」


「ええ、そうですね」

また笑われる。

つられて自分も笑う。


よくこんなやり取りで笑ってくれた彼と、同じように笑えるだろうか



そうか、彼に笑顔になってもらおう。



頭の中に一筋の光が差した。

まるで星や月に照らされている、この道のようだった。

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星よ、僕らに祝福を ハリィ @cuttingdorothy

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