後編
後日とっとと役所に行き離婚届を提出した。全く前もって記入済みの離婚届を貰っていて助かった。あの義父母が墓穴を掘ってくれたおかげで色々とスムーズに事が進んだ。
その後については暫くホテル暮らしを続け慰謝料などは弁護士に任せておいた俺だったが。
「はいもしもし」
『貴様一体どういうつもりだこの詐欺師が!』
電話に出て開口一番元義父の怒鳴り声が聞こえた。全くやかましいやつだ。
「詐欺師とは随分な言い草ですね」
『当然だろうが何が共有口座だ! 金なんて殆ど残ってないだろうが!』
そういわれてもな。
「久美から聞きませんでしたか? 口座の中にはたしかに2000万入ってましたよ。でもどうやらあいつが勝手に引き落としたみたいでね」
そう久美は共有口座の金にも手をつけていた。FXや株での損失を穴埋めする為だったようだがどうやらその金で更に投資を続けて失敗し逆に借金を増やしていたようだ。
「口座のお金がないのは俺の責任じゃないですからね」
『ふざけるな財産分けろ養育費よこせ!』
「そういう話は弁護士を通してください。ま、無駄だと思いますけどね」
口座の使い道も久美に渡していたお金も全て俺は記録に残していた。俺はそういう点は細かい。
かなりしっかり記録していたから弁護士もこれなら十分証拠になるといってくれていた。
「とにかくこれ以上話すことはないんで」
『ま、待て!』
元義父が何かいいたげだったがサクッと切ってブロックしてやった。そしたら今度は元義母からも連絡が来た。
『あんた何してくれてるのよ! おかげで久美の再婚話もだいなしよ!』
「そういわれてもね」
久美と不倫していた支店長とやらは実は妻子持ちだった。気の毒だと思って親切な俺はうちの妻とそいつが不倫関係にあったことを奥さんに教えてあげた。
当然だが向こうの奥さんは激怒。旦那とは離婚し慰謝料を請求した。勿論久美にもな。
だがその男の不幸はそれだけでは終わらなかった。なにせそいつが務めていた会社は俺のクライアントの下請けだ。ちなみにそのクライアントというのは俺が辞めた会社でもある。
義父母は俺がクビになったと思いこんでいたが実際は円満退社だ。何なら俺が独立した後も仕事を依頼してくれているし今となってはいいお客様でもある。
元の会社もうちの技術力を高く評価してくれていていい関係を築けている。何より久美と結婚した当時式でスピーチしてくれたのは当時の部長であり今の専務だ。
だから流石に俺も黙ったままじゃいけないと思い専務に事情を話したわけだ。
専務は家族を大事にしていることで有名な人でもあったからな。俺の話を聞いてかなり怒っていたよ。
結局そこから下請けの会社に話がいき支店長は降格。どこぞの離島に飛ばされることとなったわけだ。
まぁ左遷って奴だな。人の妻に手を出したのだから自業自得だが。
『あんたのせいで娘は破談になったんだ! 慰謝料支払え!』
破談って何か違うだろと思ったけどまぁ適当に対応する。
「慰謝料を支払うのは久美とあんたらの方ですよ。ちゃんと一括で支払ってくださいね」
『ふ、ふざけんじゃないわよ! 何で私たちまで!』
「これまで散々俺を罵倒してきたでしょうが。その分の精神的苦痛代。それに勝手に持っていった俺の持ち物の賠償代も含めての金額ですから」
弁護士と相談した結果慰謝料は十分取れると判断された。何かあったときのために会話を録音しておいたのも役立ったようだ。
「俺の物を勝手に持っていたことを窃盗扱いにしたっていいんですよ。何なら警察に被害届出しましょうか?」
『け、警察! どうかそれだけは……』
警察と聞いてビビったのか義母との通話はそこで終わった。意外と小心者だな。
で、今度は久美から電話が来た。全くなんだっていうのか。
『お願いよやり直して! 私が愛しているのは貴方だけなの。不倫だってつい出来心で離婚したいなんて思ってないし彼とのことだって本気じゃなかったのよぉ』
話を聞いてみたら泣いたり甘えたような声にしてみたり、色々態度を変えて俺に復縁を訴えかけてきた。
「ま、本気じゃなかったのはそうだろうな」
『わ、わかってくれたのね道夫。そうよ私が愛しているのは貴方だけ』
「いや愛しているのは俺の金、財産だろう? もっといえば不倫した理由も金だろう?」
『――え?』
久美の声に動揺が感じられた。図星をつかれたってところか。
久美は俺が起業している事を知っていたからな。相手が支店長だからといってそっちに行く理由が感じられない。これまでの話を聞いていると本気で好きだったようではないしな。
そこから導かれる答えは金しかない。使い込みすぎて俺に頼るのも阻まれたのだろう。相手の支店長とも上手く付き合って金を引っ張れれば儲けものとでも思っていたのかもしれない。
だがそれがわかったからといって気持ちが変わることはない。寧ろ更に冷めたというべきか。平気で約束を破り娘の為の共有口座に手を付け借金まで作るような女と信頼は築けない。
「とにかくやりなおすつもりはない。それより慰謝料はしっかり支払えよ」
『そんな……650万なんて無理よ。ただでさえ向こうからも慰謝料請求されてるのに。お願い許して――』
それ以上聞くことなく電話を切りブロックしてやった。本来不倫の慰謝料だけなら300万程度だが俺を騙して金を引っ張っていたこと。共有口座の金を私利私欲の為に使っていたことが仇となった。
共有口座はくれてやるといったが使い込んだ部分に対して何もしないとは言ってなかったからな。このあたりは弁護士がいい仕事をしてくれたよ。
久美が言っていたように不倫した相手からの慰謝料も含めると一千万円近くなるからな。
『パパ。私が間違ってた。本当ママって最低! お爺ちゃんもお婆ちゃんももう信じられない。私にはパパしかいないの~だから……』
「悪いが俺はもうお前たちを信じられない。一緒に暮らすこともない」
娘の姫からも電話が来たがはっきり突き放してやった。娘から頼まれればもう少し心が揺らぐかもと思ったが全く心に響かなかった。
『そんなパパ娘を見捨てるの? 可愛い一人娘がついていってあげるって言ってるのに!』
俺が冷たい態度で接すると豹変して怒鳴り散らしてきた。これだからな。同情する気もおきない。
「久美を選んだのはお前だろう。俺にはもう親権がない。お前を養う必要なんてないんだよ」
『だ、だったらせめて責任とりなさいよ! 養育費ぐらい支払うのが父親の役目でしょう!』
「あぁ。だからお前のために作っておいた口座は久美に渡したんだ。養育費はそこから捻出してもらいなさい」
『だってそれママが使っててもう残高も500円しかないって……』
500円って思わず吹き出しそうになったぞ。最後確認したらまだ50万円ぐらいは口座に残っていたと思ったがそれも手を付けたのか。どうしようもないな。
「そんなのは知らん。大体お前も15歳だ。自分のことぐらい自分で考えられる年齢だろう。ま、これからは精々ママや義父母と協力して生きて行くんだな」
『ま、待ってパパそんなの――』
姫も何かいいたげだったが電話を切ってやった。流石に娘の電話番号をブロックするのは気が引けたがあまりに電話やネットを使ってのメッセージがしつこく届くので今のスマフォを解約して新規契約した。勿論番号もアドレスも変えてだ。
個人のスマフォと仕事のスマフォをわけておいたからそこまで手間じゃなかったしな。ちなみに元家族連中は俺の仕事用の番号とアドレスを知らない。
それから暫く経ち俺は新しく事務所兼自宅を購入し新生活を満喫している。
風のうわさで聞いた話だが義父母は俺が元いたマンションに住めると思い込み見切り発車で自宅を売却していたらしい。
更に毎月当てにしていた生活費が入らなくなったのと俺への慰謝料でクビが回らなくなり久美や姫共々都外のボロアパートに引っ越したそうだ。
久美の借金も大きくどうやら相当ヤバいところからも金を借りていたようだな。結局ソッチ系の紹介で仕事をする羽目になったんだとか。
姫は結局希望の高校には進学出来ず定時制の高校に通いながらバイト漬けの毎日。義父母も働かざるを得なくなり厳しい現場で悲鳴を上げてるそうだ。
ま、今更元家族のことなんてどうでもいいことだけどな。
「社長。本日の予定ですが」
「あぁありがとう」
それからさらに時は経ち会社もより大きくなった。
秘書からは今日のスケジュールを見せて貰った。黒髪ロングの清楚な女性だ。その手の指にはキラリと光る結婚指輪。
離婚後暫く恋愛はいいかなと思っていた俺だが、秘書として働いてくれた彼女に惹かれ結婚することになった。今では公私ともに私にとっての大事なパートナーでもある。
幸い彼女の両親も俺には良くしてくれていて本当の息子が出来たようだと言ってくれている。
「――貴方実は」
そして今日妻から妊娠していることを知らされ俺は喜んだ。そして誓う今度こそ幸せな家庭を築きあげようってね。俺の人生はまだまだこれからだ――
【スカッと】俺を無職だと決めつけた義父母や娘から罵倒された上妻の不倫も発覚したので俺はもうお前たちを捨てることにした~後から俺が起業していたことに気がつき泣きついてきても遅いからな~【ザマァ】 空地大乃 @oozoradaithi
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