9ページ目 ■ 仕事蟲 ■
自分で言うのもなんだが、僕は仕事真面目だ。
厳格な両親に言われるがまま、学生時代に友人や恋人をつくることもなく、睡眠以外のすべての時間を勉学に費やしてきた。幼稚園からの受験戦争に勝ち残り、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院を卒業した。そして、親に勧められた誰もが知っている大企業に入社し、今に至る。
同期入社のヤツらは歓迎会や、小さいプロジェクトが終わる毎に打ち上げ等と理由をつけて飲み会をやっているようであるが、全くの時間の無駄だ。僕にとっては、給料が発生しないのであれば仕事ではないし、仕事以外の時間には勉強をしなければいけない。これは親に言われているからだ。
五年目になるが、入社以来ミスなんて一回もしたこともない。厳しい上司の指示も忠実にこなしている。遅刻なんて言語道断だ。その甲斐あって、上司からの信頼も厚く、今では僕しかできない仕事を沢山回して貰えている。平日休日問わず、終電近くの0時頃まで仕事をする。
対して、僕以外の同期のヤツらったらまるで役に立たない。ミスも多いし、遅刻もするし、定時に帰る。上司や客にペコペコ頭を下げて、それが終わって戻ってきたら仲のいい2人でヘラヘラ笑ってやがる。何が楽しいのか。僕がやった作業のミスを指摘したりもしたが、そんなのはありえない。あいつらが勝手に僕に罪をなすりつけようとしている。
そうして、実家と会社を往復しているだけの生活続けているうちに、僕は病気になった。癌だった。仕事漬けで、健康診断なんて行く暇はなかった。そんなものに行く時間があるなら、仕事か勉強をしなければいけない。まあ、癌といってもそんな大したものではないのだろうが、多少は不安である。
僕は入院を余儀なくされた。インターネットが接続されていれば、仕事はできる。医師や看護師には無理しないようにとゴチャゴチャ言われたが、上司の言うことは絶対だ。こんな状態でも仕事はこなさないといけない。
同期のヤツらから定期的に近況報告が届いている。入社式で半ば強制的に交換させられたグループメッセージアプリ。社員旅行。忘年会。新年会。宅飲み。プライベートで遊んでいる楽しそうな様子。
僕の病状は、悪化する、一方で、あった。
同期の2人。結婚。メッセージ、受信。僕、ベッドの上、見る。視界、狭い。呼吸、苦しい。時間感覚、無い。
ベッド。横。スマホ。メッセージ。同期。2人。赤ちゃん。笑顔。幸。他感。
妬。悲。虚。泣。怒。悔。 親。上。無。 人。愛。欲。 涙。悔。 死、傍。
ボクノ、ジンセイハ、コレデ、ヨカッタ、ノカ。ホントウニ、ヤリタカッタ、コト、ハ……、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます