第5話
俺たちはイルザの指導を受けて草原の毒ネズミの各個撃破を
木組みと白の
俺たちはビールとソーセージの絵が描かれた建物で、ほっと一息ついているところだ。
「ネズミの爪が思ったより高く売れて良かったな」
「ね。これで明日までは宿代もあるし、この辺りで実戦経験を積むのがいいかな。二人はどう思う?」
機嫌の良さそうなイルザはソーセージと漬物とビールをつつきながら俺たちを見た。ヴィルはイルザと同じものを、俺は肉団子のスープを食べている。腹立たしいことに酒は成人していないやつには提供されない。俺の隣に置かれたのは木苺のジュースだった。
湯気の立ち上る肉団子のスープは正直めちゃくちゃ美味しい。なにせスープだけで腹一杯になる量だ。上にチーズまで散らされて豪勢だが、俺はじとりと二人を睨みつけた。
「‥…俺も頑張ったんだからビール飲みたい」
「ほい」
「イルザ!」
案外あっさりと俺の目の前にビールが差し出された。飲みかけだがおかわりしたてのため泡は十分にある。酒の香りは正直いい匂いだとは思わないけど、ヴィルが去年成人してから俺だけお預けを食らっていて羨ましくてたまらなかった。
ヴィルが険しい顔をしてイルザを
「お酒で気分が良くなるのって、実は微量の毒のせいなんだよ。知ってた?」
笑顔のままのイルザが告げる。俺はジョッキを机に置いた。
「……知らなかった」
「そうなんだ。遠慮しないでいいよ、飲みなよ」
たとえ事実だとしても三回も毒でおかしくなった人間に言う台詞じゃねーぞ。
俺は首をぶんぶんと左右に振ると、イルザの手にジョッキを押し戻した。俺は今日毒で死にかけたっていうのに嫌なヤツだ。真っ青な顔をしてジュースを飲む俺を見て大人二人が微笑ましい顔をしているのがムカつく。
「あと三年もしてみろ、俺だって浴びるようにビール飲んでやるんだからな」
「ルイスくんは十五か。ちょっと幼く見えるね」
「
「なんで言うんだよ!」
ちょっと気にしていることを暴露されて俺はヴィルを睨みつけた。別にヴィルも濃いわけじゃないしこまめに
ヴィル改め無神経な兄貴は、俺が睨みつけていることを気にもとめず、イルザを見た。
「そういえばネーベル地方には遺跡があったな。ああいうところは魔物が多いって聞いたことがあるが、どうなんだ?」
「この辺りだからまだ弱いし、実戦経験積むにはもってこいだね。毒を持った魔物もいないから解毒草もいらないし」
そう言いながらイルザはふと俺を見た。その視線に気づいたヴィルにも見られて俺は首を傾げる。
イルザはしばらく俺を見た後、ビールを飲んだ。
「この僕ちゃんも魔導剣士として訓練させなきゃだし」
「魔導剣士!」
魔導剣士といえば
「魔導剣士として成果上げられたら、騎士様になれると思う?」
「それは無理だろ」
ヴィルが現実を突きつけてくる。血筋だけで言えば俺は王子様だ。しかも第一王子の双子の弟。替え玉に選ばれることはあっても、騎士にしてもらえることはないだろう。現実に引き戻されて顔を
「まぁやってみりゃいいよ。魔導剣士になれば魔物を撃破しやすくなるし、魔王城に入るなら一人は欲しいよね。それだけで生存率上がるもん」
「え、俺たち死ぬかもしれないところに行くの?」
「王都を出たんだから当たり前でしょ。ほら、棍棒に魔導耐性つけてあげるから貸して」
「ああ、ありがとう……」
俺が荷物を手に取ろうとしたときだ。
後ろに座っていた男が突然思いっきり床に嘔吐し、よりにもよってその中に倒れ込んだ。飛び散った
「え、な、何? 飲みすぎ? 怖……つか汚‥…」
「おい僕ちゃんその荷物は諦めな! 誰か司祭様を呼んでくれ!」
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