第15話 1−15


 激しい原住生物との戦闘の後。

 私は、ゴーレム達などにその死骸や負傷した生物を建築したばかりの科学研究施設に運び込ませたの。

 パレットに載せられて運ばれてきた不気味な巨大昆虫の死骸を、研究室のガラス越しに、というかカメラ越しに私は眺めていたわ。

 しかしこれは。

 昆虫というのは外骨格、外側の皮などで重さを支えている仕組みなので、ある程度の大きさ以上にはならないはずだわ。

 しかしこんな大きさということは……。何かからくりがあるわね。

「メフィール」

「はいにゃ」

 私は研究室で巨大昆虫を調べていた猫耳に青髪に青い目、白い研究衣姿の女性型ゴーレムに呼びかけたわ。

 彼女はメフィール。私についてきた科学研究用のACを搭載したゴーレムよ。

「この原住生物、色々とおかしいところがあるわ。例えば昆虫型なのにこんなに巨大だったり、投射武器を持っていたり。これは生物としてありえないわ。これはよく研究しておいたほうがいいわね」

「同感ですにゃ。このような生物は自然界ではありえないですにゃ。少なくとも地球では。個人的な見解なのですが」

「何?」

「これはある種の生物兵器なのではと思われますにゃ」

「そうね……」

 私はメフィールの言葉にうなずいたわ。

 彼女の言葉はふざけているように思えますが、内容はまっとうなものよ。それが、彼女の優秀さを表しているわ。

「それにしても」

「なんですにゃ?」

「この生物、面白いわ。駆逐するにしろ交渉するにしろ、これは復讐になにか使えるかも」

「……」

「また襲撃があるかもしれないわ。可及的速やかに研究を進めておいて、メフィール」

「はいですにゃ」

 私はレンタルボディを研究室の出口へと向かわせようとして、その前にもう一度ガラス窓越しの光景を見渡したの。

 冷たい白のライトに、鋼鉄色をした甲虫の死骸が無表情で照らされていたわ。

 ……。

 使えるものなら、何でも使うわ。

 それが、敵だとしても。

 私は踵を返すと、研究室を出ていきました。

 レンタルボディのヒールが、冷たく硬く、高い音を立てていました。

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