6ページ目 ■ 我ガ姫 ■
とある国の王妃であるウクレインは怯えていた。
隣接する東の連邦王国の王、ルーシアは数ある小国を長きに渡りまとめて支えてきた優秀で強気な男であった。社会主義であるこの連邦王国は、ルーシア王を中心として政治が動き、全国民が平等に生きてきた。西側の国々との小さな争いは度々起きていたが、今までは何とかなっていた。
ルーシア王は、ウクレイン王妃の国との関係を大事にしていた。ウクレインの国には豊富な資源や航路があり、なにより、西側の国々との直接的な争いを避けるための大きな壁という役割があったからだ。それ故に、ルーシア王はウクレインが他国と交流を深めることを良く思っていなかった。ウクレインはルーシア王とも表面上は友好な関係を築いていたが、ルーシア王の強硬な姿勢に嫌になることも少なくは無かった。
ウクレイン王妃の国の西側に位置する民主主義の国々では、国民が中心となって政治を行ない、自由に生活していた。政治の根本的な考え方が異なる東のルーシア王の社会主義の連邦王国と、西の民主主義の国々は、お互いを敵対視していた。
そんな東と西の国々に挟まれているウクレインの国は、社会主義を主張する国民と、民主主義を主張する国民とに分かれていた。だが、ウクレインの国の民はやはり自由を欲し、西側の国々と仲良くするようになっていった。
ルーシア王は焦っていた。このままウクレインが西側諸国の仲間になってしまうと、西側の国々はさらに強さを増して、自分の王国が侵略されてしまうかもしれない。そうなってはいけないと、ルーシア王は今まで以上にウクレイン王妃を束縛するようになった。
ルーシア王の脅しにとうとう堪えかねたウクレインは、西側の国々に助けを求めた。どうせ自分の手元から去ってしまうのならばと、ルーシア王はウクレイン王妃の国に攻め入るよう軍に命じ、その国を自分の支配下に収めようとした。
「たかが小娘の国である。東の全土を支配する我が連邦王国の軍力ならば、本気を出さずとも一週間もあれば首都を堕とすことも容易であろう」
そのルーシア王の思惑は、脆くも打ち砕かれた。東のルーシア王の王国に敵対する西の国々は、大量の武器や物資をウクレインの国に援助することで大いに加勢し、戦力は均衡していた。その戦争は激化していき、一か月、一年と時を重ね、数年経ってようやく終わりの兆しを見せた。その頃には、ルーシア王は多くの国民と、世界からの信頼を失っていた。
東西各国の王たちが集う協議の場で、ルーシア王は、ウクレイン王妃の国と西側諸国との同盟を許すことを約束する協定書に調印した。
「ただ、どうか我が国を見捨てずにこれからも交流は続けて欲しい」
ルーシア王からの願いに、ウクレイン王妃は笑顔で承諾した。ボロボロになったルーシア王の国の民は、戦争が終わったことに歓喜した。
そんな衰退したルーシア王の国の情報を耳にし、海を隔てて遠く離れた場所にある世界一の大国の王は、にやりと微笑むのである。
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