第4話 月と亀

 一之輔が牡蠣、梅太が金柑、嵐山が栗、桜がケーキ、菜奈がコロッケ、遠藤がさくらんぼだった。

  

 6月4日の晩、廃校の体育館に5人は集まっていた。

「牡蠣、何であんな声を出した!?」と、嵐山。

「まさか、さくらんぼが死んじまうなんてな……ショックのあまりに声がデカくなった」

 一之輔が焼酎を飲みながら泣いた。

「他人の為によく涙流せるわね?」と、桜。

「ケーキ🍰冷たいよ」と、菜奈。

「ケーキは冷たくて当然。コロッケはホカホカじゃないとだめだけどね?」

 菜奈が五木ひろしの真似をしたが、うまくいかずに「似てないから!」と、梅太に一蹴された。

「屋久島から逃げた方がいいんじゃないか!?」と、嵐山。

「栗も声が大きいな?」と、一之輔。

「昔、大声コンテストに出て合格しました」

「どことなくキムタクに似てるな?」と、梅太。

「『あすなろ白書』の取手くん、よかったな〜」と、桜。

「私は西島が演じてた松岡が好きだった」と、菜奈。

「ドラマの話なんてどーでもいい!」と、嵐山。

「この島の何処かにタイムスリップ出来る場所があるって噂だ」と、一之輔。

「親父はスピルバーグ作品の見過ぎたよ」

「梅太、スピルバーグは見るべきだ」

「本名で言うなよ! おまえは用済みだ」と、嵐山がバスケットボールを一之輔にぶつけた。🏀

「殺す気か!?」

「親父を助けてやって! このとおりだ!」

 梅太が土下座して涙をボロボロ流した。

「今回だけだぞ?」


 6月5日、午前8時30分ごろ、屋久島の東エリアにある干物販売店で、同店社長の十亀辰子そがめたつこと男性従業員、千原月秋ちはらつきあきが遺体で発見された。辰子は吉永小百合、千原はパパイヤ鈴木に似ていた。サスペンスドラマで主役級が被害者役やると、え!?と、思うよな?

 朝出勤してきた女性従業員が店内に設置されたプレハブ型業務用冷蔵庫の中で血を流して倒れている被害者を発見した事で発覚。冷蔵庫の外側には扉が開かないようにテーブルが置かれていた。2人の死因は刃物のようなもので首を刺されたことによる出血性ショックであると判明。警察は、同店での当日までの売り上げ金と釣り銭の保管状況から、現金約29万円が奪われたと判断し、強盗殺人事件として対策本部を立ち上げて捜査を開始した。

「ママ、今回の事件はなかなか複雑だよ」と、山田裕貴に似た刑事が仕事中にケータイで話をしてる。

「ねー?哲明……私、石野陽子に似てる?」

「藪から棒になんだよ」


 💀4人死亡


 硴塚龍臣は旅を続けていた。もう少しで午前10時になる。歩きの旅はなかなかしんどい。

 一周を海に囲まれているが、海岸線は崖や磯になっている部分が多い。そのため、砂浜はごく僅かで、海水浴の為の施設は乏しい。遠浅で海水浴に適しているものとしては、島の北西部にあるアカウミガメ上陸・産卵数日本一で2005年にラムサール条約にも登録された永田浜(前浜・いなか浜)がある。

 


 

 


 

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