第7話 vsゴブリン期待度★☆☆☆☆
このアンダーツリーには門が4つあり、それぞれ上門、下門、右門、左門と呼ばれている。俺たちが転移してきた方角にあるのは下門にあたって、魔物が嫌がる程魔力がない土地が広がっているらしい。ゴブリンがいるなら上門つまり、王都がある方の門だ。といってもその方向に進んでも王都にはたどりつけず城壁に阻まれているらしい。王都に行くには城壁をぐるりと回る必要がある。城壁からあふれ出る魔力のおこぼれを狙って魔物がある程度繁殖しているらしい。ダンジョンはあるのか? と聞いたら笑われて、新しく街ができたって情報はねえな。と衛士さんが答えてくれた。
「ありがとう、とりあえずゴブリン一匹探してみるよ」
お礼を言ったら街道から外れて森に入るんじゃねーぞと助言を頂いた。
「それじゃあとりあえず冒険者として第一歩だな」
「ええ、頑張って地球に帰りましょう」
右手に杖代わりに握っている木の枝が音をたてる。
先は遠いなあと出かかった言葉を飲み込む。
衛士から離れて声が聞こえない距離になって巴に声をかける。
「スキルって具体的には何があるんだ」
まっ、隠し事しても仕方ないしな。とりあえず知っとかないとゴブリンを倒す算段が付かない。
「俺のユニークスキルは神眼。見たいものが見れる」
俺の言葉にビクッとして木の枝を巴が構える。
「えっち」
顔が真っ赤だ。なんか陽炎みたいに炎がみえる。
「見えねえんだ、神眼はどうも見たいものだけが見えるらしくて」
あ、なんか炎の色が変わった。黒だ黒っぽい炎。なんだかとってもファンタジー。触るとまずい系ですね。
「まっいいわ。それがユニークね。アクティブスキルは?」
「
「なんで弱気なのよ」
「制限時間があるんだよ。今のところ3秒多分鍛えれば伸びていくんだろうけど。検証が色々と必要だな。ダメージを致命的なものに書き換えられたりする。ん? ダンジョンに宝箱とかあったらレアなものに変化できるんじゃないか? これは楽しみだな。あと神眼では一応シーフは要らないっぽい罠とか見破れるっぽいから?」
「なんか言い切れないところに不安を感じるわ」
「そういう巴はきっちりした攻撃スキルなんだよな?」
「ばっちりよ。私のユニークスキルは原初の炎。感情を炎に変える力よっ」
感情を炎に? それも不安定なんじゃ。嫌な予感しかしない。
「試しに木の枝の先端に火を灯してくれないか」
「やってみるわ! まかせておきなさい。はあっ」
木の枝を凝視するが何も起きない。
「MPみたいのがあるのか? 魔力使ってる?」
「お腹に……力……入れてるわよ」
相変わらず何もおきそうにない。風が出てきた。
「役に立たないな」
ため息をつくと巴が怒る。
「立つわよっっ!!!」
ぶわっと枝の先に火がともる。
「あっあっ消える消える」
巴は木の枝に火を灯して遊んでいる。
顔に力入れたり、なんか魔力注いでそうなポーズをとってたけど風が出て普通に消えた。
髪をかき上げてきりっとして言い切った。
「ファンタジーね!!」
「それでどうやってゴブリン倒すんだよっ! とりあえずゴブリン出たら俺が前衛するから。二人がかりなら1匹ぐらいいけるだろう」
「遊都落ち着いてるわね。魔物と会ったこともないのに」
「あるよスライムなら数匹。ハーデスん時にスキルの説明がてら」
その時のことを詳しく説明した。
私教わってないと巴はむすっとしてた。
表情豊かだな。気難しげな綺麗な横顔を見てそう思った。
服本当に透けないかな? そう思案したところで、左手の茂みから緑の子供みたいなのが飛び出してきた
「でたぞっ! 巴は一旦下がれ俺が相手する」
まずは、神眼っ。
ゴブリンのヒットポイントを確認……。
1/199??
ライトミドル??
「げぎゃぎゃぎゃ」
ゴブリンが俺たちを見て喜んでいる。
待て俺たちがお前を狩りにきたんだぞ。なぜお前が喜ぶ? まるで俺たちが獲物のような……。
「巴っ、逃げろ」
俺を無視して巴に飛びかかろうとしたゴブリンの右肩を尖った木の枝で刺す。
ゴブリンまでの射線を開けていたのが裏目に出た。
「げぎゃっ」
うっとうしそうに突かれた右肩を一瞥したがそのまま押さえ込むように巴にのしかかる。
「いやっ、いやあっ」
巴はパニックになってゴブリンを振りほどこうとしている。
「この野郎」
もそもそと股間をいじっているゴブリンの背中に両手を使って木の枝を突き立てる。
やったか? ゴブリンの残りヒットポイントを確認。
1 / 196
駄目だ倒せる気がしない。
足元に落ちてある片手ほどの石を握り殴りつける。
1 / 195
なんとか巴から引き離す。
「走れっ」
巴に叫びながら目線はゴブリンから離さない。
俺はゴブリンが持っている鈍器からどれだけ耐えられるのだろうか。
右手を見ながら自分のヒットポイントを確認しようとした……見れない。
本当に役立たずだな。このユニーク。
かぶりをふったゴブリンが怒りを孕んだ目でこちらをみる。
じりじり後退しているが、その距離は変わらない。
やばい。あと持っているスキルは
ふとこの場から脱出する方法を思いついた。
できるかわからないがやるしか……ない。
「ああああああああああああっっっっ」
気合いとともにゴブリンに向かって全力投球。
当然のようにゴブリンは持っていた鈍器で打ち払う。
この瞬間を待っていた。
「
時が、世界が隔絶する。
見慣れたボタン。
「うああああああああ」
馬鹿みたいに連打した。
焦って連打して成功したものを上書きしたがなんとかなった。
小石
1 / 1
世界が動き出す。
小石は粉々に割れゴブリンの顔と目に覆いかぶさる。
その隙に俺はアンダーツリーに向け全力疾走した。
息を切らして上門までたどりつくと巴と衛士が言い争っていた
「だからゴブリンが出たんですっ、助けてくださいっ」
「いやそりゃあゴブリン出るだろうよ」
「だったら早くっ、遊都が殺されちゃう」
「いやでもゴブリンだし、大体君たちゴブリン倒しに行ったんだよね?」
困惑顔の衛士が俺の顔を見て、ほら戻って来たよと言った。
「遊都!」
巴がとびこんでくる。
「よかった私心配して、もう死んじゃったんじゃないかと」
半泣きの巴に若干引きながら衛士が言う。
「こういうの言う仕事じゃないんだけど……冒険者諦めたら??」
ご迷惑おかけしました、と謝って宿に向かう。
どうしよう俺たち、最弱なんじゃないか。
地球に帰るどころかこの街から出れるかも怪しくなってきた。
無言で俺たちは帰路につき、今日は疲れたからまた明日と別れた。
ベッドで横になる。
「
世界が静かになる。
カウントは4秒。
1秒伸びた。
「それがなんなんだよっ」
怒りにまかせて俺は寝た。
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