第7話 姿なき殺人者
「始末してきた。二人な」
「一人ずつの約束だ」
月光が、戻ってきた銀虫に向かって叫んだ。
彼らは、峠を登り始めてすぐの場所、森の中で息を潜めていた。蒼龍たちの後を付かず離れず追いかけているが、夜は宿を使わず、野宿しているようである。
「二人で済んだんだ。その気になれば全滅させていた」
銀虫の言葉に、月光はふんと鼻を鳴らした。
「次は兄者の番です」
銀虫は、そう言いながら蝙蝠の手に言葉を伝えた。
(蒼龍とは遣り合ったのか?)
(はい。噂通り、油断できない相手です。ご用心くだされ)
蝙蝠は分かったと手振りで示した後、懐から投げ矢を出した。彼が最も得意とする武器である。
鬼坊が立ち上がり、全員に伝えた。
「よし、そろそろ移動するぞ。奴らは峠を越えた後、宿に泊まるだろう。俺たちはその手前で待機する」
全員が立ち上がる中、お菊の姿が目に留まった鬼坊は、すっと近づいて
「お嬢様、野外での寝泊まりは辛いものでございます。今晩は、お蝶とともにお宿にお泊り下さい」
と話しかけた。しかし、お菊は首を横に振った。
「私の顔は伊吹に知られています。もし気づかれたら、私たちの動向が相手に分かってしまうかも」
「お蝶がいる限り、ご心配には及びません。それに、もし見つかったとしても、蝙蝠殿の鬼の目で相手の動きを把握している以上、敵に遅れは取りません」
「でも、次は蝙蝠さんが闘われる番でしょ」
そう指摘されて、鬼坊は返答に困った。
「皆さんが辛い思いをなさっているのに、私だけ宿に泊まるわけには参りません。私のことなら大丈夫、心配なさらないで」
お菊の微笑む顔を見た鬼坊は、恐縮して頭を下げた。
一度に二人もの仲間を失い、蒼龍たち一行には暗い影が差していた。今にも雨が降り出しそうな曇り空の下、静かな行進が続く。
伊吹は、刺客が現れたことでかなり動揺していた。あたりを警戒しながらおずおずと歩き、ときどき木の根などに躓いて転びかけることもあった。
源兵衛は、愛弟子を失った悲しみに打ちひしがれている。
「連れてくるべきではなかったのだ・・・」
疾風の変わり果てた姿を前に、源兵衛は長い間、膝をつき、手をついて、涙を流しながら何度も同じ言葉を繰り返していた。そんな彼に、誰も声を掛けることなどできなかった。
疾風の首を地面に埋めてからも、すぐには離れようとしない源兵衛を、皆は静かに見守っていた。やがて、お松がゆっくりと源兵衛に近づいて話しかける。
「源兵衛さん、そろそろ行かなければなりません」
源兵衛がお松のほうへ顔を向けた。その目は真っ赤に腫れていた。
「疾風の両親は、彼が小さい頃に病気で命を落としました」
お松は、ただ黙って聞くことしかできない。
「それから疾風は医者を志すようになったのです。将来は、どんな病気も治すことができるようになりたいと・・・ それが、こんな・・・」
源兵衛は再び泣き崩れた。誰も声を掛けることができない中で、一之助が叫んだ。
「宗二、疾風、必ず敵を討ってやる。約束する」
三之丞が叫ぶ。
「今度現れたら絶対、返り討ちにしてやる」
源兵衛が顔を上げた。
「銀虫とか名乗っていたな。奴はわしが倒してやる」
地面についた手を握りしめ、源兵衛は力強く叫んだ。
日が西の山々の際に近づき、あたりは暗くなり始めていた。鴉の鳴く声がどこからともなく聞こえてくる。蒼龍たち一行は、山道からようやく抜け出すことができた。
峠を越えて少し進んだ先には集落があり、そこには一軒の立派な宿もあった。その宿に入ってすぐに、伊吹のわがままが始まった。
「お前達、刺客を全員倒してくるんだ。それまで俺は、一歩もここを動かないぞ」
あぐらを組んで座り込んだ伊吹に対し、蒼龍が釘を刺す。
「宿に籠もっていても安全とは限らないよ、伊吹殿。むしろ、出入口を塞がれたら袋の鼠だ」
「それなら、宿を見張るんだ。そう、寝込みを襲われたら大変だ。お前達、夜通し見張れ」
自分勝手な言い種に、蒼龍は呆れて言葉が出なかった。
「蒼龍殿、気になさらないで下さい。いつもの若旦那のわがままです」
お松が、伊吹に聞こえるよう、わざと大きな声で蒼龍に話しかけた。それを聞いて、伊吹はお松を鋭く睨みつける。
「向こうは一人ずつ現れると言ってたな。それなら、手分けして居所を突き止め、一気に叩くか」
一之助が冷静に意見を述べた。
「しかし、本当に信じてよいものだろうか。こちらを油断させる罠かもしれない。若旦那の護衛も残しておくべきだ」
源兵衛がそれに異論を唱える。
「明るいうちに宿を襲撃することはないでしょう。宿の人たちにも被害が及べば、村の者が黙ってはいないでしょうから」
他の者も、お松の考えに納得した。
「ならば、昼間に刺客を探し、夜は宿を見張るか」
結局、夜は一之助と三之丞が寝ずの番をすることになり、翌朝、蒼龍とお雪、源兵衛とお松のペアがそれぞれ探索へ出かけることになった。
「あなた、気をつけて下さいね」
部屋で二人きりになってすぐ、お蘭は心配顔で蒼龍に話しかけた。
「心配はいらないよ、探索だけだからね。こちらが不利と分かったら、逃げるまでさ」
「でも、昨日の男が現れたら、逃げることもできませんわ」
「足の速さなら、俺だって負けてないぜ」
「お雪さんはどうなさるおつもりですか?」
「おっと、そうだったね・・・ それにしても彼女、やけに張り切っていたけど、どうしたのかな?」
「皆を元気づけたいんですよ、きっと」
「そうだな・・・ これ以上、犠牲者が出ないように、俺も頑張らなきゃな」
蒼龍は大きく伸びをした。
深夜、雨の降る音が外から聞こえてきた。
「雨か・・・ 宗二が初めてやって来た日のことを思い出すよ」
三之丞が、傍らに座っていた一之助に話しかけた。
「俺は宗二の少し後に入ったからな。宗二が来た日のことは知らないよ」
「ああ、そうだったな。その日はひどい雨だったから、よく覚えてるんだ。で、いつもの通り、お松さんとの試合があってな。あいつ、剣の腕には相当自信があったらしいが、お松さんに負けた時は本当、茫然自失だったな」
「俺もそうだったから気持ちは分かるよ。そもそも、勝った奴はいないんだろ?」
「そうじゃなきゃ、指南役は務まらんさ。親父さんが、どこかの殿様の指南役とかで、小さい頃から厳しく仕込まれたと聞いたことがある」
「それは初耳だな。道理で強いわけだ」
一之助は上を向いて嘆息した。
「宗二が毎日稽古に励んでいたのは、お松さんに勝ちたいからだよ。ここだけの話だが、あいつ、お松さんに惚れていたんだ。それで、試合に勝った暁には、自分の気持ちを伝えたいと言ってたな」
「そうか・・・」
それっきり、二人は話すのを止めた。雨脚はだんだん強くなり、音も大きくなっていった。
「残念だ」
一之助がポツリと口にする。
「ああ・・・」
三之丞は、自分の坊主頭にポンと手を遣った。
「俺たちも、覚悟しなきゃなるまい」
その言葉を聞いた一之助は三之丞の顔を見据えた。三之丞も、一之助に目を向ける。
しばらくの間、互いに目を合わせていたが、三之丞が先に視線をそらして話を続けた。
「こんな時代だ、いつ命を落としてもおかしくないとは思っていたが、さて目前に迫ると覚悟が足りぬと思ってしまう」
一之助は正面を向き、額に手を当てながら長く息を吐いた。
「覚悟か・・・ 目的があればな」
そうつぶやきながら、もう一度、三之丞に顔を向けた一之助が
「お前は何のために闘う?」
と問いかけた。
「若旦那のため・・・ でないことは確かだな」
三之丞の返答に、一之助は笑みを浮かべる。三之丞も笑いながら
「正直に言えば、自分のためさ。生きるためには相手を倒さねばならぬ」
と答えた。
「・・・そうだな」
二人はまた話を止めて、雨の音に耳を傾けた。
お蘭は、この日も夢を見ていた。
毎日、目の前に現れるこの光景が夢なのか、それとも死後の世界を彷徨っているのか、それはお蘭には分からない。
今、彼女の前にあるのは、無限に続くのではと不安になるような広い草原と、ただ一本の道のみである。ここではいつも、お蘭はただ一人、心細い思いをしていた。
遠くに広がるのは地平線のみ。空には灰色の雲が敷き詰められたように横たわり、空を覆い隠している。澄んだ空気は暑くも寒くもなく、心地よい風が時々お蘭の頬を優しくなでた。
やがて、遠くに一本だけ大きな木が生えているのが見えた。しかし、歩いても歩いても、なかなか辿り着くことができない。ようやく目の前に迫ってきたその木の幹は非常に太く、周りを取り囲むのに何人必要になるか、お蘭には見当もつかなかった。枝葉は大きく広がり、その下に暗い影を落としている。
お蘭は何気なく、その木の周りを歩いてみた。すると、ちょうど反対側で、木にもたれかかるように誰かが座っているのを見つけた。それはまだ幼い女の子であった。
お蘭は、試しに声を掛けてみた。
「こんにちわ」
女の子は驚きの表情で、お蘭の顔に目を向けた。
「お姉さん、私のことが分かるの?」
お蘭も目を丸くして
「あなたも、私のことが分かるのね」
と叫んだ。
女の子はすっと立ち上がり、お蘭の顔をまじまじと見つめた。お蘭は、少しためらいながらも
「私はお蘭っていうの。あなたは?」
と尋ねてみる。すると、女の子は
「お蘭さんは人なの? 鬼や妖怪じゃないの?」
と真顔で問いかけてきた。
「鬼や妖怪に見えるかな? 私は人間よ」
お蘭は笑顔で答える。女の子は、信じていいものか迷っているらしく、見極めようとお蘭から目を離さなかった。
「今まで、鬼や妖怪に会ったことがあるの?」
そう質問したお蘭は、鬼や妖怪に遭遇したことは一度もなかった。もっとも、相手にされたことがないから、今まで遭遇した者が人間であるという保証はないが。
「鬼は見たことがあるの。妖怪には遭ったことないけど・・・」
「それじゃあ、お姉さんは鬼だと思う?」
女の子は首を横に振った。
「鬼はもっと怖い顔をしてるし、角が生えてるよ。お姉さんは鬼じゃないのね」
ようやく、女の子は笑顔を見せた。
「私はお初といいます」
お初と名乗ったその女の子は、軽くお辞儀をした。淡い朱色の小袖に身を包み、濡れたように艷やかな黒髪が肩のあたりまで伸びている。愛らしい顔にはしかし、右の頬のあたりに大きな痣があった。
「お初ちゃんね。ここで誰かを待ってるの?」
お初は首を横に振って
「お初のお姉ちゃんに会いに行きたいんだけど、一人では怖くて・・・」
と下を向いてしまった。
「お姉さんはどこにいるの?」
「果ての世界っていうところ。すごく遠いんだ」
「果ての世界・・・」
お蘭には、この世界に果てがあるとはとても思えなかった。物心ついた時から彷徨っているというのに、あるのは草原や森ばかり。どこへ行っても変化のない世界にいれば、誰もがそう感じるだろう。
「お初ちゃんには、果ての世界がどこにあるか分かるの?」
「うん、場所はだいたい分かるよ」
お初は大きくうなずいた。お蘭は、果ての世界という場所に興味を持ったようだ。
「じゃあ、私が一緒について行ってあげる」
と言うと、お初の瞳が輝いた。
「本当?」
嬉しそうな表情のお初を前に、お蘭は微笑みながら
「私も一人で心細かったの。一緒にいてくれたら心強いわ」
と正直に吐露した。
こうして、果ての世界への二人の旅が始まるのだった。
翌朝、雨はすっかり上がり、雲の間から青空が覗いている。しかし、北の方角はまだ山に雲が暗く立ち込めていた。
蒼龍とお雪、源兵衛とお松は、刺客を探すために宿を出た。
「宿はここにしかないわけだから、奴らは野宿しているということね」
宿から出てすぐに、お松が口を開いた。
「わしらの行き先は知らないはずだ。先回りしているとは考えにくい。おそらく後ろから追っているんだと思うが」
源兵衛の考えを聞いた蒼龍は
「しかし、進む先の選択肢は少ない。手分けして監視している可能性もある」
と反論した。
「ねえ、手分けして探しませんか。峠に戻る道と大原へ進む道に」
結局、お雪の提案に従い、蒼龍とお雪は、これから進む先の大原方面、源兵衛とお松は志戸坂峠方面を捜索することになった。
「できれば相手に気づかれずに居場所を突き止めたいものだが、もし見つかったら逃げるんだ。無茶な真似はするなよ」
別れ際、蒼龍が源兵衛たちに注意する。
「お互いにな」
源兵衛は後ろを振り返り、笑ってみせた。その表情に蒼龍も思わず笑い返す。
蒼龍とお雪は、しばらくの間、源兵衛たちの去っていく様子を目で追っていたが、やがて踵を返して歩き始めた。
「源兵衛さん・・・ あの、大丈夫ですか?」
お松が、ためらいながらも源兵衛に話しかけた。源兵衛は、しばらくお松の顔を注視した後
「心配をかけて済まない。昨日よりは落ち着いたよ」
と答え、笑顔を見せた。
「そうですか・・・ でも、蒼龍殿の言う通り、無理はなさらないで下さいね」
「なるべくそうするよ。しかし、あいつに会った時どんな行動をするか、正直言って自分でも分からん。その時は、お松殿、わしを止めてほしい」
お松は、源兵衛の視線を真正面から捉え「はい」と答えた。
やがて二人は、木々が密集する間の道に入った。空は暗く、まとわりつくような空気に源兵衛は顔をしかめる。
「湿気が多いな。それに少し寒い。お松殿は大丈夫か?」
今度は、源兵衛がお松の身を案じた。
「ええ、私なら平気です。それよりも、すでに敵は近くに潜んでいるかもしれません。気を引き締めて参りましょう」
「ふむ。今のところ気配はないようだが、注意するに越したことはないな」
薄暗い地面はまだ濡れていて、薄いベールのように蒸気が舞っている。風はなく、湿り気を帯びた土の匂いが、二人の鼻を刺激した。
「あれは何だ?」
地面に目を落としていた源兵衛が何かを発見した。お松から離れ、道端でそれを拾い上げる。
「お守りだな。誰かが落としたようだが・・・」
源兵衛は、暗い森の中に目を凝らしている。すると、道を外れて森の中へ入っていった。
「どうしたのですか、源兵衛さん」
「この先に開けた場所がある。ちょうど野営するのにぴったりだ」
お松も、木々の間を縫って後に続く。源兵衛の言う通り、木の生えていない空き地にたどり着いた。
その中央辺り、焚き火の跡が残っていることに源兵衛が気づいた。
「ふん、隠す気なしか。消してからまだ間もないな。間違いない、追手がここにいたんだ」
「すると、敵はどこかへ移動したことになるわね」
「そうだとすれば、先へ進んだのだろう。待ち伏せして奇襲をかけるつもりか」
源兵衛とお松は、蒼龍たちの向かった南の方角に目を遣った。
「蒼龍殿とお雪殿、無事であればよいが・・・」
源兵衛が厳しい目つきでつぶやいた。
「いい天気になりそうですね」
お雪が蒼龍に話しかけた。久々の青空の下、いつもより笑顔が華やかに映る。
「吹く風も心地よくて、すがすがしい朝ですな。探索の任務がなければ、のんびり散歩を楽しめるのだが」
蒼龍は空を見上げ、眩しい光に目を細めた。
お雪は得意の弓を携えている。和弓といえば長さ七尺を超える世界でも類がないほどの大きさを誇るが、お雪の持っている弓は、携帯性を考慮して長さ三尺ほどの短い弓だった。
「蒼龍様のいらっしゃる出雲とは、どんなところなのですか?」
「うん? 因幡とそうは変わらないさ。近隣同士だからね」
「杵築大社という立派なお宮様があると伺ったことがありますが」
「ああ、確かに。あの社は訪れる価値があると思うよ。神宮とどっちが大きいだろうか」
杵築大社は今の『出雲大社』のことである。その昔、出雲大社は三十二丈もの高さがあったという伝承があり、現代で言えば三十階建てのマンションと同じ位だ。信憑性はかなり低いが、もし本当なら当時の人々は実際に目にして驚いたことであろう。
「それはぜひ拝見したいわ。実は私、出雲には行ったことがないんです」
「そうですか・・・ 世の中が平和になったら、もっと気楽に旅ができるんですけどね」
二人は、とりとめのない話をしながら歩き続けた。右側には森、そして左側には吉野川が流れている。川岸には背の高い草が生え、トンボが羽を休めていた。のどかな初夏の風景であった。
木々に覆われた右手からは涼やかな風が流れてくる。二人は、自然と森に近づいていった。黄色と黒の模様が美しい二匹のアゲハ蝶が、お雪の目の前をかすめ飛んでいく。
「きれいね」
「夫婦のちょうちょかな?」
「ふふっ、きっとそうですわ」
微笑むお雪の顔を見て、蒼龍は何か言いかけようとしたが、すっと森へ視線を移し、ピタリと立ち止まった。
「蒼龍様、どうなさいました?」
そう尋ねたお雪も、蒼龍の険しい顔に気づき森のほうへ目を遣った。
「・・・気のせいか? 何者かの気配を感じたんだが」
しばらく動きを止めていた蒼龍であったが、やがてお雪に顔を向け
「すまない、勘違いだったようだ」
と言って笑った。そして再び歩き出そうとした刹那、蒼龍はいきなり抜刀した。
刃が、お雪と森の間の空間を斬り裂く。鋭い音とともに、何かが地面に落ちた。
お雪は声を上げることもできず、その場に立ち尽くしている。それをかばうように、蒼龍は森に向かって刀を構えた。
静まり返った森の中は暗く、動くものは何もない。しかし、蒼龍は構えを解かなかった。
どれほどの時間が過ぎただろうか。蒼龍が刀を鞘に収めるのを見て、緊張を解いたお雪は蒼龍に問いかけた。
「刺客ですか?」
「・・・おそらく」
地面に落ちたのは投げ矢だ。蒼龍が弾き落としていなければ、確実にお雪に当たっていたところだった。
「こいつを投げる瞬間まで、気配を完全に消していた。恐ろしい相手だ」
蒼龍は、拾い上げた投げ矢をお雪に示した。虚ろな目を向けるお雪はまだ呆然としている。
「大丈夫か?」
お雪は視線をゆっくり蒼龍の顔に向けた。少し顔が青ざめている。
「一度、宿に戻ろう。今日はもう現れることはないだろう」
蒼龍はお雪を安心させるために笑顔で話しかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます