第8話
堂村秋彦は、川本にお茶を勧めた。
醜く太った体をソファに沈め、粘着質の物言いで、言った。
「下手なことをしたものです。あなたは首になると、ホームでも噂が立ってますよ」
「すみません。私の考えが甘くて」
「ホームにも、病院にも國枝さんのシンパが多くいるのは知ってるでしょう。永井が動いてるのはまずいですね」
「後任は小橋さんとか」
「いや、小橋には私がストップをかけています。100%あり得ません。あれも気の小さい男です」
「しかし、私の部下、斎藤が永井院長に会ったとか。他の部下も態度が変です」
「駆け込み宿の所長を続けるのは、難しいかもしれませんね。ホームの副園長ポストでも用意しておきましょう。小橋君はどこかに異動させますから」
「そうして頂けるとありがたいです。次の理事長に堂村さんが就くためには、何でもしますから」
「君の体は、まだまだ魅力的です。せいぜい磨いておきなさい。では、今夜は当直なんでしょう。長く留守にすると、また何を言われるか分かりません。下がりなさい」
川本は、深々と一礼して、誰にも見られないように、部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます