第9話 外れ
「お前が勝てねーわけだな。ありゃ強い」
人気のない校舎の陰で高田は自分よりも小柄な男に見下ろされていた。
――――男は支配者だった。
「すみません帝さん。わざわざ来てもらって……」
言葉の終わりを待たず、帝の手刀が高田の首筋に当てられる。
「結論だけ聞く。あいつは秩序の守護人か?」
高田は悔しそうに歯を食いしばると苦々しい表情で答えた。
「はい……あの強さ、間違いなく……」
それを聞いた帝は心底おかしそうに笑った。高田はその不気味さに怯える。
「け、けど! 今度こそ俺があいつを必ず――」
言葉の終わりを待たず、帝は高田の腹に前蹴りを食らわせる。高田が苦しそうに呻くと帝は高田の前髪を掴んで自分の目線に引っ張り上げた。
「高田、もういいんだ。無理しなくて。よく頑張ったな」
いっけん優しい帝の言葉に高田は少しも安心していなかった。その裏に見える強大な悪意を知っているから。
「――お前はもう自由だ。好きにしろよ」
帝は高田を離すと背を向けて歩き出した。その姿に高田はみるみる青ざめる。
「ま、待ってください! 俺はまだ!」
そこで高田は後頭部に衝撃を感じる。振り返ると、数人の男たちが下品な笑みを浮かべ立っていた。
「そういうこった。大人しくしてろ!」
そう言うと男たちは高田に襲い掛かった。
高田は抵抗せず大人しく殴られている。
帝の言葉の意味、それは高田を新人類と認めない、虐げられる側の人間として扱うということだった。
高田は理不尽な暴力にただ耐えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます