第19話 2−1

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 さてさて、グライシア-Ccにやってきてから数ヶ月が経ちました。

 私、アンはこの惑星から脱出するため、あるいは、この惑星で生存するために、開拓や開発をサーティとチヒロ、それに可愛いゴーレムやAC達とともに始めたわ。

 でも、次々と困難が襲いかかってきたの。

 例えば……。


                   *


 ある日、私が市庁舎の執務室で執務をしていた時です。

 外は大雨で、土砂降りです。

 これで大丈夫なのかしら。

 そう思っていると、ホログラフィックスクリーンが開いて、大慌ての表情をしたアルカちゃんの顔が映し出されました。

 そして、切羽詰まった声でこう告げてきました。

「大変です! 大雨が降ってきて街や工場が冠水してしまいました!」

 それは大変!

 私はアルカちゃんに向かってこう命令しました。

「アルカちゃん! すぐに排水して! ポンプは用意できてる!?」

「はいっ! 今稼働させますっ!」

 アルカちゃんがそう応えると、ホログラフィックスクリーンは消えました。

 私も司令室へ向かって陣頭指揮を取らないと……。


 ……

 ……


 それからしばらく経って。

 排水ポンプを動かしたり土嚢を積んだりして、街や工場などから水を追い出すことに成功しました。

 司令室にいる私は、現場で指揮を取っていたアルカちゃんと通信をしていました。

「アルカちゃんお疲れさま……」

「なんとか排水完了しました……。これは川に堤防とか用水路とか早めに造っておかないとまずいですね……」

「そうね……。大規模建設チームに頼んでみるわね……」

 治水も政治のうち。川がこれ以上なんとか氾濫を起こさないよう、手を売っておく必要がありますね。

 それにしても、疲れたわ……。


                         *


 別のある日。私が執務室で執務をしていると、急に明かりなどが消えました。

 どうしたのでしょうか?

 すると、ホログラフィックスクリーンが開いて、慌てた様子のアルカちゃんの顔が現れました。

 彼女は舌を噛みそうな勢いで報告してきました。

「マスターアン大変です! 工場などを作りすぎて発電量が不足しています!」

 だから停電が起きたのね。これは大変。策を打たないと。

「アルカちゃん! 発電所を急いで増設して! あと太陽光発電システムも!」

「了解しました! すぐに手配させます!」

 ホログラフィックスクリーンはすぐに消えました。

 ちょっと街を発展させすぎましたね。私としたことが。いけませんね。

 私はため息を付きました。


 ……

 ……


 それから数日後。発電所や太陽電池発電所などが増設され、街に明かりが戻りました。

 私はホログラフィックスクリーンを通して、現場で指揮していたアルカちゃんと会話していました。

「アルカちゃんお疲れさま……」

「発電量安定しました……。これからは発電所の建造を多くしないといけませんね……」

「都市工場計画チームと建築チームに発電所の建築を急がせるように指示しておくわね……」

 電力は大事なリソース。これからも増築していかないといけませんね。

 私は通信を切ると、執務室の大きな椅子にもたれ、大きくため息をつくのでした。


                         *

 また別の日。

 私が執務室で執務をしていると、街に大きなサイレンが鳴り響きました。非常警報です。

 同時に、ホログラフィックスクリーンが開き、慌てた様子のアルカちゃんの顔が映し出されました。

「大変です! 小規模ですが原住生物が襲撃してきました!」

 なんてことでしょう。

 私はアルカちゃんに向かって命令しました。

「軍事部門に迎撃命令を出して! サーティさんとチヒロさんにも協力を!」

「了解です!」

 私も基地の司令室に向かわないと。私は椅子からさっと立ち上がると、執務室の扉へと向かいました。


 ……

 ……


 それから少し経って。

 戦闘が終わり、原住生物達は撤退していきました。

 私は司令室でアルカちゃんから報告を受けました。

「敵原住生物撤退していきました……」

「アルカちゃんお疲れさま。でも昔よりも戦闘時間は短くなっているわね」

「このままこれが続けばいいのですけど……」

 アルカちゃんの不安ももっともです。

 だから、戦力をもっと充実させないと。

 私は次の手を打つべく、参謀達と会議に入ることにしました。


                   *


 また別の日のことです。私が執務室で執務をしていると、アルカちゃんが執務室へと飛び込んできました。そして、慌てた様子で伝えます。

「マスターアン様大変です! 工業製品が全体的に不足しています!」

 えっ。物が足りないって。ちょっと軍拡を重視しすぎたかしら。

 それに、ACとかも増えてきたし。

 これは早急に手を打たないとね。

 私はアルカちゃんに向かって言いました。

「アルカちゃん、工場を増設して! あと資源開発もお願いね!」

「はいっ!」

 アルカちゃんは来たときと同じように慌てて部屋から出ていきました。

 ふうっ。私はまた一つ、ため息をつくのでした。


 ……

 ……


 それから数日後。

 私とアルカちゃんは、執務室でホログラフィックスクリーンに資料などを映し出しながら会話していました。

「部品生産など安定してきました。これでゴーレムのボディなどの開発生産も進めることができそうです」

「アルカちゃんお疲れさま。これは資源開発も即急に推し進めないといけないわね」

「工場チームと資源開発チームに指示しておきますね」

「頼んだわよ」

「では、これで失礼いたします」

 アルカちゃんはそう言ってお辞儀をすると執務室を出ていきました。

 これは一刻も早く、領土を拡張して、街や工場などを増やしていかないと駄目ね。

 でも、そのためにはあの原住生物達が……。

 私は大きなため息を、一つつくのでした。


                         *


 などなど……。

 色々なことがあったわ……。

 困難に打ち当たるたびに、私達は協力して立ち向かいそれを乗り越えてきたわ。

 おかげで街も広くなったし、工場もどんどん増えていって、様々なものが造れるようになったわ。

 食料から文房具、日用品から薬品といった普通の人間にも必要なものから、ゴーレム、ドローン、自動車、重機、武器、戦車、航空機と言った機械類まで……。

 人間が生きるために必要な様々なものを、ACやゴーレムなどにより作れるようになって、この星で遭難しながら暮らしているサーティとチヒロも、きっと不自由なく暮らしていると思うわ。


 そのチヒロやサーティも、ただ食ったり寝たりしているだけではなく、それぞれ色々やるべきことやしたいことを見つけたり、私達ACやゴーレムたちと協力しながら、日々を過ごしていたわ。

 例えば……。

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