第11話 反抗
男たちを引き連れたまま、唯我が向かったのは河川敷だった。
「ここなら広くていい」
河川敷に着くと、唯我は音也をゆっくり下ろした。
「お前! ほんと、最悪だな!」
怒りを露わにする音也に唯我はニヤつきながら正面を見据えて言った。ぞろぞろと男たちが息を切らして走ってくる。
「音也、ちょうどいいだろ。今日、今、ここで変えとけよ。しんどい毎日を」
唯我は首を捻って数度鳴らし、拳からパキパキと気味のいい音を響かせる。
「勝手なこと言うな……」
息を整えた追手が二人の前に集まる。その数三〇人以上はいる。
「一人に寄ってたかって、新人類様が聞いて呆れるなァ」
分かりやすい挑発をした後、唯我はなぜか音也の肩を横から小突いた。
「こんな弱そうなやつでさえ、お前らと違って一人で話つけにきたぞ」
「なっ、お前!」
その言葉に集団の一人がイラついた様子で尋ねてくる。
「なんだ、テメェこっち側か? ならさっさとそいつぶちのめせ!」
新人類たちの怒声に音也は肩を小刻みに震わせて俯いていた。
「おい! 聞いてんのか! 早くしねぇとテメェもぶっ潰すぞ」
何も喋らない音也を唯我は黙って見ていた。
「――ごちゃごちゃうるせぇな」
それは唯我にしか聞こえない小さな声だった。小さい、しかし、確かな反抗。
音也の反撃の狼煙だった。
「俺は! 群れなきゃ小便一つできねぇお前らとは違うんだよ!」
今度ははっきりと。男たちに向かって堂々と告げる。
「お前くらいな……お前らくらい、俺一人で片付けてやるよ……」
一歩前へ進み、つけていたメガネを放り投げ、制服を脱ぎ捨てる。
「ぶっ殺し確定……!」
青筋浮かべて怒る新人類たちに音也はもう引かなかった。その表情に恐怖はない。
それを見た唯我は満足そうに笑うと音也の隣に並び立つ。
「まぁ待ちなさいや。俺に名案がある」
そう言うと、唯我はゆっくりと新人類たちの前まで歩いていく。当然、相手が黙って見ているわけもなく、飛びかかってきた男たちで唯我の姿が見えなくなる。
「大門!」
音也が唯我を助けようとしたその時、集団の中心から不敵な笑い声が聞こえた。
「ふんッ!」
次の瞬間、固まっていた男たちが何かに吹き飛ばされる。
その中心には無傷の唯我が笑って立っていた。
「お前らから先に手出したんだ。お前らが百億%悪い」
唯我は挑戦的な笑みを浮かべて、手のひらに拳を打ちつけた。
「こっからは正当防衛だ」
放課後の河川敷で新人類たちによる戦いが開始された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます