#20

好きな娘の絵を描くよ

デッサンの間 君を眺める

照れくささと胸の高鳴りが同居する心

それでも筆を動かさずにはいられない

早くキャンバスに君を閉じ込めて永遠に僕のものにしたい

そんな邪な想いが心を占拠仕掛けて窓の外を眺めた

飛んでいく旅客機 鉛筆の芯を照準にして…


思った通りに君を描けないもどかしさに心が荒む

本当はもっと美しいはずなのに…

そんな当然な想いを抱いた放課後の美術室

力量不足を歯がゆく思う

唇を噛んで 血が滲むまで…


見せて って言われて申し訳無さそうに頭を下げる

凄いね って言葉で心が救われる

どうやって描いたの? 興味のあるフリをされて苦笑い

また描いてね? 次の約束を誓う僕ら…


やがて…

幾度となく描いてきた君は現実よりも美しい

キャンバスに映った君は幻影なのだろうか

理想を体現した姿がそこには映されている

でも…

きっと…

現実の君のほうが美しいと信じたい…


もう描けなくなった君を思い出す

いつかのキャンバスを引っ張り出して大笑い

君は変わらず美しい

そう…

いつまでも いつまでも

僕のキャンバスの中で…永遠に…

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