第10話 vsゴブリン期待度★★☆☆☆(金テロップ)
思わず頭を下げるとその位置に弓が飛んできていた。
弓をはじき飛ばした巴がかばうように俺の前に陣取る。
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「一気に3匹来ることは考えてなかったわねっ!」
自らを鼓舞させるかのように叫ぶ巴に呼応するように、木剣が炎をゆらめかせゴブリンを威嚇する。
ゴブリンは3匹。左から棍棒、短刀、弓を持っていた。
巴はその大炎をそのまま振り下ろしたそうだったが、ちょっと動かすと炎が弱くなるので、威嚇に掲げたままだ。
「膠着状態ならっ」
矢継ぎ早にゴブリンたちに連射する。
ゴブリンたちの隙をついたつもりが簡単に武器ではらわれてしまう。
まずいゴブリンにダメージが通らない。
立ち上っている炎が揺らぐ。
駄目だ弱みを見せたら一斉に襲われる。俺は殺され、巴は犯されてしまうだろう。
このままだと恐怖に支配されて負けてしまう。
まだスキルが足りなかったのだろうか?
俺の弓なんてせいぜい棍棒が傷ついてちょっと破片が飛び散っただけだ。
うん? 棍棒?
意識が敵意むき出しのゴブリンから変わる。
ゴブリンたちが持つ……その武器へと。
棍棒
1 / 15
短刀
1 / 55
木の弓
1 / 2
木の弓の表示を認識すると同時に射っていた。
狙いははずさずその弦へと吸い込まれていく。
ゴブリンの弓が大破した。
木の粉が舞う。
両陣営が困惑する中、動く人影があった。
一歩で間合いを詰めた巴が陽炎のごとく死角から木刀を振り上げる。
困惑するゴブリンの首をえぐる。
1 / 56
「なっ、一撃?」
正確には一撃ではないが、仰向けにいかにも致死傷でぶっ倒れたゴブリンは炎に包まれて、なお燃え続けている。さらに炎が追撃して今もなお焼き殺そうとしているゴブリンから目を離した。
「残り2匹いいいいいいいいいいいっっっ」
残る敵に躍りかかった巴はゴブリンとつばぜり合いをしている。
もう一匹が邪魔をしないように牽制の矢を放つ。
「このっ! 倒れなさいよ!!」
かち合う獲物から炎がうつるゴブリンの焼ける手の異臭が広がる。
その間に俺も残るゴブリンの棍棒を破壊し終わる。
巴はとっくみあいになりながら、ゴブリンを焼き尽くしていた。
肩で息をしていた巴は揺らがない目で残る敵を見据えていた。
「これでラストおおぉぉぉぉっ」
巴が襲いかかる前に俺の矢がゴブリンの眼を貫いた。
最期のゴブリンが倒れたのを見て、安心したのか巴がふっと意識をなくす。
前に倒れそうになるのを慌てて抱きとめる。
巴は全力を出したのだろう。
「やっていけるの……かな?」
腕の中で寝息をたてる巴の安心しきった顔を見て、なんとも言えない気持ちになる。
「俺だって男なんだが」
本当に不器用なお姫様を見てこっそり頭をなでた。
「さて耳をはいで持って帰るか」
幸いにも短刀があったので助かった。
何気なく拾って叫んだ。
「熱っつぅ!!」
巴がなになにという顔をして起き上がってきた。
気まずげに俺は巴から目をそらした。
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