ルーンフォークの銃手 #2

休憩も終わり、各々が荷物を持って歩きだそうとした時だった。


「あ、待ってください・・・何か・・・」


少年が鼻で2度、息を吸う。


「あっちからです!」


4人が避けて通ってきた森があった。


奥の木々の隙間。

わずかだが、動く人影が見える。

隠れているそぶりはない。

こちら側にゆっくりと近づいてきているのだ、木々を避けながら。


少年以外の3人が、彼が何に気が付いたか分かった。

腐臭だ。


「良く気が付きましたね」

エルフの魔術師が鼻を手で隠しながら言う。


「鼻は良い方なんです、師匠からも褒められました」

少年は森の方を見たまま、盾と小剣をもって体勢を低くする。


こん棒や小剣をもった骸骨と、ボロボロの皮鎧に浅黒い肌の人間、目に生気は無い。

負の祝福を受けた、不死の魔物アンデッド達だ。


動く骸骨スケルトンが3体、動く死人ゾンビが2体」

ルーンフォークの銃手が数と、特徴を手短に伝える。


「あなたの魔法で近づく前にやれる?」


「森を出たあたりまでは届くと思うのですが、それだと木々も焼いてしまいます」


ドワーフの神官戦士が、一瞬エルフの方を見る。


「なる・・・ほど、こっちまで引き付けるか」

「ええ、守りを固めましょう」

少し笑った。

神官戦士の祈り声と、魔術師の詠唱が重なる。


いつの間にかエルフの魔術師を中心にみんなが動くようになっているのが、銃手はいつも不思議だった。

強引ではない。が、ような流れになる。

あの無口な戦士も「ずるいなお前は」とよく言っていた。

神官戦士は気が付いているだろうか。


歩く屍人達が近づいてくる。

銃の射程内に入った。

「数を減らしましょう、私から動きますね」

指を広げ、今度は少し早口の詠唱。

紫色の雷が、屍人達を包み込んだ。




不死の魔物アンデッド達を一掃し、無事に村に着いたのは夕方になる前だった。

集会所にもなっている村唯一の酒場(兼雑貨屋)。

冒険者たちは村長と話している。

出現していた魔物の報告や、村の現状の確認。


興味本位で集まった村人がちらほら、離れた席で酒を飲みながら見ている。


森まではある程度距離はあるが、やはり魔物が出ると聞くと村長の顔は暗い。


「もともとあの森の一体は大破局で、地下に沈められた建物がいくつもあるらしいのです。

 去年までは冒険者の方たちが、何組も探索のためここに立ち寄っていました。

 確かに、建物跡に魔物が出る話は当時伺っていたのですが・・・そうですか」


「神殿にも報告しておきます。国と神殿で調査隊を組んで貰えるかも知れません」


「ああ、助かります。村に戦えるものはいませんし、雇う資金もないので・・・」


「なるほど、それは心配ですね・・・」

と、いいつつ。

エルフの魔術師はドワーフの神官戦士リーダーを見る。


「私はそのつもりよ?」と言わんばかりに、ドワーフはうなずく。


この村で一泊過ごさせてもらう代わりに、冒険者たちは夜間交代で見張りをすることにした。

村長の家に客用の寝室があるので、そこを使わせてもらえる事になった。


村のはずれで野営をする予定だったので、ベッドで寝れるだけでも有難い。

ずっと気が張っていたドワーフの神官戦士も、少し安堵の表情をみせた。


「ふふ、良かったですね。かえってすっきり眠れそうです」

「”ぐっすり”眠れそうでしょ?」

魔術師と神官戦士の言葉に、少年も銃手も笑顔で返した。

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